「胃液」の一日の分泌量がすごい! その成分と分泌のしくみ、胃を健やかに保つ秘訣を解説【親子で人体を学ぶ】

胃液は、胃で分泌される消化液です。この記事では、胃液の役割や胃液に含まれる成分といった基本情報から、食べ物が胃で変わる過程、胃を健康に保つ方法までを解説していきます。

胃液とは?

胃液とは、胃壁にある胃腺という部分から分泌される消化液です。胃液の役割や、胃液が分泌される胃の位置と構造を解説していきましょう。

胃液の基本的な役割

胃液の基本的な役割は、食べ物を消化することです。また、食べ物といっしょに入ってきたウイルスや細菌の増殖を抑える作用や、殺菌する働きもあります。

胃の位置と構造

胃の位置は、お腹のやや上のみぞおちのあたりにあります。袋のような形をしているのが特徴です。

胃の構造

胃の構造は、食道とつながる入り口部分の「噴門(ふんもん)」、胃の左側に位置する「胃底部」、胃の本体である「胃体部」、十二指腸とつながる出口部分の「幽門(ゆうもん)」で構成されています。

なお、胃のなかの壁の部分を「胃壁」といい、胃壁には胃液を分泌する「胃腺」があります。

胃液の成分とその働き

胃液のおもな成分には「塩酸」「ペプシン」「粘液」があります。それぞれの成分と働きを説明していきましょう。

塩酸の重要性

塩酸は、胃液の主成分です。ph1~2という強酸性で、塩酸にふれると皮膚がただれるほどの力を持ちます。食べ物の消化を助けるのはもちろん、食べ物といっしょに入ってきたウイルスや細菌の増殖を抑えたり、殺菌する働きがある成分です。

ペプシン – 主要な消化酵素

ペプシンは、タンパク質分解酵素のひとつです。もともとはペプシノーゲンという物質なのですが、胃液中の塩酸にふれると活性化してペプシンとなります。ペプシンの役割は、タンパク質を分解することです。

粘液と胃の保護

粘液は、胃腺の上部に位置する「表層粘液細胞」や「副細胞」から分泌されており、胃粘膜表面を覆っています。この粘膜には塩酸を中和させる性質があり、胃粘膜を傷つけないようにする、胃の保護の役割があります。

▼ペプシンについてはこちらを参照

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食べ物が胃で変わる過程

食べ物が胃に入ってくると、胃液によってどのように変化するのでしょうか。その過程を説明していきます。

食べ物の胃への移動

まずは、食べ物がどのようにして胃に移動していくのか、その過程を説明します。

食べ物が口から入と、咽頭、食道の順に通っていきます。胃の入口である噴門にくると、括約筋が働いて噴門をひらき、食べ物が胃に入ります。

胃液と食べ物の混ざり合う過程

普段は静かな胃ですが、食べ物が入ってくると蠕動運動(ぜんどううんどう)が起こります。そして粘膜から胃液を出し、胃液に含まれる消化酵素と塩酸がタンパク質を分解します。

胃液と食べ物が混ざり合うと、どろどろのお粥のような状態になります。こうすることで、吸収しやすいものに変化するのです。このはたらきを「消化」といいます。

胃液と食べ物が混ざり合ったどろどろの状態のものは、蠕動運動によって胃の出口である幽門へ送られます。すると幽門の括約筋が働き、出口が開いて少しずつ十二指腸に送られるのです。

胃液によってどう変わるのか

食べ物は胃液に含まれる塩酸によって殺菌され、ペプシンによってタンパク質が分解されます。また食べ物が胃液と混ざり合うことで、お粥のようなどろどろの状態に変化します。

食べ物が胃を通る時間はどのくらいかかるのか

食べ物が胃を通る時間は、食べたものによって違います。

液体であれば、数分間で通ってしまいます。普通の食べ物であれば2〜3時間程度です。脂肪分の多い食べ物は4時間以上かかります。

胃液の生産と調整

胃液の分泌のメカニズムとは

胃液は1日にどれくらい分泌されるのでしょうか。また、胃液の分泌を調整するメカニズムについても解説します。

胃液の生産量の平均

胃液の1日の分泌量は、成人の場合約2500mlといわれています。これは、なんと2リットルのペットボトルが1本と1/4分もの量。予想以上の量に驚く方も多いのではないでしょうか。

胃液の生産を調整するメカニズム

胃液の分泌は「脳相」「胃相」「腸相」の3つの系統で調整されています。

「脳相」は食べ物の見た目やにおい、味といった刺激が副交感神経に伝わり、反射的に胃液が分泌されることをいいます。

「胃相」は、食べ物が胃に入ってきた反射刺激で胃液が分泌されることです。

「腸相」は、食物が胃から小腸に移動する際に起こる消化プロセスです。小腸から分泌されるホルモンが胃液の分泌を抑制し、膵液と胆汁の分泌を促すことで、食物の消化と栄養素の吸収を行います。

胃を健康に保つ方法

胃を健康に保つには、食事と生活習慣が鍵を握ります。ここでは、胃を健康に保つポイントをご紹介します。

胃にやさしい食事のポイント

食事では、胃に負担がかからないようにすることがポイントです。次のことに気をつけるようにしましょう。

●よく噛んで食べる

食べ物を食べるときに、あまり噛まずにすぐに飲み込んでしまうと、消化器官に負担がかかり、消化不良を起こすこともあります。食事をするときにはよく噛んで食べることで、食べ物が細かくなり、体への分解や吸収がスムーズに行え、消化しやすくなります。一口30回程度、ゆっくり噛むように心がけましょう。

●消化に良い食べ物を摂る

硬い食べ物や脂肪分の多い食べ物などは、消化に時間がかかります。また刺激の強い食べ物は、胃酸を多く分泌させてしまい、胃の粘膜が荒れる原因にもあります。なるべく消化に良い食材を選び、やわらかく煮るなどの調理法で消化しやすくなるようにしましょう。

なお、消化に良い食べ物には、次のようなものがあります。

炭水化物:お米、うどん
大豆製品:豆腐、納豆
肉・魚類:鶏むね肉、鮭、白身魚
野菜類:大根、キャベツ、白菜
果物類:バナナ、リンゴ
卵・乳製品:卵、牛乳、チーズ

●温かいものを摂るようにする

消化液に含まれる消化酵素は、体温が37〜40℃の間でもっとも活性化します。普段から体を冷やさず、体温を高めるようにすることも、消化のサポートにつながるでしょう。

食事の際は、冷たい飲み物や食べ物は極力避けて、温かい食べ物を摂るようにしましょう。

食事のときには、温かい汁物や飲み物を摂るようにしましょう

胃の健康を守る生活習慣

胃の健康を維持するには、以下の生活習慣を心がけることも大切です。

●胃の粘膜を刺激しないようにする

アルコールは胃の粘膜を刺激するため、飲みすぎないようにしましょう。大量に摂取すると、胃酸による自己消化を防げてしまいます。また喫煙は胃の血行を悪くし、胸焼けを起こしやすくします。なるべく禁煙するようにしましょう。

●食後は体を休める

食べ物を消化するときに、胃や腸は多くの血液を必要とします。食後にすぐに体を動かすと、血液は手足の筋肉に使われてしまうため、胃や腸の働きが鈍くなります。食後は体を休める時間を設けるようにしましょう。

ただし食後は胃酸が大量に出ているので、食後すぐに寝転んだり、前かがみの体勢を取り続けることはやめましょう。胃酸が胃の噴門から食道に逆流しやすくなり、逆流性食道炎を招く恐れもあります。

●食事は寝る2~3時間前に終える

重い食事をしてから寝ると、むかつきの原因になる恐れがあります。これは、睡眠中に胃の運動がゆるやかになるためです。食事は寝る数時間前に終えるようにしましょう。

●ストレスを発散する

ストレスによって自律神経が乱れると、胃液の分泌の調整がうまくできなくなることがあります。すると逆流性食道炎になる可能性もあるため、ストレスを溜めないようにしましょう。

食べ物を消化する「胃液」

胃液の役割は、食べ物を消化することです。また食べ物といっしょに入ってきたウイルスや細菌の増殖を抑える作用や、殺菌する働きもあります。胃液が多くなると胃痛や胃もたれの原因にもなるため、紹介した食事と生活習慣を心がけて、胃にやさしい生活を送りましょう。

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