蒸留酒、蒸留水…「蒸留」を説明できる? 原理や目的、分留との違いを解説

「蒸留」という言葉は知っていても、意味をきちんと説明できない人もいるのではないでしょうか。意味や原理・分留との違い・実験方法を紹介しますので、正しく理解して子どもに説明できるようになりましょう。「蒸留」が使われる言葉の意味についても紹介します。

蒸留とは?

最初に、「蒸留」という言葉がどういった意味を持つのかを確認しましょう。知識を深めるため、なぜ蒸留を行うのか・どんな目的があるのかについても併せて解説します。

液体同士を分離させること

蒸留は液体と液体、または液体と固体の混ざった液体(溶液)を分離させることを指します。具体的には、溶液を加熱することで発生した蒸気(気体)を別の場所で再び凝縮させ、物質の異なる2種類以上の液体に分離させる操作のことです。

「蒸留」の簡略図

蒸留は、古くからアルコール分を濃縮する目的として利用されていました。その起源は、古代ギリシャの時代までさかのぼるといわれています。当時の蒸留容器は陶でできており、イスラム圏を経たのちにヨーロッパ諸国へ伝わったとされています。

蒸留を行う目的

液体に混ざっている物質を分けるのが、蒸留を行う目的の一つです。特に、溶液からある特定の液体を取り出したいときに用いられます。溶液に混ざっている物質の沸点の差が大きい場合は、蒸留することで簡単に分離できます。

沸点とは、液体が沸騰する温度のことです。例えば、水を沸かすと湯気を出しながら温度が徐々に上がっていきます。沸騰するとそれ以上温度が上昇しなくなり、液体の表面が泡立ち気化が始まります。このときの温度が沸点です。

また、水やアルコール、液体原料など、液体には不純物が含まれていることが珍しくありません。不純物を取り除き、純度の高い液体にすることも蒸留する目的の一つです。例えば、海水を蒸留すれば純粋な水が得られます。

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蒸留の原理

物質が混ざった溶液から、液体と液体に分けることを蒸留といいますが、それでは具体的にどのようにして溶液を分離できるのか、蒸留の原理を紹介します。混同しがちな「分留」との違いについても見ていきましょう。

沸点の差を利用して分離する

蒸留は、異なる沸点の差を利用して混ざり合った物質を分ける手法です。物質はそれぞれ分子のサイズが異なるため、沸点にも差があります。分子量が大きいほど、沸点も高くなるのが一般的です。

例えば、水とエタノールが混ざった溶液を分離するとします。水の沸点は100度で、エタノールは78度と異なるため、加熱すると沸点が低いエタノールが先に沸騰し気体になります。エタノールの気体だけを別の場所に集め、冷やして再び液体に戻すことで、ほぼエタノールだけの液体にすることが可能なのです。

「蒸留」の原理。沸点の差を利用して、液体中の物質を分ける

分留との違い

分留は「分別蒸留」の略で、蒸留の一種です。蒸留は「溶液を2つの液体に分離すること」自体を指しますが、分留は「いくつかの物質が混ざった溶液を、蒸留を何回も繰り返して分離させること」です。

例えば、石油にはさまざまな物質が混ざっているため、一度の蒸留ではそれぞれの物質には分けられません。そこで、加熱して沸点の低い物質から順に気体として取り出し、再度液体へと戻します。この作業を続けることで、軽油・灯油・粗製ガソリン・石油ガスなどに分離ができます。

これが分留ですが、実際の現場では効率を上げるために、この工程を同時に行える「分留管」という器具を用いています。

なお「液体と固体の溶液を分離させる」のが蒸留、「液体と液体の溶液を分離させる」のが分留と教える場合もあるようですが、工業分野では前述のような区別がされています。

「分留」の原理。段階的に「蒸留」を繰り返し、物質を分けていく

蒸留の実験方法

蒸留の実験方法を見ていきましょう。

枝付きフラスコ・沸騰石・冷却器・温度計・バーナー・三角フラスコなど、必要な器具を用意します。まず、温度計を設置した枝付きフラスコと冷却器、三角フラスコをつなげます。

枝付きフラスコに液体と沸騰石を入れ、バーナーで温めます。気体が冷却器を通り冷やされることで再び液体になり三角フラスコに流れます。

液体がフラスコの枝に流れ込まないように、溶液の量はフラスコの半分以下にします。また、急な沸騰を防ぐために沸騰石を入れるのを忘れないことも大切です。沸騰石として、レンガや素焼きの破片などが使えます。

理科の授業などで行われる「蒸留」の実験

「蒸留」が使われる言葉の意味

日常生活で目にすることもある「蒸留」が使われる言葉に、「蒸留水」と「蒸留酒」があります。それぞれどのような意味があるのでしょうか?  豆知識として子どもに教えてあげるのもよいでしょう。

蒸留水

水道水を沸騰させ、発生した蒸気を冷却して再び水にしたものが「蒸留水」です。蒸留することで水道水に含まれる不純物を取り除き、純度を高めています。微生物のエサとなる有機物も同時に除去されるため、腐りにくいのが利点です。

飲料水というよりは、主に医療器具やコンタクトレンズの洗浄液などに使われています。

また、蒸留水は精製水の一種です。精製水とは水道水や地下水を蒸留させたり、ろ過装置に通したりして不純物を取り除き、純度を高めた水の総称です。蒸留水のほか、イオン交換水・超純水・RO水・Elix水などがあります。

蒸留酒

原料を発酵させてできた醸造酒を、さらに蒸留した純度の高いお酒が「蒸留酒」です。ウイスキー・ジン・ウォッカ・ラム・テキーラ・ブランデー・焼酎などがあります。

アルコールの沸点は水よりも低いため、蒸留することでアルコールだけを集めることができ、アルコール度数を40~90度まで上げることが可能なのです。しかし、アルコール度数が高すぎると飲みにくいため、蒸留後に水で薄めて度数を調節しています。例えば、ウイスキーは40度前後、焼酎は25度前後になっています。

「最終的に水で薄めるなら度数を上げる必要はない」と思うかもしれませんが、保存力を高めるという目的もあるのです。蒸留することで液体がほぼアルコールのみになるため、腐る心配がなくなり長く保存できます。

スコットランド・アイラ島のウイスキー蒸留装置

蒸留されたものは身近にたくさんある

蒸留とは、2つの物質の混合溶液から液体と液体に分けるための手法です。

物質の沸点の差を利用して溶液を分離することで、特定の物質を取り出したり液体の純度を高めたりというような目的で用いられます。

蒸留水や蒸留酒など、蒸留されたものは意外と身近にたくさんあります。理科の授業でも習うので、子どもに蒸留の意味や原理を教えてあげましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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