「園のママたちとうまくお付き合いできるか心配…」【保育経験41年・元園長先生の相談室3】

子どもが生まれると、成長に合わせていろいろな悩みが出てきます。健康のことはもちろん、しつけのこと、園生活でのこと、学習についてなど、「どうしたらいいの?」とふと誰かに聞いてみたくなる疑問は尽きません。そんなみんなが感じる育児のお悩みや疑問に、保育経験41年の元園長先生・田苗孝子先生に答えていただきました。ふっと気持ちが軽くなる、そんな先生のお答えをQ&Aでご紹介します。

子どもの健康、しつけ、園生活の悩みをズバリ解決!!

 

親子で初めて臨む4月からの園生活。子どものお友だち付き合いも心配ですが、私自身も園のお母さんたちとうまくお付き合いができるか心配しています。アドバイスをお願いします。(東京都 K・Tさん)

 

笑顔であいさつし、人に対してレッテルをはらない

初めての集団生活では、子どもたちは、楽しいことやうれしいことだけでなく、嫌なことや我慢をしなければならないことなど、さまざまなことを体験します。けれども、そうした体験を重ねていくことで、多くのことを学び、成長していきます。

お母さん方もそうしたお子さんと一緒です。多くのお母さんと出会い、さまざまな体験をすることを覚悟して臨みましょう。まずは笑顔を心がけ、ほかのお母さんと視線が合ったら、会釈をして受け入れる。これがコミュニケーションのスタートになります。そうして日々触れ合っていくうちに、ほかのお母さん方のいろいろな姿を垣間見ることになるでしょう。最初はどのお母さんもあなたと同じような不安感や、戸惑いを抱えているものです。ですから誰もが“自分らしさ”を出せていませんし、緊張から思いがけない言動をしてしまうこともあります。だからまずは、人に対してレッテルを張らないよう注意しましょう。「苦手だな」と思っても、挨拶をし合う関係性を持つよう心がけてください。

程よい距離を保ち、自立した関係を持つことが大切です

そうしてしばらく経つと、気の合う人も出てくるでしょう。すると、一緒にいるときの安心感も手伝って、いっきに仲が良くなり休日まで一緒に過ごすというような親密な交際に発展しがちです。しかし、急速に親しくなるのは要注意。園のお母さん同士のお付き合いは、適度に距離を保ちながら続けていくのがいいと、私は思います。

なぜなら、園ママ同士の関係は、子どもも含めての関係だからです。ときには子ども同士のことで、謝ったり謝られたりすることもありますし、そんな場合は冷静に受け止めて対処をし、その後も気持ちを切り替えてお付き合いをしていかなければなりません。とても仲が良かったお母さん同士が、ちょっとした心のすれ違いから離れていき、それが子ども同士の関係性にまでマイナスの影響を与えてしまった、というようなこともよくあるんです。

保護者というのは私的ではなく、公的な立場。あくまでも互いに子育てをするために存在するママたちの集団なのだということを頭に留めてお付き合いをすることが肝心です。その心構えさえあれば、自ずと子どもたちにもプラスになる関係性が築けると思います。具体的には、「園のママ同士のウワサ話を聞いても耳を貸さずに聞き流す」「ラインでは用件のみの伝達にする」よう、注意しましょう。

もし子どものことで心配なことが起きた場合は、まず担任に事実を確認し、相談をしてください。子どもの言うことを真に受けて、親同士でやりとりをして関係性が悪化することもあります。

これまで注意すべきことばかり申し上げましたが、園で出会ったママ同士の中には、本当に気が合って卒園してもお付き合いをするケースもあります。しかし、まずはお母さんが多くの人と触れ合って、自立したお付き合いをする。それが、子どもの育ちにもいい影響を与えるということを忘れないでください。

 

回答していただいたのは…

田苗孝子|幼稚園元園長

宝仙学園幼稚園元園長。2007年から2019年3月まで園長を務める。41年間にわたり、保育現場でさまざまな家庭で育つ子どもとその親を見守り続けた、その深い見識には定評がある。豊かな経験を活かして、『幼稚園』(小学館刊)で育児相談コーナーを担当。子育て中のママたちに温かなメッセージを伝えてきた。

 

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構成/山津京子 イラスト/手丸かのこ 『幼稚園』2019年3月号

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