「スマートフォンやタブレットをしきりに触りたがって困っています」【保育経験41年・元園長先生の相談室23】

子どもが生まれると、成長に合わせていろいろな悩みが出てきます。健康のことはもちろん、しつけのこと、園生活でのこと、学習についてなど、「どうしたらいいの?」とふと誰かに聞いてみたくなる疑問は尽きません。そんなみんなが感じる育児のお悩みや疑問に、保育経験41年の元園長先生・田苗孝子先生に答えていただきました。ふっと気持ちが軽くなる、そんな先生のお答えをQ&Aでご紹介します。

子どもの健康、しつけ、園生活の悩みをズバリ解決!!

3歳の女の子です。最近、しきりにスマートフォンやタブレットなどをさわりたがり、騒ぎます。これまで、外出時や移動中には使わせていたのですが、どのように諭したらいいでしょうか。

長野県 H・Iさん

 

道具に頼るのは最後の手段です。まずは声かけをして

電車やバスに乗ってくる親子を見ていると、乗車するやいなや、無言でスマートフォン(以下スマホ)を子どもに渡して遊ばせるお母さんを、最近しばしば目にします。そして、スマホを渡したあとは知らん顔で、子どもが何か訴えたときだけ、相手になっているお母さんが多いように見えます。

いまの日本社会は、子育てにあまり寛容ではありません。子連れで外出したとき、昔のように「子どもは泣くのが仕事だよ」と声をかけてくれたり、席を譲って助けてくれたりする人が少ない。だから、外出時に周囲の目がなんとなく厳しく感じられて、とにかく子どもを静かにさせたいという思いから、お母さん方もそうした行動に走ってしまうのだと思います。

けれども、子どもがぐずったり、うるさくなったときに道具に頼るのは最後の手段です。まずは子どもに声かけをして、なだめる努力をすることが子育ての基本です。そうすることで、お母さんの愛情が子どもに伝わりますし、人と交流する重要性も学べるんですよ。

スマホを使うときにはしっかりお母さんがコントロールする

相談者の方のような場合は、まずお母さんが、これまでお子さんにどのようにスマホやタブレットを与えてきたかをふり返ってみてください。たとえ最終手段で与えていたとしても、与える際に、きちんと言葉かけをすることが必要です。重要なのは「これはお母さんのもの」で、「今は特別に使えるのだ」ということを毎回しっかり伝えて与えることです。そして、可能ならお母さんもお子さんと一緒に見たり、会話や声かけをしながら使わせましょう。

また、子どもが使いたいと言うからといって、安易に与えることも禁物です。お母さんが与えてもいいときかどうかを毎回見極めて、ケースバイケースでコントロールしていきましょう。もし、与えるのがふさわしくないと判断したのなら、その理由を話して、子どもの要求をきっぱりと拒絶することが肝心です。そうすると、3歳前後の子どもは泣いたり怒ったりして要求を通そうとするでしょう。

しかし、世の中はすべてが自分の思い通りにはならないのだということを、親が体験させるのは重要なしつけです。こうしたやりとりを繰り返していくうちに、子どもは自分の欲望や不満と葛藤しながら、少しずつですがそうした感情を自身の中で消化して、今は使えないときなのだと悟り、我慢ができるようになってきます。そうして年長さんになる頃には、使えない理由も理解できるようになります。

このようにけじめをつけるのは、スマホの使用だけに止まらず、しつけ全般にいえることです。幼児期から小さな我慢を積み重ねていくことで、やがて成人したときに、願いが叶わず不満や不安を抱いたり、挫折しても、それを自分で乗り越えていく力が身につくのです。繰り返し、お子さんの要求と格闘するのは、ある意味面倒だし大変ですが、ここはお母さんの我慢のしどころ。お子さんのために頑張ってください。

 

回答していただいたのは…

田苗孝子先生  宝仙学園幼稚園元園長。1949年広島県生まれ。2007年から20193月まで園長を務める。41年間にわたり、保育現場でさまざまな家庭で育つ子どもとその親を見守り続けた、その深い見識には定評がある。豊かな経験を活かして、『幼稚園』(小学館刊)で育児相談コーナーを担当。子育て中のママたちに温かなメッセージを伝えてきた。

 

 

構成/山津京子 イラスト/手丸かのこ 『幼稚園』2015年12月号

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