半導体とは?
生活に関わる多くの場面でデジタル化が進み、現代において半導体は欠かせないものとなっています。まずは半導体の性質と、半導体が使われている製品について見ていきましょう。
電気を通したり通さなかったりする物質
電気が流れるか流れないかという基準で考えたとき、全ての物質は「導体」「半導体」「絶縁体」のいずれかに分類されます。
「導体」とは、電気が流れやすい性質を持つ物質です。鉄はもちろんのこと、金・銀・銅、アルミなども導体といわれます。反対に「絶縁体」は、電気が流れにくい物質のことで、ガラス・ゴム・プラスチック、木などが該当します。
「半導体」とは、「導体」と「絶縁体」の中間で、電気をよく通すわけではありませんが、通さないわけでもない物質のことです。
温度によって電気抵抗が変わるのが特徴で、低温時はほとんど電気が流れず、温度が高くなると流れやすくなります。
身の回りにある半導体のアイテム
半導体はとても身近なところで使われています。エアコン・テレビ・洗濯機などの家電や、スマートフォン・パソコンといったIT製品も半導体で制御されているのです。
もっと大きく範囲を広げれば、ATMや電車などの社会インフラや医療機器なども挙げられます。インターネット通信のような目に見えにくいものも、システムの中枢を担っているのは半導体です。
私たちが便利に使っているほぼ全てのものに、半導体が組み込まれているといってよいでしょう。
半導体の種類と使い道
半導体は、その役割によって特化されています。主な使い道は、「IC」「発光デバイス」「電力制御」です。それぞれがどのように利用されているのか見ていきましょう。
IC(集積回路)
「IC」はIntegrated Circuitの略で、「集積回路」のことです。1個のシリコンで造られた基板の上に、電流をコントロールするためのトランジスタ・抵抗器・コンデンサなどの素子をまとめた電子部品です。
例えば、スマートフォンは、通話だけでなく写真を撮ったりアプリを使ったりできます。さまざまな用途で使えるのは、中に入っているICが、電気によるデジタル信号を処理し、記憶や思考といった仕事をしてくれているからです。
ICの集積度が進むほど、複雑で高度な処理ができます。高集積のICは「LSI」、さらに集積度が高いものは「VLSI」と呼ばれます。1個の半導体の大きさは最小で1mmよりもはるかに小さく、肉眼では確認できないほどです。
発光デバイス
発光デバイスに使われるのは、ガリウムヒ素やセレン化亜鉛といった物質で作られた半導体です。これらは「光半導体」とも呼ばれ、シリコンよりもスムーズに光を出せます。
家の照明としても使われるLEDはLight Emitting Diodeの略で、日本語にすると「光る半導体」です。このような電気を光に変換する半導体を「発光素子」といいます。発光効率がよく、白熱電球や蛍光灯ほど電力を使用しません。
反対に、光を電気に変換するものは「受光素子」といいます。光センサーや太陽電池などに使われているのが、この受光素子です。
また、発光素子と受光素子を組み合わせたものを「複合素子」といい、光ファイバー通信などに使われています。
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電力の制御や変換
電力制御に使われる半導体は「パワー半導体」といい、主な材料は炭化ケイ素や窒化ガリウムです。大きな電圧や電流を扱い、使う電力を強めたり弱めたりできます。
パワー半導体が使われる例としては、エアコンがなじみ深いでしょう。エアコンの心臓部となる圧縮機はモーターで動いていますが、このモーターを管理しているのが「インバーター」と呼ばれるパワー半導体です。
以前のエアコンのモーターは、止まるか全開で回るしかありませんでした。しかし、インバーターが搭載されたことにより、微妙な温度調節ができるようになったのです。
このような仕組みを利用し、現在ではパワー半導体は自動車や交通機関などの大電力制御にも使われています。
世界の有名な半導体メーカー
半導体は日本でも作られていますが、大手となると海外勢がほとんどです。ここでは業界で高いシェアを占める、「半導体ビッグ3」といわれるメーカーを紹介します。
アメリカ「インテル」
長く半導体業界を牽引してきたメーカーといえば、「インテル入ってる」のCMでおなじみの「インテル」です。
1971年に世界初となるマイクロプロセッサーを発明して以降、インテルのプロセッサーはさまざまな分野の機器に組み込まれてきました。「Pentium」「Celeron」「Core」などは、全てインテルのプロセッサー名です。
2022年1月には、オハイオ州に世界最大級の半導体製造工場を作ることを発表しました。操業が軌道に乗ってくれば、さらなる生産能力の拡大が見込まれるでしょう。
インテル | データセンター・ソリューション、IoT、PC イノベーション
韓国「サムスン電子」
2021年度の半導体売上高ランキングで、3年ぶりにインテルから首位を奪還したのが「サムスン電子」です。
韓国最大の財閥企業「サムスングループ」の中核で、電子・電気事業部門を担っています。身近なところでは、Androidスマートフォンの「Galaxyシリーズ」がサムスン製品です。
2021年11月に受託専用の新工場設立を発表し、2024年下半期の稼働開始を予定しています。5GやAIといった高度な分野の製品が生産される予定なので、半導体のさらなる需要に応える工場になりそうです。
台湾「TSMC」
インテル・サムスン電子に続き、3大メーカーの一角を担うのが台湾の「TSMC(台湾積体電路製造)」です。
開発を行わず受託生産のみを行うファウンドリー企業で、半導体の製造市場において世界最大手となっています。インテル・アップル・AMDなど名だたる企業がTSMCへ生産を委託しており、2021年度第一四半期のシェア率は56%と圧倒的です。
またTSMCは、熊本県に工場を建設することを発表しています。2022年に着工し、2024年に稼働予定です。近年落ち込み気味の日本の半導体産業が、復興へ向かう足がかりとなるかもしれません。
台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー (TSMC)
半導体が不足しているのはなぜ?
2021年初め頃から、半導体が足りずパソコンや自動車などの生産がストップする現象が発生してきました。にわかに深刻化した半導体不足は、何が原因で起こったのでしょうか。
リモートワークによる需要の拡大
2020年といえば、新型コロナウイルスが世間を騒がせ始めた時期です。感染拡大を防ぐため、多くの企業が就業形態を在宅勤務やリモートワークに切り替えました。
その結果、PCやタブレットといった半導体製品の需要が急激に高まったのです。さらに、家で過ごす時間が増えたことから、家電・ゲーム機・健康器具などの売れ行きも伸びました。
しかし感染症の流行以前から、業界はフル稼働で半導体を製造していました。そのため生産が需要に追いつかず、さまざまな製品の工場が半導体の供給待ちをすることになっているのです。
アメリカの中国に対する制裁
トランプ政権の頃から、アメリカは中国を経済的に敵対視するようになりました。
2020年、アメリカは半導体製造の委託を、これまでの中国SMICから台湾TSMCや、同じく台湾の半導体ファウンドリーであるUMCなどへ切り替え始めます。
この結果、台湾企業に注文が集中しましたが、生産能力に余力がなく、半導体が品薄状態に追い込まれてしまったのです。アメリカの対中制裁が裏目に出てしまったといえるでしょう。
工場の度重なる操業停止
2021年の初め、アメリカの半導体工場は大寒波により一時閉鎖されました。台湾では干ばつによる水不足が起こり、大量の水を必要とする半導体生産に影響を及ぼしています。
日本でも旭化成エレクトロニクスや、ルネサスエレクトロニクスといった半導体生産工場が、相次いで火災に見舞われました。いずれも火災の規模が大きく、今も半導体の生産が一時停止した影響が残っています。
なお、あらゆる業種が半導体の納品を待機する状態は、2022年末には解消される見込みです。
デジタル社会に欠かせない半導体
ほんの10数年前と比較しても、IT技術は目覚ましく進化してきました。ITを発展させたものこそ半導体です。
そもそも半導体は物質の性質を表わす言葉ですが、今ではICを指して半導体ということもあります。半導体はデジタル社会の頭脳ともいえるでしょう。
半導体は、スマホや家電、電車や医療機関など、あらゆるところで使われています。これからもっと半導体が進化していけば、近い将来にSF小説のような世界が実現するかもしれません。
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文・構成/HugKum編集部