【SDGs】小学生向け「うんち教室」の内容がすごい!受けた子どもたちは地球環境まで考えるように!

SDGsとは、Sustainable Development Goals の略で、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。これは、国連で採択された、2030年までに達成を目指す17の目標と具体的な行動計画のことです。最近、よく耳にする(目にする)SDGs を「キーワード」を通して学びながら、暮らしの中でできることを実践! 子どもと一緒に「生きたい未来」をクリエイションしましょう。

今月のキーワード : トイレ・うんち

 

排せつは、生きるためになくてはならない日々の行為。けれど、大人も子どももマジメに学ぶ機会が少ないのが現状です。日本では「学校のトイレでうんちをするのが恥ずかしいからガマンする」という子どもがいる一方、世界では2018年時点で46% の人がトイレのない環境で暮らしています(ユニセフ「世界子供白書」より)。

このようなトイレとうんちに関わる国内外の問題に、〝臭いものにはフタをする〟わけにはいかないとアクションを起こしているのが、王子ネピア株式会社です。CSR(企業の社会的責任)のプロジェクトに取り組む、マーケティング本部の高瀬智子さんにお話を伺いました。

元気なうんちが教えてくれる体の健康と地球環境の大切さ

──小学生に向けた学習プログラム「うんち教室」を始めた理由を教えてください。

高瀬智子さん(以下、高瀬)我が社は、トイレットロールやオムツを主力商品としている企業なので、排せつに関わることで社会貢献をしたいと考えていました。そんなとき、日本トイレ協会(現・日本トイレ研究所)の話を聞く機会があり、小学生が学校の和式トイレで用を足すことができないなど、子どもたちのトイレ事情に異変が起きていることを知りました。そこで、正しくうんちのことを知り、健康づくりに役立ててもらいたいと、2007年に「うんち教室」をスタートしました。09年からは「うんち教室研修会」を始め、養護の先生を対象にセミナーも開催。1 人でも多くの子どもたちに、うんちの大切さを知ってもらえるように努めています。

──どのような内容なのですか?

高瀬 元気なうんちとはどのようなものか、どうしたら元気なうんちをすることができるのかを伝えます。さらに、和式トイレの使い方、世界のトイレ事情、トイレットロールの循環など環境についても話をします。最後に、乾くと木になるオガクズ粘土を使って「うんち形鉛筆」を作るワークをして終了です。

健康、栄養、環境を楽しく学べる「うんち教室」

排せつは、食べることと同じように大切なこと。けれども、子どもたちが排せつについて正しく学ぶ機会が少ないのが現状です。「いいうんちと悪いうんち」「うんちと環境」「世界のトイレ」などについて楽しく学び、排せつの大切さ、健康や環境とのつながりを知り、トイレに行くことは恥ずかしくないという心を育みます。

 

──子どもたちからは、どんな反応がありますか?

高瀬 「野菜が食べられるようになった」「うんちを観察するようになった」などの感想をもらいます。

──このうんち教室を始めたことが「千のトイレプロジェクト」につながったのでしょうか?

高瀬 はい。活動を通して、世界には汚れた水とトイレの不備からお腹をこわし、脱水症状などで命を落とす子どもがいることを知りました。そこで、ユニセフを支援し、東ティモールでのトイレ普及と衛生環境改善を進める「nepia 千のトイレプロジェクト」を2008 年から始めました。

東ティモールでのトイレ普及と衛生環境改善を進める「千のトイレプロジェクト」

2002年に独立をしたアジアでいちばん若い国、東ティモール。農村部では屋外排せつが習慣的に行われており、衛生環境の悪さから子どもたちの健康が脅かされていました。プロジェクトでは、新品のトイレを贈与するのではなく、自分たちの力でトイレを作る「CLTS(Community Let Total Sanitation)」という手法を支援。今後は、さらなる衛生意識の向上や衛生環境全般への改善を進めていく予定。

 

──どのような活動なのですか?

高瀬 習慣的に屋外排せつをしている農村地域では、不衛生な環境が原因で病気になったり、女性にはレイプの危険があることも否めません。そのような環境を改善するために、まずは「トリガリング」と呼ばれるワークショップを住民全員で行い、トイレの必要性に気づいてもらいます。そして、現地で調達できる資材を用いて自分たちでトイレ作ります。その一連のプロセスを継続的に支援するプロジェクトです。

──これまでの成果は?

高瀬 この10年間で、約2万件のトイレが作られ、14万人以上の人がトイレを使えるようになり、東ティモールでの子どもの死亡率は3割減となりました。

死亡率推移の出典:「ユニセフ 世界子供白書2019- 子どもの死亡率に関する指標」より
※ 2020 年9 月現在(建設中のトイレを含む)

 

──これらの活動を通して、どんなメッセージを伝えたいですか?

高瀬 地球でできた食べ物が自分の体の中でうんちになって地球に戻る。そんな「循環」や「環境」を知るきっかけになり、自分の体と地球のことを大切に思う気持ちを育んでもらえたらうれしいです。

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親子で体験! 自分のうんちと向き合う

「うんち教室」で使っている教材をダウンロードして(無料)、親子でうんちについて語り合いましょう。

自分のうんちと1週間マジメに向き合う

「うんち教室」で配られる「うんち日記」。起きた時間、朝食の内容、うんちの回数、うんちの特徴などを1週間分記録できる冊子です。

うんちのいろいろ、うんちはなにからできている? うんちはどこにある? 元気なうんちをするためのアドバイス、トイレットロールやうんちの循環、世界のトイレ事情なども掲載されているので、テキストとしても役立ちます。

親子で1週間、徹底的にうんちと向き合って、体と地球がどのようにつながっているのかを考えてみましょう。

元気なうんちをするための3つの約束は、「❶朝コップ1杯の水を飲むこと ❷朝ごはんを好き嫌いなく、よく噛んでモリモリ食べること ❸外で元気よく遊ぶこと」。

「うんち日記」は、以下よりダウンロードできます。

https://e-nepia.com/learn/unchi-kyoshitsu.html

 

記事監修

高瀬智子

王子ネピア(株)マーケティング本部。トイレットロールやティシュなどの商品企画業務のほか、「うんち教室」「千のトイレプロジェクト」のCSR活動、FSC®などの環境活動にも取り組んでいる。

『小学一年生』2022年2月号 別冊『HugKum』 構成・文/神﨑典子 写真提供/王子ネピア nepia.co.jp

1925年創刊の児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターとともに、子ども達各々が自身の無限の可能性を伸ばす誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載しています。

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