「比例代表制」の特徴をわかりやすく解説。選挙区制との違いやメリットも【親子で学ぶ現代社会】

国政選挙の「比例代表制」は、どのようなルールに基づく制度なのでしょうか? 選挙区制と比較しながら、比例代表制の特徴やメリット、デメリットを解説します。衆議院・参議院ごとの比例代表制も確認し、選挙に関する知識を深めましょう。

比例代表制とはどんなもの?

日本では、満18歳(18年目の誕生日の前日)以上の国民に選挙権が与えられます。「比例代表制」は選挙制度の一つで、国政選挙で採用されています。国政選挙の仕組みや、比例代表制の特徴について理解を深めましょう。

まずは国政選挙の仕組みを知ろう

国政選挙は国の政治(国政)に携わる人を選ぶための選挙で、「衆議院議員総選挙」「参議院議員通常選挙」に大別されます。

衆議院議員総選挙(以下、衆院選)は、議員の任期満了(4年)に伴う選挙と、解散による選挙があります。選挙制度は「小選挙区比例代表並立制(しょうせんきょくひれいだいひょうへいりつせい)」と呼ばれ、小選挙区制・比例代表制を同時に行うのが特徴です。

参議院議員通常選挙(以下、参院選)は、議員の任期満了(6年)に伴います。3年に一度のペースで議員定数の半分を改選する決まりで、選挙区制・比例代表制を同時に実施します。

比例代表制は「得票率」で議席数を分配

衆院選・参院選には、各政党の得票率に応じて議席数を分配する「比例代表制」が採用されています。「得票率」とは、有効投票数のうち候補者や政党がどれだけの票を獲得したかを示す割合です。

議席数の分配には「ドント式」という計算方法が用いられ、各政党の総得票数を整数(1・2・3…)で割り、商(割り算の答え)の大きい順に当選とします。

6議席を巡って三つの政党(A党・B党・C党)が争うと仮定し、ドント式で議席数を分配すると以下の表のようになります。

ドント式での当選者数の割り当て方

A党が1万5,000票・B党が1万2,000票・C党が9,000票を得た場合、商が大きい順に1議席ずつ割り当てると、A党が3議席、B党が2議席、C党が1議席を獲得します。

選挙区制との主な違い

「選挙区制」は選出する議員の人数によって、「大選挙区」「小選挙区」に分類されるのが特徴です。

衆院選の選挙区制は1選挙区から1人を選出するため、小選挙区に該当します。一方、参院選の選挙区制は、1選挙区から2人以上を選ぶ大選挙区が採用されています。

選挙区制と比例代表制の大きな違いは、投票の対象です。選挙区制では「人(候補者)」を選ぶのに対し、比例代表制では「政党」を選びます。

なお、衆院選の比例代表制は候補者名での投票も可能です。ただし、政党ごとの獲得議席数を集計する際には、候補者名は政党名に置き換えられます。

出典:
総務省|選挙権と被選挙権
総務省|選挙の種類

衆議院と参議院の比例代表制について

衆院選・参院選のいずれにも比例代表制が取り入れられているものの、名簿の形式は大きく異なります。それぞれの特徴を確認しましょう。

衆議院は「拘束名簿式」を採用

衆院選の比例代表制は、全国を11の選挙区(ブロック)に分けて行います。衆議院議員の定数465人のうち、176人が比例代表選出議員です(2021年時点)。

衆議院では、候補者の当選順位を決めた名簿を事前に用意しておく「拘束名簿式(こうそくめいぼしき)」を採用しています。

拘束名簿式の特徴は、政党側の意向が反映されやすいことです。議席が配分された後は、名簿に記された当選順位の通りに当選人が決まります。候補者名が書かれた票は無効となるため、有権者は必ず「政党名」で投票しなければなりません。

参議院は「非拘束名簿式」を採用

参院選の比例代表制は、全国を一つの選挙区と見なします。参議院議員の定数とされる248人のうち、100人が比例代表制で選ばれます(2022年時点)。

当選者の選出方法は、名簿で当選順位を決めない「非拘束名簿式(ひこうそくめいぼしき)」です。衆議院とは異なり、有権者は「候補者名」または「政党名」で投票ができます。政党ごとに議席を配分した後は、得票数が多い人から順番に当選する決まりです。

参院選の比例代表制で知名度の高い「タレント候補」が擁立されるのは、より多くの票を集め、政党の議席増加を狙う戦略の一つといえるでしょう。

公職選挙法の改正で「特定枠」を導入

公職選挙法の改正により、2019年の参院選比例代表制から「特定枠」が導入されました。参院選の比例代表制は非拘束名簿式が基本ですが、特定枠を使うと「優先的に当選人になるべき候補者」の指定が可能です。

特定枠に記載された候補者は得票数にかかわらず、名簿の順番に当選が決まります。特定枠を使う判断は政党側に委ねられており、適用する人数にも制限はありません。政党が特定枠を有効に活用すれば、全国的な支持基盤はなくても、国政で役に立つ人材や民意に沿った人材を当選させられます。

出典:総務省|参議院議員選挙制度の改正について

比例代表制のメリット

なぜ、衆院選・参院選の両方で比例代表制が行われるのでしょうか?  選挙区制と比較しながら、比例代表制のメリットを解説します。

死票が抑えられる

一つ目のメリットは、「死票(しひょう)」を抑えられる点です。死票とは、落選者に投じられた票(当選に結び付かない票)を指します。

例えば、衆院選の選挙区制では一つの選挙区で1人しか当選しないので、死票が多く生じてしまいます。一方、比例代表制は、各政党の得票率によって議席の配分が決まる仕組みです。選挙区制に比べて死票が生じにくく、幅広い民意が反映される傾向にあります。

少数政党でも議席を獲得しやすい

二つ目のメリットは、少数政党でも議席を獲得しやすい点です。比例代表制は各政党の得票率に応じて議席数が決まるため、少数政党・新政党でも議席を獲得できる可能性があります。結果的に、より多くの声が政治に反映されるでしょう。

しかし、少数政党・新政党が多く議席を獲得すると複数の政党が乱立する状態になり、政局の不安定を招く恐れがあります。一方、選挙区制においては、大政党の候補者に多くの票が集まるのが一般的です。少数政党の意見が反映されにくいのは難点ですが、政局が安定しやすいともいわれています。

比例代表制のデメリット

比例代表制には、デメリットもいくつかあります。代表的なデメリットを確認し、比例代表制の知識を深めましょう。

選挙にかかるコストが大きい

選挙で有権者の票を得るためには、ポスター・チラシを配ったり、選挙区を回ってあいさつをしたりといった選挙運動が必要です。比例代表制の選挙区はエリアが幅広く、選挙運動の費用がかさんでしまうのが難点です。

例えば、衆院選の比例代表制では、東京以外のブロックが複数の県をまたいでいます。参院選においては全国が選挙区となるので、より多くの費用がかかるでしょう。

なお、衆院選の小選挙区は289区で、東京都内だけでも30の選挙区があります。選挙区の範囲が狭いため、候補者は選挙にかかる費用を抑えられるのが特徴です。自分の選挙区をくまなく回れる上に、有権者との距離が縮まりやすい傾向にあります。

衆議院の「比例復活」に批判がある

衆院選の「比例復活」について、「有権者の意思に反しているのではないか」という批判の声が上がっています。比例復活とは、小選挙区で落選した立候補者が比例代表制で当選することです。

衆院選では、選挙区制、比例代表制への「重複立候補」が認められています。つまり、小選挙区で落選しても、比例代表制で復活する可能性があるのです。

国民に選ばれなかった候補者が復活当選する仕組みに、「民意が無視されている」と感じる人は少なくないようです。

参考:総務省|衆議院小選挙区の区割りの改定等について

比例代表制の特徴や仕組みを正しく理解しよう

比例代表制は、衆院選・参院選の両方で採用されている選挙制度です。得票率に応じて議席を分配するのが特徴で、計算方法にはドント式が用いられています。死票が少なくて幅広い民意が反映されやすい一方、選挙運動の費用がかさむ傾向にあります。

「投票」という形で自分たちの代表を選ぶ選挙は、重要な権利の一つです。衆院選・参院選における比例代表制を正しく理解し、親子で選挙について話し合ってみてはいかがでしょうか?

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