「地域みらい留学」とは?
地域みらい留学は、高校生を対象とした国内留学制度です。制度が生まれた背景と合わせて、地域みらい留学の概要を見ていきましょう。
親元を離れ地域の公立高校に進学する制度
地域みらい留学は、地元ではなく他の地域の公立高校に進学する制度です。
公立高校に進学する場合、基本的には住んでいる地域の学区内で進学先を選ばなくてはなりません。例えば、埼玉県在住の中学生が公立高校へ通いたい場合は、埼玉県内の高校を受験する必要があります。
しかし、地域みらい留学を利用すれば、都道府県の枠を越えて進学先を選べます。留学先は北海道や沖縄、東北など、地方の市町村がメインです。
都会育ちの子どもが親元を離れ、今までとは異なる環境に身を置くことで、学校の勉強だけでは学べないさまざまな力が身に付きます。
単年だけの「地域みらい留学365」
「地域みらい留学365」は、高校2年生の1年間だけ、他の地域の高校に留学する制度です。籍は入学時の高校に置いたままでよく、休学する必要もありません。3年生に進級するタイミングで元の学校に戻り、卒業までの期間を地元で過ごせます。
高校入学から卒業まで3年間通う地域みらい留学とは、募集要項や受け入れ先の学校などが異なるので注意しましょう。
留学制度設立の理由
地域みらい留学が成立した背景は、主に以下の2点です。
・従来の教育では物足りないと考える保護者や子どもが増えた
・過疎化対策として、高校生を受け入れたい地域が増えた
現在のように目まぐるしく変化する社会では、自ら考え自ら行動できる力が大切です。見知らぬ土地でさまざまな体験ができる地域みらい留学には、従来の教育に比べて子どもの自立心を育む効果が期待できます。
また受け入れ側の高校にも、少子高齢化による生徒の減少を食い止め、地域の活性化につなげたいとの思いがあります。地域みらい留学は、留学する側と迎える側の両方のニーズが合致して生まれた制度なのです。
「地域みらい留学」の魅力
地域みらい留学と地元の公立高校への進学には、どのような違いがあるのでしょうか。地域みらい留学の主な魅力を見ていきましょう。
大自然の中で多様な体験ができる
地域みらい留学の受け入れ校は、自然豊かな場所にあります。都会のような便利さはないかもしれませんが、美しい景色やおいしい食べ物、きれいな空気を毎日堪能しながら、充実した高校生活が送れます。
コンビニエンスストアがなかったり、電車やバスがなかなか来なかったりといった、少し不便な環境で暮らすことで、忍耐力や自分で工夫する力も育まれるでしょう。
スキーやカヌーのような、都会の高校では活動が難しい部活動に入れるのも大きな魅力です。各地域に伝わる技術や文化に触れる機会も多く、幅広い知識が身に付きます。
少人数で主体的に学べる
地域みらい留学の受け入れ校の多くが、少人数教育を実施しています。1学年の生徒数が30人程度の学校もある一方で、授業の内容や行事の充実度は、大規模な都市部の高校と変わらないところがほとんどです。
少人数の学校は、大人数の学校に比べて、生徒1人当たりの役割が増えます。自分の役割をしっかりと果たすためには、受け身ではない主体的な姿勢が大切です。
意見を出し合い、仲間と協力して物事を進める過程で、責任感や協調性が自然と培われるでしょう。
地域の人々とも交流ができる
交友関係が広がるのも、地域みらい留学の魅力の一つです。
留学先の高校には、地元から通う生徒だけでなく、他の地域から来た留学生もいます。同じ都道府県出身者しかいない学校に比べて、刺激的な日々を過ごせるはずです。
また、地域みらい留学では、高校と地域を結ぶコーディネーターが、留学生が地域に無理なく溶け込めるようにサポートしてくれます。留学生は先生やクラスメイトだけでなく、地域の住民も見守る中で安心して高校生活が送れるのです。
都会で暮らしていれば、隣の住人の顔や名前を知らない場合もありますが、留学先では地域の仲間入りをして、さまざまな世代の人と交流が可能です。
「地域みらい留学」の基本情報
子どもの進学先の一つに地域みらい留学を加えたいと思ったら、対象者や費用、募集時期について早めに調べておきましょう。地域みらい留学の基本情報を紹介します。
対象者と費用の概算
地域みらい留学は高校進学に該当する制度なので、応募できるのは「中学3年生のみ」です。地域みらい留学365は、「高校1年生」が対象です。
ただし、学校見学や説明会への参加日程を考慮すると、中学3年生から情報を集めていては間に合わないかもしれません。興味がある人は子どもが中学生になった時点くらいから、3年間進学させるか、単年留学にするのかも含めて検討を始めましょう。
また、留学には住居費と食費、生活費が必要です。住居は高校によって異なりますが、寮や下宿、ホームステイなどが用意されており、食費込みで月2~6万円が相場です。
都会よりも物価が安い地域が多いので、部活動費やお小遣いを含めても、10万円以内で過ごせると考えてよいでしょう。留学費用の一部を補助してくれる高校もあります。
留学受け入れ高校
2021年12月時点で留学生を受け入れている高校は、「地域みらい留学」で70校、「地域みらい留学365」では15校です。受け入れ高校の一覧は、地域みらい留学の公式サイトに掲載されています。
「地域・学校を調べる」から、地域名や留学の種別で検索してみましょう。また、公式サイトで会員登録を済ませると、ガイドブックを郵送してもらえる他、説明会やオープンスクールなどのイベントに参加できます。
留学決定までに必要な準備
「地域みらい留学」に応募する場合は、中学3年生の4月ごろから本格的な準備が始まります。大まかな準備スケジュールは以下の通りです。
・4~5月:留学生を募集している学校の情報収集
・6~9月:興味がある学校の説明会に参加
・8~10月:現地での学校見学
・11~12月:志望校決定
・1~3月:出願・受験・合格発表
地域みらい留学365の場合は、高校1年生の6~9月ごろから説明会に参加して、希望の留学先を決めます。12月ごろまでに面談をして、留学が決まったら在籍校と留学校の双方に、必要な書類を作成して提出します。
すべての手続きが済んだら引越し準備をしながら、新生活のスタートを楽しみに待ちましょう。
国内留学する際の注意点
国内とはいえ、他地域の学校に通わせる場合は、いくつかの注意点があります。特に気を付けたい、高校の履修単位について見ていきましょう。
単年留学の場合は履修単位に注意
高校では履修するべき単位が決まっており、取得単位数が足りないと卒業できません。
いつ・どの科目を履修するかは各学校で異なるため、留学が原因で在籍校の卒業要件を満たせない可能性があります。卒業要件を満たしていても、大学受験で不利になるケースもあるでしょう。
入学から卒業まで同じ高校で学ぶ場合は問題ありませんが、高校2年での単年留学の場合は十分な注意が必要です。
地域みらい留学の公式サイトには「留学先校必履修チャート」が掲載されており、留学先の高校で2年次に履修する単位をチェックできます。
在籍校の履修予定と照らし合わせて、必履修科目の漏れや重複がないかどうかを確認しましょう。在籍校の先生に相談するとより確実です。
魅力あふれる地域に留学しよう
地域みらい留学は、豊かな高校生活を送りたい人と、生徒を集めたい地域の公立高校をつなぐ制度です。親や今までの友人から離れて知らない土地で暮らす体験には、計り知れない価値があります。
画一的な教育では将来が不安な人や、地元に通いたい高校が見つからない人は、進学先の選択肢に入れてみるとよいでしょう。親子で説明会や見学会に参加するだけでも、よい勉強になるはずです。
構成・文/HugKum編集部