胆汁って何?基礎からわかる解説
「胆汁(たんじゅう)」という言葉を聞いたことはあっても、胆汁が何か説明できる人は少ないかもしれません。まずは胆汁の基礎を確認しましょう。
胆汁とは
胆汁は、肝臓で貯められている液体を指します。黄色や黄褐色のアルカリ性の液体です。これは消化液のひとつで、脂肪を消化するために使われます。
胆汁の成分は?
胆汁に含まれている成分は、胆汁酸、ビリルビン、コレステロールなど。
ビリルビンは赤血球にも含まれる黄色っぽい色素で、古くなった赤血球が破壊されてできます。胆汁が黄色っぽく見えるのは、このビリルビンが含まれているからです。
胆汁はどこで作られるの?
胆汁は、肝臓で作られます。肝臓の細胞から、1日に250~1100mlも分泌されています。
この胆汁は、肝臓と十二指腸をつなぐ管の途中にある「胆のう」と呼ばれる臓器で貯えられます。胆汁のおよそ90%は水分でできているため、胆のうで貯えられるときは水分が減って濃縮した状態です。
ちなみに胆のうは洋梨のような形をしており、50~60mlほどの胆汁を貯えています。また、胆のうで貯えられた胆汁は、「総胆管(そうたんかん)」と呼ばれる管を通って十二指腸に流れ、そこで脂肪の消化を行います。
胆汁の機能や役割
胆汁には、どんな機能や役割があるのでしょうか? 胆のうで貯えられた胆汁は、どうやって流れるのでしょうか?
機能や役割1:脂肪の分解と吸収
胆汁がもつ大切な役割のひとつが、脂肪の消化です。十二指腸に食べ物が入ってくると、胆のうが収縮して、貯めていた胆汁が十二指腸の中で分泌されます。
機能や役割2:胆汁と消化酵素
胆汁は主に脂肪の消化のために分泌されますが、胃液や膵液とは性質が異なります。ご存じの通り、胃液や膵液には消化酵素が含まれていて、それらの働きで消化が行われます。でも胆汁には消化酵素は含まれていません。
栄養分を消化して吸収するためには、その栄養素が水に溶けなければなりませんが、脂肪は水に溶けにくい性質があります。そこで、胆汁はまず脂肪を乳化して水に溶けやすい状態にして、その状態で膵液中に含まれる消化酵素の働きで、脂肪が消化・吸収される仕組みになっているのです。
機能や役割3:老廃物を体外に排出
胆汁は、脂肪の消化以外に、老廃物を体外へ排出する働きもあります。肝臓は、栄養分を貯蔵して老廃物を排出するための大切な器官。胆汁は、そんな肝臓が持つ解毒作用として、老廃物を体外へ排出する役目もあるのです。
機能や役割4:ビリルビンの排出
胆汁が老廃物の排出の役割があるとご紹介しましたが、そのひとつがビリルビンの排出です。血液の成分である赤血球は、古くなると分解されます。このときに赤血球の中に含まれるヘモグロビンも分解され、それがビリルビンになるのです。ビリルビンは、血液にのって肝臓に運ばれ、その後胆汁の一部となって、十二指腸、小腸、大腸を通って、最後は体外に排出されるのです。
血液検査には「ビリルビン」という項目がありますが、これは血液中のビリルビンの量を測ることで、肝臓の機能の状態をチェックするためなのです。
機能や役割5:コレステロールの排出
コレステロールは、悪いものと思われがちですが、髪や皮膚をなめらかにするほか、胆汁の原料にもなる役割があります。
食事から脂肪やコレステロールを摂取すると、それらが肝臓に運ばれ、その一部が胆汁酸(胆汁の主要な成分)という胆汁の一部となって、脂肪の消化に分泌されます。また一部の胆汁酸は腸から体外に排出されるのです。
胆汁と食事はどう関わっているの?
では、私たちが食事を口にすると、胆汁はどんな風に働くのでしょうか?
好きな食べ物を食べたとき、胆汁はどうなるの?
私たちが食べ物を食べると、まず口から食道を通って胃に移動して、そこで分泌される胃液によって細かくなります。
ただ脂肪については、胃ではほとんど分解されることはありません。胃から十二指腸に移り、ここで初めて胆のうから胆汁が送られ、その働きによって脂肪が消化されるのです。十二指腸の次は、空腸、回腸と進み、最終的には大腸を通って便となって体外に排出されます。
胆汁を健康に保つための食事
胆汁は肝臓で作られていて、脂肪の消化に欠かせない存在です。現代の食生活は、欧米化が進んだり、ジャンクフードが多くなったりして、どうしても摂取する脂肪分が増えています。そのため、ますます肝臓や胆汁が重要になっているのです。
肝臓や胆汁にいい食事は、主食、主菜、副菜を揃えた栄養バランスのいい内容。とくに、ビタミンやミネラルは欠かせませんから、野菜類、大豆製品、海藻などを積極的にとるといいといわれています。また、アルコールの摂取は控えめにして、穀物、豆類・ナッツ、魚介類、オリーブオイルなどをすすめる専門家もいます。
胆汁の健康への影響や注意点
最後に、胆汁と健康への影響について見ておきましょう。胆汁が多く分泌しすぎたり、少なすぎたりすると、病気を引き起こす可能性があります。
胆汁の過剰または不足
胆汁が過剰に分泌されると、下痢をするようになります。これは、胆汁の主な成分である胆汁酸に、大腸から水分を分泌させてぜん動運動を起こさせる働きがあるから。そのため、過剰な胆汁によって下痢になってしまうのです。
逆に、肝臓が弱ってしまい本来の働きができなくなり、十分な胆汁を作れなくなり不足すると、脂肪をきちんと消化できないために、胃もたれやむかつきを感じたり、食欲不振になったりします。
また、胆汁の分泌が減ると、胆汁に含まれるビリルビンの量も減って、その分多くのビリルビンが血液中に流れるようになることから、皮膚や白目が黄色っぽく見えてきます。
胆汁と病気
胆汁に関する病気で、よく知られるのが胆石です。胆石とは、胆汁の成分がなんらかの原因で結晶化して固まってしまうこと。石のように固まった胆石は、胆のうや胆管にできて、痛みや発熱などの症状を引き起こします。現代は、食生活が欧米化したことや、肥満、過食、ストレスなどの原因で、胆石を持っている人が増えていると言われています。
肝臓の健康が胆汁には大事!
肝臓は、栄養素を貯えたり、体内に入った有毒なものを解毒して排出したりする役割があります。そして、忘れてはいけないもうひとつの働きが、胆汁を作ること。胆汁は脂肪を消化するときに使われる消化液で、脂っこい食事を分解するときに必要なものです。
ただ肝臓は、疲れていたりダメージを受けたりしていても症状が出にくい“沈黙の臓器”と言われています。だからこそ、ふだんから健康的な栄養バランスのとれた食事をとり、ジャンクフードや油の多い食事の頻度を減らし、肝臓にいい食事をとることが大切です。
年齢を重ねれば肝臓の機能も落ちていくものですが、肝臓や胆汁を健康な状態に維持するためにも、食事・運動・睡眠のバランスには常に留意したいものです。
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文・構成/HugKum編集部