おもちゃが子供の一生の友達になることも【おもちゃ美術館・子どもには物語のあるおもちゃを7】

東京おもちゃ美術館のミュージアムショップ「APTY(アプティ)四谷店」の店長を務める杉村美由紀さんに、おもちゃを売るだけにとどまらない「APTY」のこだわりや大切にしていることを伺いました。そして、お子さんが店内で“心の友”と巡り合う率の高い「ベイビーベア」をご紹介します。

日本のおもちゃ作家のおもちゃがそろう店

中野にあったおもちゃ美術館が新宿区四谷へと移転し、日本をはじめ世界各国のおもちゃに触れて遊べる体験型ミュージアム「東京おもちゃ美術館」としてオープンしたのは2008年のこと。このとき同時にオープンした、ミュージアムショップ「APTY四谷店」の立ち上げを担当し、店長を務めるのが杉村さんです。

「当初は、デザインも素敵で質の高いヨーロッパのおもちゃ中心のお店を作る方向で進めていました。しかし途中で、代表の多田から『いや、ここは日本のおもちゃ作家のおもちゃがそろうショップにしよう!』と鶴の一声がありまして(笑)。もうひとりの担当と、作家さんにご連絡して会いに行って交渉して……、なんとかオープンにこぎつけました」

おもちゃ作家50人ほどとの取り引きからスタートし、現在では150人もの作家とつながっているのだそう。手探りのなか歩んだ10年。4月にはMADE IN JAPANの木のおもちゃブランド「KItoTEto(キトテト)」を立ち上げるなど、たしかな手ごたえを感じていると言います。

十人十色の遊び方が生まれるのがおもちゃの魅力

長野出身で、子どもの頃からおもちゃも好きだったけれど、「私自身は大自然で遊んでいたクチ」という杉村さん。そんな杉村さんの原点は、大学時代に出会ったおもちゃ美術館でした。

「学芸員の資格を取るための実習先として、おもちゃ美術館にお願いしたんです。そしたら、すごく楽しくて。何にでもいえることかもしれませんが、子ども10人いたら10人それぞれ。ひとつのおもちゃでも、10人いたらそれぞれの遊び方がある。説明書通りではないということにやりがいを感じました」

この出会いをきっかけに、在学中おもちゃコンサルタントの資格も取得。このままおもちゃの専門家として突き進むかと思いきや、その時はご縁がなく、パン屋に就職します。4年ほど働き、思い立って辞めることに。するとその直後、おもちゃ美術館から「ショップで働いてくれる人を募集している」との連絡が入ります。

「代表の多田がよく言うことに、“夢をかなえる秘訣は語り続けること”というのがあります。私も、パンの差し入れと称して頻繁に美術館に顔を出したり、会う人会う人におもちゃのことを語っていましたね。幸運にも私は多田理論で夢が叶いました(笑)。怖いほどのタイミングには驚きましたが!」

アプティ代表の多田さんは、東京おもちゃ美術館の館長でもある方。アプティも東京おもちゃ美術館も、多田さんのお父様が立ち上げた「芸術教育研究所」がルーツです。幼児教育や、絵画指導を専門とした組織で、アプティは2018年4月に社名変更しました。

子どもにこそ本物を与えたい

「Art」「Play」「Toy」を掛け合わせて名付けられたAPTY。その名前からも、芸術教育研究所の流れを汲み、思いが受け継がれていることがわかります。

「コーポレートサイトでは、『おもちゃは、はじめて触れるアートです。』と掲げています。先代は戦争も経験し、平和の大切さを痛切に感じていました。美しいものを美しいと感じる心を子どもたちに持ってもらいたい。おもちゃで遊ぶことや絵を描くこともそうですが、そうやって人と楽しい時間を過ごす中で、豊かな心を育んでいってもらいたいと思っているのです」

株式会社アプティHPより

日本において、おもちゃや遊びは「おもちゃのようなもの」「遊び半分」など、イメージの悪い表現にも用いられます。杉村さんは、こうした意識も変えていきたいと話します。

「日本ではすぐに壊れてしまうプラスチックのおもちゃが主流だった時代、先代が研究のためにロシアやドイツへ行くと、子どもたちがすごくいいおもちゃで遊んでいることに驚いたそうです。深く感銘を受け、子ども時代にこそ本物が大切だと考えるようになったと聞いています。私もおもちゃや遊びの重要性を伝えていきたいですね」

「ベイビーベア」が、一緒に成長していく一生の友だちに

スタッフのほとんどがおもちゃコンサルタントの有資格者だというAPTY。子ども一人一人とおもちゃを大切にしていることは、杉村さんが紹介してくれた木製の人形「ベイビーベア」のエピソードからも垣間見ることができます。

「ベイビーベアは、お子さんが『宝物見つけた!』というように手に持って離さなくなることがよくあります。パペットなどでは時々あることですが、それをかたい木で表現されている点が素晴らしいですよね」

定番はブナとウォールナット。現在、店頭にはクリやケヤキ、サクラなども並んでいます。それらは良い木に巡り合うと制作され、木が本来持つ色味を大切に着色せず作られている木のテディベアです。

テディベアといえば世界中で愛され、その子のそばで一緒に成長していく心の友。大切な友だちに出会ってしまった子どもは、もう箱にも袋にも入れたくなくてそのまま抱いて帰りたいと言うのだそう。

「そんなときには購入済みのシールにはせず、『わたしだけの印ね』とリボンをつけています」

ベイビーベアではないものの、杉村さんの長男にも“心の友”がいるそうで、「大切な友だちが言うことは、親が言うより聞いてくれますよ(笑)」。

※掲載の商品は取材時のものです。

ベイビーベア take-g
材質:ブナ、ウォールナット・ビー玉
塗装:オイル塗装
サイズ:120×80×120mm
価格:9,180円(税込)~
APTY(アプティ)四谷店
https://www.aptytoys.co.jp/
営業時間:10:00~17:00
休業日:木曜日、他 東京おもちゃ美術館営業カレンダーに準ずる
※ミュージアムショップのみの利用には、入館料はかかりません。
アプティオンラインストアAPTY STYLE  http://goodtoy-guide.com/
杉村美由紀さん
東京おもちゃ美術館 ミュージアムショップAPTY四谷店 店長。学生時代、おもちゃ美術館での学芸員実習でやりがいと楽しさを感じおもちゃの世界へ。東京おもちゃ美術館開館時には、「日本を木のおもちゃ大国にする」という思いのもと、四谷店立ち上げを担当する。小学生の2児の男の子の母。

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