春の味覚、ふき
日本の風土で難なく育つふきは、平安時代の頃からすでに栽培されていたそうです。食用だけでなく、大きな葉を丸めて器にし、水を飲んだり傘の代わりに使ったりしたそうですよ。アイヌの伝承で愛された小人「コロボックル」も、「蕗(ふき)の下の人」という意味ですね。また、ギリシャ名では「つばの広い帽子」を意味する「ぺタソス」の名がついています。
ふきのとう
まだ早い春に、日当たりの良い土手などに地面から顔を出す「ふきのとう」。ふきになる前の花の蕾です。これを収穫して、天ぷらなどでいただくと、淡い苦味を楽しむことができます。地中にある根茎から伸びるため、毎年同じ場所に育ち、茎は50〜80cmにまで育ちます。
ペタシテニンという物質が含まれ、肝臓へ負担がかかりますから、食べ過ぎはよくありません。必ず茹でてあく抜きをしてから口にします。
芽吹きの季節に苦味がある山菜を食べることは、冬の間に溜め込んだ老廃物や脂肪を排出し、新陳代謝の働きを促します。山の恵みを、おいしくいただきたいですね。
効能
ふきのとうやふきの葉には、ポリフェノールのフラボノイドが含まれ、切り傷、虫さされの時に葉を揉んで傷口につけると炎症が治まります。蛇に噛まれた時の手当にも使われたそうですよ。その他にも、抗酸化作用、健胃作用があります。
ただし、キク科のアレルギーがある方は口にしないように気をつけてください。
料理
ふきのとうは、刻んでお味噌汁の具や、佃煮、天ぷら、ふき味噌にします。葉柄と葉は独特の香りとほろ苦さが特徴です。煮物、きゃらぶき、酢の物、胡麻和え、佃煮が一般的です。
ふきのとう 保存方法
根元部分にはペタシテニンが多いので破棄し、花が開く前の、蕾のうちにいただきます。
乾燥しないように新聞紙やキッチンペーパーなどに包み、ポリ袋に入れて野菜室へ入れます。せっかくの香りがどんどん消えていきますから、2〜3日の期限です。
ふきの保存方法と下ごしらえ
繊細なふきのとうと比べ、ふきは比較的おおまかな扱いでもかまいません。具体的な方法をご紹介します。
ふきの下処理とアク抜きの手順
スーパーで売っているふきは比較的アクが少ないですが、野山で採取すると手が黒くなるほどです。アクをとる工程を詳しくご紹介します。
・板ずり
【1】長いままのふきは、使用する鍋に入る長さに合わせてカットしてください。できるだけ長いほうが筋取りの本数が減ります。大きい鍋がなければ、フライパンを使うのもOK。
【2】まな板にふきを並べ、大さじ1杯程度の塩をふりかけます。まな板に押しつけるように、ゴリゴリと手の平で転がします。塩が全体にまぶされ、香りがたちます。板ずりは、茹でたあとに色がきれいに出る処理です。これでアクも抜けやすくなりますよ。
【3】流水で塩を流せば、板ずりは完了です。
・下茹で
【1】板ずりの後、下茹でをします。フライパンなどの大きな鍋にお湯を沸かしてください。沸騰したらふきを入れて2〜3分茹でます。
【2】茹で上げたふきは水にさらします。
・筋とり
ふきが冷めたら、次に筋取りをします。
カットした断面から表皮を剥がすと、筋が一緒にとれます。バナナの皮をむく要領です。
アク抜きをしながら冷蔵保存
アク抜きを兼ねて、水に浸したまま冷蔵庫で保存します。一晩たてばアクは少なくなります。毎日水を換えながら、1週間ほどで使い切ります。
ふき 塩漬け保存
アクが抜けたふきは、塩漬けにしておくとさらに長持ちします。
・手順
【1】漬物容器などに塩をひいて、ふきを並べます。
【2】ふきが見えなくなるくらい、たっぷりと塩をかけてください。続けてふきと塩を交互に入れて、ラップやビニールなどで覆います。
【3】蓋をして冷暗所で保存します。
・保存期限
しっかり塩に漬かっていれば、常温で半年~1年ほど、保つことができます。
・使い方
塩から取り出したふきは、水につけて塩抜きをします。水を交換しながら一晩〜1日で調理に使えます。
ふきの保存食レシピ
しっかり味が染みて、やわらかいきゃらぶきを作ってみませんか。
ふきの佃煮 きゃらぶき
佃煮風に甘辛く煮たきゃらぶきは、日本各地で作られ、古来から愛されてきたご飯のとも。ご家庭や地域の味があり、濃口醤油で炊いた黒っぽいものや、薄い色の上品な味もあります。
◆材料
ふき 200g
【A】
水 200cc
濃口醤油 大さじ1と½
砂糖 大さじ2
酒 40cc
◆ポイント
厚手の鍋や土鍋を使って煮ると繊維が溶けて柔らかいきゃらぶきが作れます。伝統の味は手間と時間をかけることでおいしくなりますよ。また、圧力鍋を使うのもおすすめです。
◆作り方
【1】筋取り、アク抜きの処理が終わったふきを3cm程度の長さに切りそろえます。
【2】【1】と【A】を鍋に入れて火にかけます。沸騰したら弱火にして落し蓋を被せアクを取りながら煮ます。
【3】煮汁がなくなるまで、1時間程度ゆっくりと炊くことで柔らかく、味が染み込みます。最後は焦げ付きやすいので、煮汁をからませながら仕上げてください。
身近な食材としてふきを楽しむ
スーパーでは早春にしか見かけないため、扱い慣れない食材かもしれませんね。春ならご自分で収穫することもできるし、保存食として貯蔵することも簡単です。ふきのとうがチョコンと頭を出す早春を待ちわび、夏には驚くほど大きく伸びる茎や葉を見守る喜びもあります。ぜひ、保存方法を覚えて身近な食材として味わってください。
構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)