8月の別名「葉月」
葉月(はづき)は和風月名の一種であり、旧暦の月名です。現代でもカレンダーなどで見かけることがあるため、意味が気になる人もいるでしょう。8月を葉月と呼ぶようになった由来や、旧暦と現代の暦との違いなどを紹介します。
由来には諸説ある
葉月の由来には諸説ありますが、旧暦の8月は秋になって木の葉が落ちる季節だったことから、「葉落月(はおうづき)」から転じたとする説が有名です。和風月名は現代とは季節感にずれがあり、葉月は現在の8月下旬から10月上旬ごろに該当します。
また、稲の穂が張る「穂張月(ほはりづき)」や、その年に初めて水鳥のガンが飛来してくる時期なので「初雁月(はつかりづき)」に由来しているという説もあります。
これらの呼び方がいつの間にか呼びやすく短縮されて「はづき」になり、葉月という漢字を当てたとも考えられるのです。
季節にずれのある和風月名
和風月名は旧暦の季節に合わせたもののため、現代とは1〜2カ月ほど季節感にずれがある点を押さえておきましょう。旧暦では「太陽太陰暦」が使われていましたが、現在は太陽の動きを反映した「太陽暦」が採用されています。
太陽太陰暦は、月の満ち欠けの周期を1カ月と定めて暦を作成する方法です。
地球は365.24日で太陽の周りを1周します。月の満ち欠けの周期は約29.5日なので、旧暦の1カ月は29日か30日となり、1年は354日です。そこで、2~3年に1度、1年が13カ月になるように閏月(うるうづき)を設けて暦と季節感のずれを修正しました。
太陽暦は太陽太陰暦よりもずれが少ないので、4年に1度、1年を366日とする閏年(うるうどし)によって修正しています。
その他の8月の別名
8月の一般的な別名は葉月ですが、他の別名もあります。さまざまな別名を知れば、日本の自然や文化などをより深く理解できます。葉月と併せて覚えておきたい別名や、その由来を見ていきましょう。
秋の気配を感じる別名
旧暦の8月は夏が終わって秋に移り変わる時期なので、秋らしさを感じる別名が少なくありません。例えば、以下のような別名があります。
●秋風月(あきかぜづき):秋風が吹く時期であることから
●木染月(こぞめづき)・濃染月(こぞめづき)・紅染月(べにぞめづき・べにそめづき・こうぞめづき):紅葉で木々が色づく様子から
●月見月(つきみづき)・観月(かんげつ):旧暦の8月15日は「中秋の名月」であり、月を観賞する習わしがあるため
気候の変化や紅葉、月見シーズンに由来する別名が多い点を押さえておきましょう。
鳥に関連した別名
8月の別名には鳥に関するものもあります。
●燕去月(つばめさりづき):秋になるとツバメが南の国に渡っていくことから
●雁来月(かりきづき):冬鳥のガンがやってくることから
毎年決まった時期に地域を移動する鳥を、渡り鳥と呼びます。鳥の中には、日本で繁殖や越冬をするために渡って来る種類がおり、渡り鳥の姿を見れば季節の移り変わりを感じられるのです。
日本で越冬する鳥を冬鳥、夏前後に繁殖のために渡って来る鳥を夏鳥といいます。代表的な冬鳥はガン・カモ類、ハクチョウ類などです。冬鳥と入れ替わるように、ツバメやホトトギスなどの夏鳥がやって来ます。
生き生きとした竹や草を表した別名
現在の8月下旬から10月上旬ごろの、竹や草の様子を表した別名もあります。
●竹春(ちくしゅん):初夏に出てきたタケノコが成長し若竹になる様子が、竹にとっての春のようだから
●草津月(くさつづき):夏の厳しい日差しで成長を止めていた草が、再び元気を取り戻すことから
タケノコは地中で育ち、地上に現れてから棹(かん)を伸ばして若竹へと成長していきます。棹は樹木に例えると幹に当たり、中が空洞になっていることが特徴です。
草津月の「津」は「の」のことで、草の月という意味があります。
8月の風習であるお盆
8月はお盆のシーズンで、長期休暇を取る人もいるでしょう。近年は生活様式や価値観の変化などにより、年間行事としてお盆をする家庭は減っているかもしれません。お盆とはどのような風習なのか、何をして過ごせばよいのかを紹介します。
お盆とは?
お盆は、古くからの日本の祖霊信仰と仏教の儀式が合体したものです。正式には「盂蘭盆会(うらぼんえ)」といい、仏教行事に由来しています。
不思議な言葉ですが、古代インドで使われていた言葉「ウラバンナ(逆さづり)」が起源です。お釈迦様の弟子が、あの世で逆さづりの刑を受けていた家族を救うために供養をした伝説が基になっています。
お盆の時期になると、亡くなった先祖の霊があの世から家に帰ってきて家族と過ごし、お盆が終われば再び帰っていくとされています。お盆の時期は8月15日前後が一般的ですが、地域によって異なる場合があり、元々は旧暦の7月に行われていました。
お盆には何をする?
お盆にはお墓参りをして、先祖を供養します。住んでいる地域や仏教の宗派によっても異なりますが、先祖が迷わず帰ってこられるように「迎え火」を焚き、見送る際には「送り火」をするのが一般的です。
本物の火を焚く代わりに、盆提灯を灯す場合もあります。さらに、キュウリやナスを牛馬に見立てたお盆飾りや、先祖が戻ってきている間の食事として「仏膳」を用意する家もあります。
仏膳は家族が食べるものと同じものを、小さな器によそってお供えすることです。その他にも地域のイベントとして、盆踊りや灯籠流しなどが開催されることもあります。
季節の移ろいを感じる8月の別名
月の別名にはその時期ならではの気候や自然が反映され、季節の移ろいを感じられるものが少なくありません。旧暦とのずれがある点も押さえておくと、和風月名と現代の季節感の違いが分かります。
また、8月の伝統行事であるお盆の風習を取り入れれば、子どもが日本の文化を体験するよい機会となります。子どもと一緒にお盆飾りを作って盆提灯を灯し、お墓参りをするなどして、お盆らしい過ごし方をしてみるのもよいでしょう。
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構成・文/HugKum編集部