労働基準法ってなに?
労働基準法の存在を知っていても、詳しい内容が分からない人は少なくありません。対象者や制定の歴史など、労働基準法の基礎知識を解説します。
労働基準法(◆昭和22年04月07日法律第49号)-厚生労働省
働く人を守るための法律の一つ
日本には一般的に「労働三法」と呼ばれている、労働者と雇用主の双方にとって重要な法律が存在します。労働基準法は労働三法の一つで、労働時間や休憩時間、休日などの最低基準を定めたものです。残りの二つは「労働組合法」と「労働関係調整法」になります。
小学校や中学校では、労働に関する法律について詳しく学ぶ機会は少ないかもしれません。しかしいずれも、働く人を守るためにある大切な法律です。制定された理由や歴史も含めて理解しておくと、子どもが将来働くときに役に立つでしょう。
労働基準法の歴史
労働基準法は1947年4月7日に公布され、11月1日に完全施行されました。1947年といえば、第2次世界大戦の終戦から数年後です。
戦前の日本には、労働者を劣悪な条件で雇い、搾取する雇用主がたくさんいました。安い賃金で長時間働かせることで製造コストを下げ、他国よりも安く輸出する日本のやり方は、国際的にも非難されます。
このため戦後の日本を管理していたGHQは、日本人の労働環境を改善するための法律を制定するように、日本政府に指示したのです。以降、労働関連の法律は時代に合わせて改正を繰り返し、現在に至ります。
労働条件の基準が決められている
労働基準法には「労働条件」の最低基準が定められています。労働条件とは、1日の労働時間や賃金、休憩時間など、雇う側が労働者に示す条件のことです。
雇用主は労働者と雇用契約を交わす際に、労働条件をきちんと説明する義務があります。また労働条件は、労働基準法が定める最低基準よりも上でなければなりません。
もし契約の中に労働基準法が定める基準を下回る内容があれば、その部分は無効となります。ただし雇用主が基準を守っているかどうかを、行政が個別にチェックしているわけではありません。労働者側にも、提示された労働条件が合法かどうかを確認する姿勢が求められます。
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例外を除き禁止されていること
労働基準法では、労働者が不利な条件で働くことがないように、さまざまな禁止事項を設けています。子どもが身近に感じやすい、主な禁止事項を見ていきましょう。
中学生までの子どもの労働
原則として、義務教育終了前の子どもを、労働者として使用することは禁止されています。ただし次のような例外もあります。
・修学時間外の軽易な労働(満13歳以上)
・映画やドラマに出演する子役
満13歳以上の軽易な労働とは、朝夕の新聞配達のように、学校の授業と被らない時間帯でできる仕事です。子役に年齢制限はありませんが、労働時間や深夜労働などについて保護規定があります。
いずれの場合も、就労させる場合は労働基準監督署の許可が必要です。
長時間の労働
労働基準法が定める労働時間の上限を「法定労働時間」といいます。法定労働時間は、原則として1日8時間・1週間に40時間です。
法定労働時間を超えて働く「時間外労働(残業)」にも上限があり、原則月に45時間・年に360時間と定められています。
また特別な事情があるときに限り、労働者と雇用主が合意すれば、年間6カ月までなら複数月平均80時間以内の残業が可能です。
しかし、月に80時間といえば、1日平均4時間程度に相当します。このような状態が続けば心身ともに疲れて、家に帰ったら寝るだけの生活になってしまうでしょう。
労働基準法では労働者の健康を守るために、長時間労働が続くことのないよう規制しているのです。
参考:
労働時間・休日 |厚生労働省
時間外労働の上限規制 | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省
サービス残業
サービス残業とは、賃金が支払われない時間外労働のことです。労働基準法では、雇用主は労働者に時間外労働をさせた場合、1分単位で割増賃金を支払うことを定めています。
しかし適切に支払われていないケースが多く、ニュースになることもよくあります。サービス残業が起こる代表的な例は、以下の通りです。
・勤務時間を虚偽報告させる
・残業時間の端数を切り捨てる
・始業時間前の労働を残業とみなさない
残業時間は本来1分単位で申告できますが、実際には30分や1時間単位で申告させる会社は少なくありません。この場合40分残業しても30分相当の賃金しかもらえず、10分はサービス残業となってしまいます。
残業という言葉には終業時間以降の労働というイメージがあり、始業時間前なら残業にあたらないと解釈するパターンも目立ちます。
休みに関するルールもある
休憩や休日は、労働者本人および家族の心身の健康を守ると同時に、雇用主にとっても生産性を高めることにつながる大切な条件です。労働者の休みについて、子育てのためのルールもあわせて見ていきましょう。
休憩時間、休日を与える
労働基準法における、休日や休憩の規定は以下の通りです。
・休日は少なくとも毎週1日または4週間を通じて4日以上
・休憩時間は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上
・休憩中は労働から離れること
休日が毎週1日以上と聞くと、パパやママが「週休2日制」で働いている子どもは不思議に思うかもしれません。現在週休2日制の会社が多い理由は、法定労働時間にあります。
1日の労働時間を最も長い8時間にした場合、1週間に40時間を超えないためには、労働日は週5日までにしなくてはなりません。このため必然的に、週に2日は休日となるのです。
出産と育児のための制度
出産・育児をする女性労働者には、以下のような規定があります。
・産前産後休業の取得
・時間外労働や深夜業務の制限
・1日2回の育児時間の取得
妊娠中の女性労働者は、雇用主に対して産前産後休暇を申出・取得する権利があります。特に産後休暇は、一定期間必ず取得しなくてはなりません。
また、上の規定でいう「育児時間」とは、1歳未満の子どもを育てる女性が、育児のために仕事を休める時間です。通常の休憩時間以外に1日に2回まで、合計1時間取得できます。もともとは授乳時間を想定して作られたルールですが、現在は保育所への送迎時間に充てる人も多いようです。
働きすぎなどを防止する重要な法律
労働基準法は労働者が働きすぎて体をこわしたり、働いた分の賃金が支払われず、生活が苦しくなったりすることを防ぐための法律です。
残念ながら、違法な労働条件の職場は後を絶たず、社会問題になることもあります。しかし労働者側が、法律の存在や基本的な内容を知っていれば、違法な雇用契約を交わすことも、過酷な環境を我慢することも避けられます。
子どもが働くことに興味を持ったときには、労働者の権利や働き方について、親子で話し合ってみるとよいでしょう。
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構成・文/HugKum編集部