甘酒の甘さ
甘酒には2つの種類があります。1つ目は、麹によるお米が発酵した麹甘酒。2つ目は酒粕に砂糖を加えた酒粕甘酒です。ここでは主に、麹甘酒についてご紹介していきます。
甘さの秘密
甘酒は砂糖の代わりとして使うことができるほどの甘さがあります。麹菌の酵素がお米のデンプンを糖化させ、ブドウ糖に代わっているためです。
甘酒を砂糖の代用として使いたい時には、倍の分量を目安にしてください。レシピに「砂糖大さじ1」の記載がある場合なら、「原液タイプの甘酒大さじ2杯」で代用する、といった具合です。
麹とは
麹(こうじ)とは、いわば「カビ菌」を繁殖させたもので、「麹」または「糀」と書きます。日本特有の湿度と温度でしか生息できない菌であり、麹から作られる食品には味噌、醤油、お酒といったお馴染みのものばかりです。和食文化と深い繋がりがあることから、2006年には日本醸造学会によって「国菌」として認定されているんですよ。
スーパーでは、発酵に関わる食品(味噌やお漬物、納豆)の近くで見かけることが多く、カラカラに乾かした「乾燥麹」です。
甘酒作りには生麹がおいしい、との声も聞きます。生麹は水分が含まれていることから日持ちが短く、密閉して冷蔵保存すると1週間、冷凍で3か月程度です。乾燥麹なら数ヶ月はもつのに比べると、短いのは残念なところです。醤油や味噌の専門店で手に入りますから、お近くのお店で声をかけてみてください。
マルコメ プラス米こうじ 手づくり甘酒用 乾燥タイプ 100g×8個
乾燥タイプの麹です。100gずつの小分けですから毎回使い切ることができ、さらに保存性が高い商品です。
通販なら、近くに販売店がなくても手に入れられます。
甘酒の保存方法
市販品の甘酒は、商品に記載の保存方法を参考にしてください。手作りの場合に気をつける点も合わせて確認していきます。
甘酒の火入れ
火入れは、腐敗の原因になる雑菌の繁殖を止めると共に、麹菌の働きを止めるための作業です。ヨーグルトと同様に、発酵が続くと酸っぱい味へと進んでしまうため、火入れをして発酵を止める、というわけです。
グツグツと煮続ける必要はなく、ひと煮立ちさせたら十分です。手作りの甘酒や、日持ちが心配になってきた市販品も、火入れをすれば安心です。ただし、変色や明らかにおかしな味がする時は、火入れをしても食べてはいけません。
手順
【1】甘酒を鍋に移し替え、コンロで温めます。ひと煮立ちしたら火を止めてください。
炊飯器を使う場合は、蓋を開けたまま炊飯スイッチを入れ、沸騰直前まで加熱します。発酵には空気が必要ですから、蓋は閉めません。
【2】腐敗防止と、甘さを引き立てる役目として、塩ひとつまみを加えてよく混ぜます。
【3】中身を別の容器に移して冷まします。
酵素を生きたまま取り入れたい方は、火入れせずに、酸っぱくなる前に召し上がるといいですよ。
常温は△
麹菌が発酵する際の適温は55℃〜60℃ですが、40℃程度から活発に活動を始めます。常温では穏やかに発酵が進んでいきます。
火入れをしていない甘酒は、早めに冷蔵保存や冷凍に切り替えるほうが、味が安定します。できたての甘酒のおいしさは格別ですから、冷蔵する前の特別な一杯にされてはいかがでしょうか。
冷蔵なら1か月
火入れを済ませ、清潔な保存容器に入れた甘酒は、1か月程楽しむことができます。火入れしていないものは1週間が目安です。普段と違う様子があれば、念の為口にするのは控えてくださいね。
冷凍は3か月も!
多めに作った時は一杯ずつ小分けして冷凍しておけば3か月程度は保存ができますよ。詳しい方法はこちらを御覧ください。酒粕を使う甘酒の作り方もご紹介しています。
麹甘酒の作り方
麹菌の働きによって作られる甘酒は、菌に適した環境を与えてあげることが主な作業です。炊飯器の保温機能や、ヨーグルトメーカーは、50℃程度に長時間保てる機能があるため、手軽に作ることができますよ。
材料
米 半合
水(おかゆ用) 600ml
(甘酒用)450cc
米麹 100g(冷凍の場合は解凍しておく)
保温器具として、炊飯器、またはヨーグルトメーカー。ここでは土鍋をタオルで巻いて保温しました。
作り方
【1】おかゆを炊きます。
【2】麹は手でほぐしておきます。
【3】炊きあがったおかゆに、水(甘酒用)を加えます。すると温度が60℃程度に下がるので、麹を加えて均一になるまで混ぜてください。
この温度60℃が、デンプンの糖化に必要な適温ですから、できるだけ下がらないようにキープします。
【4】炊飯器やヨーグルトメーカーにセットして、表面をならしておきます。発酵に必要な空気にさらされるよう、炊飯器なら蓋を開けたままにして、ザルやタオルで覆うだけにしておきます。鍋の場合は、タオルで巻いて保温します。
【5】1.5〜2時間おきに混ぜながら4〜5時間保温してください。麹のツブツブがなくなり、お米の形がなくなれば出来上がりです。
【6】冬場はどうしても温度が下がります。温度を確かめ、下がっていれば、鍋で65℃程度まで温度を上げてください。とろみが強すぎる場合は、適量の水を足してもかまいません。
【8】火入れをして完成です。
ドロドロに分解された濃い甘酒が出来上がり、お湯などで2倍程度に薄めて飲みます。
甘酒作りに必要な保温器具と、保存容器
自家製の甘酒を楽しみたい方は、ヨーグルトメーカーがあれば簡単に作ることができます。甘酒はとろみがあるので、保存に向いている広口の保存容器も合わせてご紹介します。
岩崎工業 抗菌 スクリュートップキーパー500深型
140℃の耐熱容器なので、煮沸消毒や長時間の保温ができます。ただし、保温中は蓋を開けてガスを逃し、容器が膨らまないように注意が必要です。
Richell わけわけフリージング ブロックトレー 50ml 4枚入
50mlごとに分けて冷凍ができる製氷皿です。甘酒に限らず、液体の冷凍保存に役立ちます。
発酵の不思議が身近に楽しめる甘酒
納豆、ヨーグルト、お味噌や醤油などは、身近にある発酵食品です。甘酒作りは簡単ですから、実際に手を動かして発酵の様子を目で確かめると、酵素の働きがより身近に感じられるはずです。
理屈はともかく、昔から私達の先祖が口にしてきた発酵食品ですから、おいしさを楽しむことがいちばんですね。腐敗したものを口にしないように、保存方法に気をつけることが大切です。ぜひ、ご参考にしてください。
構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)