「不撓不屈」とは?
まずは、この言葉の読み方と意味を押さえておきましょう。
読み方と意味
この言葉は『不撓不屈』と書いて「ふとうふくつ」と読みます。『不撓』と『不屈』という「あきらめない」といった意味合いのふたつの言葉から成っており、「強い意志をもって、どんな苦労や困難にもくじけずに立ち向かうこと」を意味します。
由来・語源は、中国の正史『二十五史』の一節
『不撓不屈』は故事成語のひとつで、中国の正史である『二十五史』のうちの『漢書』の叙伝第七十下にある、「王商」という人物を評した「楽昌(がくしょう)篤実(とくじつ)、不撓不屈」という一節が由来となっていると言われています。
「楽昌」とは「王商」のことで、この一節はその性格が情が厚く誠実(=「篤実」)で、決してくじけず諦めることはない人物だと称したもの。これが転じて、「不撓不屈」が「どんな困難があってもあきらめない」という意味で使われるようになったと考えられています。
使い方を例文でチェック!
『不撓不屈』は、「不撓不屈の〇〇」と別の言葉と合わせて使われる傾向にあります。例文を通じてチェックしていきましょう。
1:トラブルが生じて辛い状況に陥ったようだが、彼は【不撓不屈】の精神でそのイベントをやりきった。
この例文のように、『不撓不屈』は「〜の精神」と組み合わせて使われることが多い言葉です。どんな状況でもめげずにやり遂げる精神を表します。
2:見るからに強そうな選手が相手だったが、彼女は【不撓不屈】の態度を崩さずに最後まで戦い切った。
『不撓不屈』は「〜の態度」と組み合わせて使われることも珍しくありません。困難に直面してもめげない態度を言い表した例文です。
3:難関校への受験だったが、【不撓不屈】の努力によって見事に合格することができた。
同じく、「〜の努力」と組み合わせて使われることもあります。くじけることなく継続的に続けてきた努力を言い表す際などにはこの使い方ができそうです。
類語や言い換え表現は?
では、『不撓不屈』を別の言葉で言い表したい場合にはどのような言葉が使えるのでしょうか。ここでは、言い換えに使えそうな類語をご紹介します。
1:百折不撓(ひゃくせつふとう)
『百折不撓』とは、「何度失敗しても志をまげないこと」を意味する言葉です。『不撓不屈』と同じく『不撓』という言葉が含まれており、「くじけないこと」を言い表している点において似た言葉と言えます。
ただし、『不撓不屈』の場合は『百折不撓』の「何度折れても(何度失敗しても)」のニュアンスが薄まり、とにかく絶対に「くじけない」「意志を曲げない」といった意味合いが強調されている印象になります。
2:七転び八起き(ななころびやおき)
『七転び八起き』とは、「何回失敗しても、くじけることなく再び奮起して立ち直ること」を意味する言葉です。『不撓不屈』と同様に、「くじけないこと」を言い表すことができます。
ただし、『七転び八起き』はニュアンスによっては「人生には浮き沈みが多いこと」を意味してしまうため要注意。
3:粘り強い(ねばりづよい)
『粘り強い』とは、「根気強くやりとげようとする様子」を言い表す言葉です。困難に直面してもくじけない様子を表現できる点において、『不撓不屈』と近い表現と言えるのではないでしょうか。
『粘り強い』は「粘り強く努力する」「粘り強い性格」のように、副詞としても形容詞としても活用することができます。
対義語は?
『不撓不屈』には明確に対となる対義語が存在しません。そのため、ここでは『不撓不屈』の反対に近い意味を持つ言葉をご紹介します。
1:意志薄弱(いしはくじゃく)
『意志薄弱』とは、文字通り、「やり遂げようとするこころざしが弱いこと」を意味する四字熟語です。自分の意志を保てず、人の意見や状況に左右されやすい様子を言い表すことができ、「どんな困難があってもくじけない」「意志を曲げない」という意味を持つ『不撓不屈』とは反対に近い言葉と言えるのではないでしょうか。
2:薄志弱行(はくしじゃっこう)
『薄志弱行』は、「意志が弱く、物事を判断したり、実行したりする力に欠けること」を意味します。こちらもまた、意志が強くくじけない様子を表現できる『不撓不屈』とは反対に近い言葉です。『意志薄弱』よりも、『薄志弱行』のほうが“始める前から”意志が折れてしまっているような印象となります。
英語表現は?
では、『不撓不屈』は英語ではどのように表現できるのでしょうか。最後に、『不撓不屈』と近い意味を持つ英語表現を押さえておきましょう。
1: indomitable
“indomitable”とは「不屈の」「断固たる」と直訳できる英語の形容詞です。意志を曲げずにくじけない様子を表現できるため、『不撓不屈』の英語訳として使われています。
“an indomitable spirit(不撓不屈の精神)”、“an indomitable determination(不撓不屈の決意)”のように、名詞と組み合わせて用いてみましょう。
2:unyielding
“unyielding”とは、「(考えや信念などが)揺るぎない」「不屈の」と訳される英語の形容詞で、こちらもまた『不撓不屈』の英語訳として用いられることがある表現です。
“indomitable”と同じく、“an unyielding perseverance(不撓不屈の忍耐力)”、“an unyielding stance(不撓不屈の姿勢)”と名詞と組み合わせて使うことができます。
スポーツ選手や有名人の“座右の銘”としても掲げられやすい言葉
今回は、『不撓不屈』の意味や語源から、使い方、類語、対義語、英語表現までをご紹介してきました。ここまで述べてきたとおり、『不撓不屈』は、スポーツ選手や有名人の“座右の銘”としても掲げられやすい四字熟語です。正確に意味を把握しておけば、『不撓不屈』を掲げる人たちの、人となりや目指す精神がよりよく理解できるようになりますね。
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文・構成/羽吹理美