色で遊べる、水遊びもできる!枡からできた”ますつみき”【おもちゃ美術館・子どもには物語のあるおもちゃを1】

わが子には良質なおもちゃでたくさん遊んでほしい。でも、どんなおもちゃを与えたらいいの?どうやってあそんだらいい?と迷ってしまうこともありますよね。

そこで、日本をはじめ世界各国のおもちゃに触れて遊べる体験型ミュージアム「東京おもちゃ美術館」にまつわる、おもちゃと遊びのプロたちにおすすめのおもちゃを紹介していただく連載「子どもには物語のあるおもちゃを残したい」がスタートします。

第一回となる今回は、おもちゃ美術館の館長である多田千尋さんが登場。今春に立ち上がった木のおもちゃブランドKItoTEto(キトテト)から、「ますつみき」の魅力を語っていただきました。

赤ちゃんにはおもちゃと生活道具の境界線は存在しない!

©︎2018 KItoTEto/Photo: Abiko Sachie

子どもにとっての「良いおもちゃ」とは、いったいどのようなおもちゃなのでしょうか。多田さんは、今回ご紹介いただくますつみきを眺めながら、こんな話を始めました。

「赤ちゃんがおもちゃよりも、ティッシュペーパーを次々出したり、泡だて器やしゃもじに目をギラギラさせながら夢中になって遊ぶことってありますよね。一方で当然ながら、おもちゃがお気に入りの遊び道具になることもあるわけですが、特に3歳未満の赤ちゃんにとっておもちゃと生活道具との間に境界線はありません。そこに境界線を引きたがるのは大人の事情。線を引かないと生活に支障を来しますからね(笑)」

せっかくのおもちゃより、赤ちゃんが身近なものに心を奪われていて、なんだかガッカリ……、とはよくある話。
多田さんは、以前から境界線をほんの少しおもちゃのほうへずらすだけで、「よいおもちゃ」になる生活道具はないだろうかと考えていたといいます。

「耐久性と機能性という面では、おもちゃは生活道具にかないません。生活道具が機能性を失ったとしたら、すぐに市場から消えてしまうでしょう」

そんな耐久性と機能性に優れた生活道具がおもちゃになったとき、ちょっと幸せになるのではないかと感じたそうです。

やってみよう!「ますつみき」。例えばこんな遊び方

年間14万人もの人が訪れ、親子のお出かけ先としても人気の「東京おもちゃ美術館」。そのオフィシャルトイショップ「APTY(アプティ)」と日本のおもちゃの作り手たちによって作られたMADE IN JAPANの木のおもちゃブランド、「KItoTEto(キトテト)」は現在13アイテムあります。

ラインナップに名を連ねる「ますつみき」はその名の通り、升を積み木にアレンジしたもの。本来、米を量ったり酒を飲む道具である升は水に強く、これまでなかった水遊び兼用の積み木として遊ぶことができるのは、このおもちゃの大きな特長でしょう。

「シンプルな中にも、底面に色を付けたりますつみきに収まる円柱のつみきを加えたりしています。これだけでもさらに遊びが発展しますよね」と、多田さん。「ますつみき」で広がる遊びの一例を教えてくれました。

積み重ね遊び

©︎2018 KItoTEto/Photo: Abiko Sachie

安定感があり、小さな子でも簡単に積み重ねることができます。重ね方やずらし方が変われば積み上がる形もさまざまに変化。木曽ひのきで作られている「ますつみき」は、崩れたときの音にも品があり、崩し遊びもおすすめです。

水遊び

©︎2018 KItoTEto/Photo: Abiko Sachie

お風呂やプールで水をすくうだけで子どもには遊びに! 水に浮かべればプカプカ漂う船に見えてきませんか? 升なのでフィギュアなどのお客さんも乗せやすく、ごっこ遊びへも発展するでしょう。

※水遊びをしたあとは、陰干しして十分に乾燥させてください。

神経衰弱

ますつみきを伏せて置き、中には消しゴムやボタンなどをペアになるように入れます。あとはトランプゲームの神経衰弱とルールは同じ。パカッとあけてペアを探しましょう。記憶力と集中力が養われます。

「幼稚園児と遊んだら木っ端みじんに負けました(笑)。子どもは気合が入っているから強いよね」と多田さん。

ほかにも、円柱つみきに「ますつみき」をかぶせて「宝さがし」や、「ますつみき」での「移しあいっこ遊び」など、遊びのバリエーションはどんどん広がりそうです!

日本の木と子どもたち、そしてママがつながるおもちゃを作りたい

©︎2018 KItoTEto/Photo: Abiko Sachie

「ますつみき」のブランド「KItoTEto」には、 “森とママとをつなげたい”という思いも込められています。

「日本は世界第2位の森林率を誇る森林大国。ママたちにも森に関心を持ってもらいたいと、KItoTEtoのおもちゃにはQRコードを付けました」

KItoTEtoのおもちゃを買い、子どもと遊ぶ。そして、ママがひとり落ち着いたとき、QRコードにスマホをかざすとおもちゃ作家の思いや地域の風景が浮かび上がる映像が流れる、という仕掛けです。

©︎2018 KItoTEto/Photo: Abiko Sachie

「映像を見ると、自分が買ってきたおもちゃがどこでどのようにして生まれたのか、それらが臨場感を持って伝わる。昔ながらの職人が作っているようにイメージしていると、『こんなに若い人が作っているの!?』と驚くかもしれませんね」

「ますつみき」を作っているTree to Greenは、日本の木を使ったものづくりからよりよい環境や文化をつくろうとしているベンチャー企業。「ますつみき」が生まれたのは、多田さんと、多田さんいわく「脱サラした元銀行員の男と、木工職人にだけはなりたくないと山から逃げてきた男が作った会社」が出会ったことがきっかけでした。木育やウッドスタート(赤ちゃんと木の出会いを大切にする取り組み)に共鳴するのは自然な流れだった、といってもいいかもしれません。

取締役を務める小瀬木さんは、木曽の生まれで父親は木工職人。すかさず、故郷 大桑村の村長に直談判してウッドスタート宣言(誕生祝い品に地元の職人が地域材で作るおもちゃのプレゼントと、ほか1つの木育事業を行い、子どもと木の出会いを大切にする取り組み)へと導いていました。

「大桑村で赤ちゃんに贈られる誕生祝い品はTree to Greenと小瀬木木工所が製作することになるわけですが、小瀬木さんが『親父の木工所って昔から升ばかり作っていたんですよね。おもちゃなんて作れるかな』と言うわけです。ですから、升を作っていたならそれを生かそう!升で積み木を作れるのは小瀬木木工所しかいない!とおもちゃ作りへの後押しをしました」

会社の設立、そして多田さんとの出会い、息子と父の物語、そんな数々のドラマが隠されているのも、このおもちゃを魅力的なものにしている要因なのではないでしょうか。

子どもに、良質でストーリーがあるおもちゃを

©︎2018 KItoTEto/Photo: Abiko Sachie

生活道具がおもちゃになった水遊び兼用積み木「ますつみき」。そして、木と手をつなぎ、森とママとをつなぐ「KItoTEto」。
木肌から伝わるぬくもりや香り、重さは、感受性の高い子どもたちによい刺激を与えてくれます。日本の木のおもちゃで遊ぶことは、子どもと過ごす時間をちょっと豊かなものにしてくれるかもしれませんね。

ますつみき Tree to Green
ひのき(木曽産)
ますつみき:8個(W64×D64×H41㎜)
円柱つみき:4個(W45×D45×H32㎜)
価格:5,805円(税込)

KItoTEto公式HP  https://kitoteto.jp/

購入はこちらから

 

お話を伺ったのは

多田千尋さん
東京おもちゃ美術館 館長。乳幼児から高齢者までの遊び・芸術による支援活動及び、世代間交流の実践・研究に取り組む。認定NPO法人芸術と遊び創造協会 理事長、高齢者アクティビティ開発センター 代表も務める。『0~3歳 木育おもちゃで安心子育て』『3~5歳 木育おもちゃで安心子育て』『遊びが育てる世代間交流』(黎明書房)など著書多数。3児の父。

記事監修

おもちゃ美術館|木のおもちゃ

日本をはじめ世界各国のおもちゃに触れて遊べる体験型ミュージアム「東京おもちゃ美術館」。認定NPO法人芸術と遊び創造協会運営。「赤ちゃん木育ひろば」など、親子で木のぬくもりに触れる場を提供。長門や鳥海山木など全国に姉妹館が。おもちゃを通して日本の木の良さを伝える「木育(もくいく)」を広めている。


 

取材・文/木村亜紀子

 

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