ランタン祭りとは?
映画「塔の上のラプンツェル」を観て、初めてランタン祭りの存在を知った人も多いのではないでしょうか。ランタン祭りは、一部の地域で古くから行われている伝統的な儀式です。
また同じランタン祭りでも、地域によって開催時期や方法が異なります。ランタン祭りの起源や主な開催地を見ていきましょう。
無病息災を祈る儀式
夜空にランタンを飛ばすイベントは、無病息災を祈祷する仏教の儀式が起源といわれています。願いごとを書いたランタンに火を灯し、熱気球の要領で空に放ちます。スカイランタンとも呼ばれており、たくさんの灯りが夜空を漂う光景はとても幻想的です。
また中国や台湾で行われる旧正月を祝うイベントも、ランタン祭りと呼ばれています。建物に中華ランタンをたくさん吊るして周囲を照らし、花火や爆竹を打ち上げて祝います。赤や黄色の華やかな光が、独特の熱気を感じさせるイベントです。
冬に行われるおすすめのランタン祭り
ランタン祭りは日本でも各地で開催されています。まずは冬に開催される、おすすめのランタン祭りを見ていきましょう。冬には灯りと雪景色が同時に楽しめるイベントもあり、ロマンティックな雰囲気で人気です。
※各催しは新型コロナウイルス感染対策のため、開催の変更や制限がある可能性があります。詳細は各自治体のHPや事務局からの情報を参照してください。
長崎県 「長崎ランタンフェスティバル」
「長崎ランタンフェスティバル」は、長崎市の新地中華街に住む華僑が旧正月を祝うために始めた祭りです。豪華な中華ランタンに彩られた光景が評判を呼び、現在では冬の長崎観光を代表する大規模なイベントとなっています。
新地中華街の他に6カ所のイベント会場が設けられ、期間中は極彩色の中華ランタンが夜の街を埋め尽くします。ランタンは全部で約1万5000個もあり、日本にいることを忘れてしまうほどの迫力です。
過去には中国を舞台にした映画とのコラボやスカイランタン打ち上げ体験、ランタンを使った恋愛成就祈願など、さまざまな企画が開催されています。
岩手県 「はなまき星めぐりの夜」
「はなまき星めぐりの夜」は、岩手県の花巻温泉郷で開催されている宿泊者対象のイベントです。参加者は各宿泊施設から、送迎車で会場となるスキー場に集まり、夜空にスカイランタンを飛ばします。
ランタンには事前に願いごとを記入でき、飛ばした後は打ち上げ花火も鑑賞できます。雪と美しい星空、さらに温泉まで楽しめる、ファミリーにも人気のイベントです。
1月・2月の日曜日に数回開催されており、宿泊者以外の人が参加できる日帰りバスツアーを実施する日もあります。
スカイランタンイベント〜はなまき星めぐりの夜〜|【花巻観光協会公式サイト】
新潟県 「つなん雪まつりスカイランタン」
新潟県津南町では、2012年より雪まつりの期間中に東日本大震災からの復興を願う、スカイランタン打ち上げイベントを開催しています。
会場は津南町のスキー場「ニュー・グリーンピア津南」です。前夜祭と本祭の2日間にわたり、ランタン打ち上げの他にも音楽ライブやスノーボード大会、花火などの企画が楽しめます。
なおニュー・グリーンピア津南では、雪まつりの開催日以外でも12月中旬から3月末までは毎日スカイランタンの打ち上げを体験できます。
夏・秋に行われるおすすめのランタン祭り
ランタン祭りは元々、温暖な東南アジア地域で見られる儀式です。暖かい季節に開催されるイベントなら、より本物に近い雰囲気を楽しめるでしょう。小さな子どもがいる場合や寒さに弱い人にもおすすめの、夏や秋のランタン祭りを紹介します。
富山県 「ベトナム・ランタンまつりinなめりかわ」
「ベトナム・ランタンまつりinなめりかわ」は、ベトナムの港町「ホイアン」のランタン祭りに倣ったイベントです。富山県滑川市瀬羽町の街並みが、ホイアンの旧市街に似ていることがきっかけで始まりました。
ホイアンは歴史的な建造物が建ち並ぶノスタルジックな風景と、満月の夜に行われるランタン祭りで知られる人気の観光スポットです。
祭り会場には、ホイアンと同じように大小さまざまのランタンが飾られ、ベトナム料理の屋台や雑貨店が並びます。民族衣装「アオザイ」の試着やベトナム音楽演奏などの企画もあり、ホイアンを観光している気分に浸れるでしょう。
京都府 「京都七夕スカイランタン祭り」
「京都七夕スカイランタン祭り」は、LEDランタンを開発した企業が主催するイベントです。世界遺産に指定されている上賀茂神社を舞台に、8月中旬頃の数日間にわたり開催されています。
開催日には音楽ライブのステージや食べ物の屋台が設置され、京都の夏の夜を満喫できます。ランタンは火を使わず全てLEDで光る仕組みになっており、火事ややけどの心配がありません。小さな子どもと一緒でも、安心して参加できるでしょう。
公式 | 七夕祭りスカイランタン2021 | 京都/関西/日本
宮崎県 「みやざきグルメとランタンナイト」
「みやざきグルメとランタンナイト」では、1万個ものランタンが光る場内で全国のグルメを食べ歩きできます。8月の約2週間にわたって行われるイベントでは、ご当地グルメとして人気の肉料理や麺類・スイーツ・地元宮崎の料理などが、期間の前後半入れ替え制で合わせて60もの屋台で出品されます。
過去には宮崎出身のイタリアンシェフがプロデュースしたカフェで、ここでしか食べられない限定メニューを提供した年もありました。芸能人によるイベントや「ちびっこお祭り広場」もあり、ファミリーでも楽しめるイベントでしょう。
一度は行ってみたい海外のランタン祭り
世界中から観光客が集まる海外のランタン祭りでは、日本とは一味違った雰囲気を楽しめます。一度は訪れたい、海外のおすすめの祭りを紹介します。
タイ・チェンマイ 「コムローイ祭り」
「コムローイ祭り」は、「塔の上のラプンツェル」のモデルとなった祭りです。年に一度、11月の満月の夜に開催されます。なお「コムローイ」とは、スカイランタンのことです。
元々は個別に飛ばしていたランタンを、チェンマイのサンサーイ地方にある寺院で一斉に飛ばす祭りを始めたところ、参加した外国人の間で話題になり、世界的に知られるようになりました。
寺院での祭りは参加者が増え過ぎたため、環境に配慮して中止されましたが、現在は郊外へ会場を移し、数千人が同時に参加できる大規模観光イベントとなっています。
会場ではランタン打ち上げまでの間にタイ舞踊奉納や読経などが催され、タイ文化を満喫できます。
・名称:コムローイ祭り
・日程:11月の満月の夜(2021年は11月19~20日)
・会場:メージョー大学他、計6カ所
ベトナム・ホイアン 「ランタン祭り」
ホイアンは、16世紀頃に貿易の中継地として栄えた古い港町です。オランダやポルトガル・中国・日本などからやってきた外国人が多く暮らす、国際的な町でした。
旧市街には異国情緒漂う昔の建築物が残っており、日本に関係するものもあります。歴史的な価値が高いとして、1999年にはユネスコ世界遺産に指定されました。
ホイアンのランタン祭りは、満月の夜に行われます。日が暮れるとほとんどの電灯が消され、月とランタンの光だけが照らす別世界が現れます。
街中を流れる川にもたくさんの灯篭が浮かび、とても幻想的です。祭りのメインストリートでは、伝統舞踊や音楽演奏などの催しもあり、過去へタイムトラベルしたような気分を味わえるでしょう。
・名称:ホイアン ランタン祭り
・日程:毎月1回(※月によっては2回)、満月の夜
・会場:ホイアン歴史保護地区
アメリカ・ラスベガス 「RiSE」
「RiSE」はタイのコムローイ祭りをヒントに始まった、スカイランタン打ち上げイベントです。ラスベガスから車で約30分の場所にある広大な砂漠を会場に、約2万個のランタンを使って盛大に行われます。
イベント終了後は全てのランタンを回収し、ごみを残さないなど、環境に配慮した取り組みも評価されています。開催当日は昼間からライブイベントやフード屋台でお祭り気分が盛り上がり、打ち上げまでの時間を持て余す心配もありません。
一斉打ち上げのタイミングは2回あるので、自分の番ではないときはゆっくり写真撮影も可能です。2回目の打ち上げが終わると花火が上がり、ランタンとの共演を楽しめます。
・名称:RiSE
・日程:10月初旬(2021年は10月1~2日)
・会場:ラスベガス・モハーヴェ砂漠
※海外の催しについては、世界的な新型コロナウイルスの流行を受けて、外国人の渡航制限や各催しの開催中止・変更がある可能性があります。詳細は外務省・各国のオフィシャルサイト・旅行代理店などの情報に留意してください。
ランタン祭りに想いを馳せて
ランタン祭りは本来、祈祷や祝賀のために行われる神聖な行事でした。暗い夜空に浮かぶランタンの灯りを見るだけで心がやすらぎ、優しい気持ちになれるでしょう。スカイランタンを飛ばす体験も、カラフルなランタンの中を歩くのも、どちらも捨てがたい魅力があります。
近年の新型コロナウイルス流行下ではなかなか難しい局面もありますが、平和な暮らしを祈るランタン祭りに想いを馳せつつ、いつか機会があれば家族で訪れてみたいものですね。
構成・文/HugKum編集部