落書きから渋谷の街を守る。子どもと巨大壁画アートを描くプロジェクトが進行中!

東京・渋谷で、誰もが参加できるインクルーシブアートで壁画を描くというプロジェクトがスタートしました! 渋谷区生まれの私ですが、地元の街が落書きで汚されていくのに心を痛めていました。
何かできることはないかと思っていた時に、このプロジェクトのことを聞き、壁画の原画作りのワークショップに子どもたちと一緒に参加してきました。

落書きは犯罪!渋谷区の落書き対策

渋谷区の都営バス営業所の壁の落書き・現在は消去(都議龍円あいりさんのブログより引用)

 

一面に落書きされてしまった壁です。渋谷区東2丁目にある都営バス営業所の塀で、 200メートルに渡るもので都内でも最大級の落書きでした。更に、落書き犯として逮捕された容疑者が描いたものと同じ絵柄が書かれたりと色々と物議をかもす場所でもありました。

渋谷と恵比寿の真ん中あたりなのですが、明治通りの裏道で人目につかず、落書きのターゲットになってしまうのですよね。地元住民としても本当に悲しかったです。

都営バスの壁は東京都の協力により、現在は消去され、再び落書きされないように布をかけ、防犯カメラも設置してあります。(写真下)

巨大壁画プロジェクト始動!

そして、この白い大きな、まるでキャンバスのような壁に、再び落書きされることを防止するため、誰もが参加できるインクルーシブアートで壁画を描くというプロジェクトが、この夏に始まりました!

上の壁が、下の写真の様なイメージの壁画になります。

インクルーシブアートの完成イメージの壁画(都議龍円あいりさんのブログより引用)

「SHIBUYA みんながつながる インクルーシブ・アート 」は、「一般社団法人 CLEAN & ART」と「渋谷区障害者団体連合会」二つの団体が共催のプロジェクトです。

一般社団法人 CLEAN & ART」はアーティスト集団でもあり、落書き消しのエキスパートでもある団体。
落書き問題を解決しつつ、壁画を描くことで「SDGs」の啓蒙活動もしています。

渋谷区障害者団体連合会」は渋谷区内に住む身体・知的・精神の障がい者の団体で組織されている団体です。アートに特に力を入れていて、「どきどきときめき展」などの美術展を開催しています。

壁画の原画作りのワークショップ

原画を作る会場は、恵比寿にある渋谷区立の児童館「景丘の家」です。

「渋谷区障害者団体連合会」参加者のワークショップは終了して作品が集まっており、外出できない障害がい者の方達にも郵送してオンラインで参加するという試みもあるそうです。

今回、2022年8月28日に開催されたワークショップは一般の参加者で、障がいのある子ども達も含む合同のワークショップになります。

SDGs 17色の図形ピース

会場のテーブルには、「SDGs」の17色の三角形や四角形などのピースが用意されていて、ホワイトボードの上に好きな図形を作成していきます。

実際に触ってみると、ピースは立体的な形なので、身体的なハンデがあったり、視覚障がいがある人、小さいお子さんでも参加しやすい、たくさんの工夫がこらされているのが実感できました。

3歳の息子もパズルの様に並べて、楽しんでいました。ダウン症の女の子も一緒のテーブルで作りましたが、みんな楽しそうに作品を仕上げていました。上手下手もなく、作業スピードの差も問われない。
障がいがある子もそうでない子も、一緒に楽しく作業ができるワークショップが実現できるなんて驚きでした。

プロジェクトの発起人は

実は、このプロジェクト、順風満帆の様に見えますが、ここまで来るには、紆余曲折、たくさんの人たちの協力があってのことでした。

その中でも中心となって動いてきた、渋谷区の落書き対策の発起人である渋谷区議会議員の森田由紀さん(写真右)、渋谷区と東京都の架け橋となり都営バスの壁の落書き消去と壁画プロジェクトを実現した東京都議会議員の龍円あいりさん(写真左)、壁画のデザインを担当する「一般社団法人 CLEAN & ART」の理事の傍嶋賢さん(中央)の三人からお話を聞くことができました。

渋谷区の落書き問題

渋谷区の落書き対策の発起人の渋谷区議員の森田由紀さん

この壁画プロジェクトに至るまでには、まずは、落書きを消すことから始めなくてはなりませんでした。
その落書き対策に奮闘した一人が、渋谷区議会議員の森田由紀さんです。森田さんは、この壁だけではなく、渋谷区全体の落書き問題の対策に関わっており、「一般社団法人 CLEAN & ART」を立ち上げた一人でもあります。

もちろん、都バスの壁も森田さんは、消去を要請していました。しかし、この落書きは渋谷区にありながらも都営バスの壁で、東京都の所有するものだったために、単純に渋谷区が消すという訳にはいきませんでした。また、規模も大きく、渋谷区では予算がつかず、森田さんの再三の要請にも関わらず、なかなか実現しませんでした。

東京都の協力を得る

都議の龍円あいりさん(左)と息子のニコちゃん。

そんな時に、同じように落書きに心を痛めていた都議の龍円あいりさんも一緒に立ち上がってくれることになりました。
都営バスは東京都交通局の管理下にあり、今回の落書きの件に関しても、大変憤りを感じており、落書き防止の再犯の為にも、法的な措置をとる準備をしていました。

しかし、そのためには証拠として落書きを保存しておかなくてはならず、落書きをそのまま残せば余計に落書きが増えることになり、ポイ捨て、治安の悪化に繋がるというジレンマが出てきてしまいました。
住民からの要望もあって、落書きを消すということを優先させることになりました。

落書きを消した壁にアートを!

ようやく落書きが消え、真っ白になった壁。次の課題は、再犯させない対策が必要になります。壁を消すだけで数百万円、さらにそれにかける布や防犯カメラの設置に数百万円…。
書くのは一晩ですが、消すまでには多くの人手、年月、費用がかかっています

監視だけでは、抑止は難しいということで、龍円さんは、壁画にアートを施すというプロジェクトを立ち上げることにしました。また、ダウン症の息子のニコちゃんと一緒に参加した東京都渋谷公園通りギャラリーで開催されていた、障害がある人もない人も楽しめるインクルーシブアートのイベントからインスピレーションを受け、インクルーシブアートを都バスの壁に描くというアイデアが生まれました。

壁画インクルーシブアートの創造者

    壁画アーティストで「一般社団法人 CLEAN & ART」の理事の傍嶋賢さん。

そこで、実際にこのインクルーシブアートを実現させたのは壁画アーティスト傍嶋賢さん。
東京藝術大学大学院で壁画を学んだ壁画のエキスパートです。

いくらアートは自由とは言えども、壁画は生活に密着していて、誰もが好感を持つものであり、多様な人が参加しながら、作品としても良質なものである必要があるとのことです

しかも限られた予算内で、誰でも参加できるアートの形にしなくてはならないという制約が付きます。

そこで、元々の「一般社団法人 CLEAN & ART」の主な活動の一つである「SDGs」啓蒙の一環として「SDGs」のカラーをモチーフとして使い、誰でも作れるアートを作り上げました。

ありそうでなかったみんなが参加できるというアート。アーティストが自分のアイディアを他の人とシェアして作品を作ってもらう。これだけ苦労して捻り出したアイディアを、潔くみんなと共有する。

自分の作品を手放すなんて、アーティストであれば、中々できることではないと思います。「自分のアート作品は他で作ればいいからいいんです」と爽やかに語ってくれたのがとても印象的でした。

ユニフォームは真っ白なビームスコラボ

実は、落書き消しと壁画描きのアーティスト集団の「CLEAN&ART」さんの作業用のユニフォームは、人気アパレルブランドのビームス(Uniform Circus BEAMS)さんとのコラボ。

落書き消しの作業をしている人というイメージを払拭するため、あえてアーバンなデザインにしたそうです。作業での汚れも味として出るようにと、こちらもあえて白色にしたそう!

ワークショップに参加してみて

ダウン症や障がいのあるお子さんのいるご家庭と一緒にワークショップに参加し、短い時間でもお話が聞けたというのも貴重な体験でした。

一緒にアート作品を作るというワークショップだからこそコミュニケーションが取りやすく、健常者との見えない壁が、この日はとても低く感じました。

今日のワークショップでダウン症のお子さんを普通学級に通わせる苦労などをお聞きして、こうして障がい者の家族とそうでない家族が一緒に関われる場がもっとあれば良いと思いました。

また、壁画プロジェクトのこれまでの道のりは一部をご紹介しただけで、行政の縦割りの弊害や予算の確保など、本当に気が遠くなるような地道な努力と関わった方の交渉粘り強さがあってのことでした。

壁のデザインはこれから何十年も残ることでしょう。自分の住む街に関心を持ち、大切に思う気持ちが芽生えるきっかけになるワークショップに参加できて、本当によかったと思います。

秋に参加できるワークショップ情報

壁画プロジェクトにぜひ親子で参加してみませんか?
10月1日、2日には野外での壁画制作ワークショップがあります。壁にマスキングテープを貼り、その中に「SDGs」の色を塗っていきます。

募集ももうすぐ、始まりますので、ご興味のある方は、龍円あいりさんのブログをチェックしてくださいね!

※撮影の為にマスクを一時的に外して頂きました。作業中はマスクを着用して感染対策をしっかり行った上でワークショップを開催しています。

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写真・文/Rina Ota

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