単細胞生物とは?
人間はもちろん、ほとんどの生物の体は細胞が集まってできています。では単細胞生物とは、一体どのような生物なのでしょうか。
1個の細胞でできている生物
単細胞生物とはその名の通り、1個の細胞で体が構成されている生物を指します。細胞一つで、養分の摂取から排泄、生殖まで行います。
体はとても小さく、大きめの種類でも100~150μm(マイクロメートル)ほどしかありません。1μmは0.001mmなので、大きくても0.1mm程度です。よほど注意していない限り、肉眼で見ることは難しいでしょう。
また単細胞生物は、「原核生物」と「真核生物」に分けられます。
両者の違いは「核膜に包まれた核」の有無です。核とは細胞内のDNAを包む球形の構造体のことで、原核生物には核が存在せず、DNAがむき出しになっています。
細胞群体や多細胞生物との違い
単細胞生物以外の生物には、「細胞群体」や「多細胞生物」がいます。それぞれの違いについて見ていきましょう。
細胞群体とは
「細胞群体(さいぼうぐんたい)」とは、単細胞生物のような細胞が集まり、ゆるやかに繋がっている状態の生物を指します。複数の細胞で構成されているものの、多細胞生物とは明らかに違います。
細胞群体はそれぞれの細胞に役割分担がなく、単純に集まっているだけです。集まっている細胞は、バラバラにされても生き続けられるという特徴があります。
細胞が集まっただけの細胞群体は、単細胞生物から多細胞生物へと進化する過程の中間に位置する存在と考えられています。
多細胞生物とは
「多細胞生物」は、いろいろな役割を持つ細胞が集まって、体を構成している生物です。生物の大部分を占め、小さな細菌状の多細胞生物も存在します。
私たち人間はもちろん、イヌやネコ・昆虫・野菜・花も全て多細胞生物です。
多細胞生物の細胞は、一つの受精卵からつくられます。受精卵が細胞分裂を繰り返し、皮膚・内臓・筋肉などの役割を持つ細胞に分化していくことで、複雑な機能を持った個体が完成するのです。
このため、多細胞生物は細胞群体と異なり、細胞がバラバラになると基本的には生存できません。
単細胞生物の特徴
さまざまな細胞の働きによって生存する私たちにとって、一つの細胞で全てをまかなう単細胞生物は、とても不思議な存在といえます。単細胞生物が持つ主な特徴を見ていきましょう。
複雑なつくりの細胞
多細胞生物を構成する一つ一つの細胞に比べて、単細胞生物の細胞はつくりが複雑です。
例えば「アメーバ」と呼ばれる単細胞生物は、餌となるバクテリアの動きを細胞膜の表面で感じ取ります。
バクテリアを見つけると体を伸縮させて近づき、くっ付いたところを膜で包み込みます。すると細胞質から消化液が出て、バクテリ
アの栄養分を吸収するのです。消化されなかった部分は細胞膜を通して外に排出されます。
多細胞生物における目や口・手足・内臓に相当する機能を、たった一つの細胞が担っていることが分かるでしょう。
植物と動物の性質を持つ生物も
単細胞生物は、植物性・動物性・両方の性質を持つものに分けられます。
植物性の単細胞生物はほとんど動かず、葉緑体で光合成を行い養分をつくります。動物性は細胞内に運動や消化の仕組みを持ち、餌を求めて活発に動き回るのが特徴です。
両方の性質を持つタイプは、葉緑体と運動・消化能力をあわせ持ち、明るい場所では光合成、暗い場所では微生物を捕食して養分を摂取します。
植物とも動物ともとれる生物が存在することは、多細胞生物との大きな違いといえるでしょう。
単細胞生物の代表例
単細胞生物にも、さまざまな種類があります。植物性・動物性・両方に属するものの中から、代表的な生物を紹介します。
ゾウリムシ
ゾウリムシは、主に有機物が豊富な淡水に生息する、動物性の単細胞生物です。体長は90~150μm、幅は40μmほどで、草履のような細長い形をしていることから、その名前が付けられました。
なお英語では「slipper animalcule(スリッパのような小さな動物)」といいます。ゾウリムシは表面が繊毛(せんもう)と呼ばれるたくさんの短い毛で覆われる「繊毛虫(せんもうちゅう)」の仲間です。
繊毛を動かして水中を移動し、口の周囲の特殊な繊毛で微生物をろ過して食べます。植物性単細胞生物の「クロレラ」と共生して、緑色に見える種類も存在します。
アメーバ
アメーバはゾウリムシと似たような環境で生息する、動物性の単細胞生物です。大きさは10~1000μmと幅があり、大型のものは肉眼でも見えます。
アメーバの名前は、「定まった形のない」という意味の言葉に由来しています。その名の通り、移動や捕食に伴って体の形が常に変わるのが特徴です。一生のうち、同じ形をとることは2度とないともいわれています。
アメーバは基本的に、細胞分裂によって増えます。条件がよければ1日に1度の割合で分裂することが可能な上に、何度分裂を繰り返しても細胞が老化することはありません。
ミドリムシ
ミドリムシは「ユーグレナ」という学名でも知られる、緑色の単細胞生物です。
主に池や湖に生息しています。ユーグレナはラテン語で「美しい眼」という意味を持つ言葉で、緑の体に映える、赤い点のような目(眼点)を持つことから名付けられました。
ミドリムシには植物と動物の両方の性質があります。葉緑体で光合成をする一方で、眼点で光を感じ、「べん毛」と呼ばれる細長い尻尾のような毛を動かして、水中を泳ぎ回るのです。
植物性・動物性両方の栄養を豊富に持つため、近年は新しい食材として注目されています。
ミカヅキモ
ミカヅキモは、池や田によくいる植物プランクトンの仲間です。生物の教科書で写真を見た覚えがある人も多いでしょう。
ミカヅキモの名前の由来は、三日月のような形です。体長は500μmほどで、二つの葉緑体が中央の透明な膜(核)で仕切られています。また葉緑体の側に、光合成で作られたデンプンが玉のように光って見えるのが特徴です。
ミカヅキモは基本的に細胞分裂によって増えますが、水がなくなる季節には「接合」と呼ばれる有性生殖で増えることもあります。
大腸菌
大腸菌は、動物の腸に生息する腸内細菌の一種です。長さ2~4μm、短径0.7μmほどの、円柱のような形をしています。「O-157」に代表されるように、食中毒を引き起こす病原性のものもありますが、ほとんどは無害です。
大腸菌は接合による有性生殖のとき、雄の菌から雌の菌に遺伝子が移行して、組み換えが起こることが分かっています。
また嫌気性菌(酸素を必要としない細菌)でありながら、酸素のある環境でも生息できる性質を持っています。そのため大変扱いやすく、DNAの複製やタンパク質合成など、さまざまな研究に活用されています。
不思議な生態を持つ単細胞生物
単細胞生物は人間の目には見えないほどの小さな一つの細胞内に、いくつもの機能を持つ生物です。顕微鏡で生態を観察すると、生命の不思議さを感じられるかもしれません。
単細胞生物は、私たちの身近にたくさん住んでいます。機会があれば、子どもと一緒に池や川の水を採取して、ミカヅキモやゾウリムシなどを観察してみてもよいですね。
あなたにはこちらもおすすめ
構成・文/HugKum編集部