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太陽系外縁天体ってなに?
太陽系外縁天体(たいようけい・がいえんてんたい)とは、太陽系にある天体のうち、海王星の軌道よりも外側にある天体の総称です。「外縁天体」とだけいう場合もあります。
太陽系の構成と外縁天体の位置
そもそも太陽系は、太陽を中心に太陽の重力によってそのまわりを周回する天体からなるものです。ちなみに地球もそのひとつです。
太陽系を構成する主要な惑星は、全部で8個あります。太陽から近い順に、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星となっています。
そして海王星よりもさらに外側には冥王星(めいおうせい)などの天体があり、それらを太陽系外縁天体と呼ぶのです。
どのようにして外縁天体が発見されるのか?
海王星より外側に位置する冥王星が発見されたのは、1930年のことです。当時行われていたのは、空の同じ区域の天体写真を撮影し、数週間後に再び写真を撮り、2つの画像の間で動く天体を探すという方法です。
こうして太陽系にあった8個の天体のほかに、太陽系の第9惑星の捜索が行われ、冥王星の存在が確認されたのです。
近年は惑星科学の発展が目覚ましく、国立天文台の巨大なすばる望遠鏡などが用いられ、次々と太陽系外縁天体が発見されています。
太陽系の果てを旅する
太陽系よりさらに遠くに離れた太陽系外縁天体。その天体を探すのは、どうやって行われているのでしょうか?
太陽系外縁部の探検の歴史
これまでも太陽系の第9惑星は、多くの科学者が探してきました。冥王星もそのひとつと思われていたのですが、冥王星はサイズが小さく、軌道は楕円という特徴があります。
そんなことから、IAU(国際天文学連合)が定めた惑星の定義からは外れることとなり、冥王星は第9惑星ではなくなりました。しかし現在も第9惑星の捜索は行われ、太陽系外縁天体も次々と見つかっています。
宇宙の果てまでの距離とスケール
太陽系外縁天体は、地球からも果てしなく離れた場所にあります。太陽から地球までの距離は1億4959万8262km、太陽から海王星までは44億9839万6441kmです。太陽から海王星までの距離は、太陽から地球までの距離のおよそ30倍もあるのです。
謎多き天体たちの正体
太陽系外縁天体の話をすると、耳慣れない言葉がいくつか出てくるかもしれません。それらを確認しましょう。
オールトの雲とは?
オールトの雲とは、太陽系の外側を取り巻く天体群のことです。無数の小天体からできているもので、理論上存在すると考えられています。これは、オランダの天文学者ヤン・オールトが1950年に提唱しました。
ヤン・オールトは、理論からオールトの雲の存在を提唱したものの、その天体が直接発見されたわけではなく、現在も仮説です。しかし、この存在を否定する証拠もないのです。
トランスニプトニアンオブジェクト(TNO)
トランスニプトニアン オブジェクトとは、英語でTrans-Neptunian Objectsのことです。「TNO」と略されますが、太陽系外縁天体を指します。
人類がこれまでに発見した驚異の天体たち
人類は、これまでに多くの天体を見つけてきました。まだまだ謎の多い宇宙で、どんなものが見つかっているのでしょうか?
エリス、マケマケ、ハウメア:知られざる矮惑星
惑星の定義を満たさない存在も、その中にはあります。そこで国際天文学連合は2006年に「惑星」を再定義すると同時に、「準惑星」についても定義したのです。
それによって、第9惑星だと思われていた冥王星が、惑星ではなく「準惑星」に定義づけられました。さらに2004年に見つかった「ハウメア」、2005年に発見された「エリス」「マケマケ」も、太陽系外縁の準惑星なのです。
準惑星は、当初英語の「dwarf planet(ドワーフ・プラネット)」の訳語として「矮惑星」という言葉が使われました。しかし現在は「準惑星」という言葉が使われるのが一般的です。
セドナや2012VP113などの極端な軌道を持つ天体
太陽系外縁天体を探すなかで、これまでにセドナ、2012VP113などの天体も見つかっています。どちらも海王星の軌道の外側に存在しますが、軌道が極端な楕円形を描くという特徴があります。
小惑星帯とカイパーベルトの違い
小惑星帯やカイパーベルトという言葉もあります。これらは何なのでしょうか?
小惑星帯の謎
小惑星帯とは、火星と木星の軌道の間に存在し、多くの小惑星がある領域のことです。
直径1㎞を超える小惑星は100万個から200万個ほどあるとみられ、さらに何百万もの小さな岩もあります。小惑星帯は「メインベルト」と呼ばれることもあります。
カイパーベルトの発見と研究
カイパーベルトとは、海王星の軌道より外側にある小惑星が数多く存在する領域のことです。「エッジワース・カイパーベルト」ともいいます。カイパーベルトの存在は、1950年にオランダの天文学者カイパーが提唱したもので、1993年以降に発見されました。
冥王星とその仲間たち-矮惑星の世界
昔は太陽系のひとつだと考えられていた冥王星ですが、太陽系外縁天体と認識されています。
冥王星の歴史と再分類
冥王星は1930年に発見されました。これまで太陽系の天体は、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星と冥王星の9つであると考えられてきました。
しかし2003年にエリスと呼ばれる天体も見つかり、冥王星が太陽系の第9惑星ならば、エリスは第10惑星の存在であるとアメリカのNASAが発表を行ったのです。
しかしIAU(国際天文学連合)は冥王星の大きさが月の約3分の2ほどの大きさしかないことなどを理由に、冥王星は惑星ではないと定義しました。それによって太陽系は8個の天体となり、冥王星もエリスも太陽系から外されたのです。
矮惑星と他の天体との違い
冥王星は、準惑星(矮惑星)と定義されています。準惑星は太陽のまわりを周り、十分な質量を持ち、軌道状の近くで他の天体を掃き散らさず、衛星ではないなどと定義されています。
一方の惑星については、まわりの天体を重力ではじき飛ばして、軌道の近くには他の天体がありません。その点が、準惑星と惑星の違いといえるでしょう。
未来への探査計画-太陽系外縁部の新たな秘密を求めて
太陽系外縁天体を探す計画は、まだ続いています。
未来の宇宙探査ミッション
宇宙探査は、ますます進歩を遂げています。アメリカのNASAは、アルテミス計画を進めています。これは月に有人着陸して持続的な捜査を行うというもので、将来には火星での有人探査も視野に入れているのです。
学術と技術の進歩による新たな可能性
特別な技術を訓練した宇宙飛行士ではなくても、今では一般人が宇宙旅行に行けるようになりつつあります。
NASAは月移住計画を目指すなど、人が宇宙で生活を送ることも本気で視野に入れているのです。まだ遠い未来のことと思われるかもしれませんが、将来は月や火星に気軽に旅行に行くことが当たり前になるのかもしれません。
果てしない宇宙の魅力
地球から月まで遠く離れているのに、それよりもさらに果てしなく離れた場所にある海王星。それより外側にあるのが太陽系外縁天体です。そんな宇宙への人々のロマンは変わることなく、これからもさまざまな天体の捜索が続けられていくのでしょう。
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文・構成/HugKum編集部