育児休業給付金はいつまで延長できる? 条件と申請のポイントとは

育児休業給付金は、子どもが1歳になるまでの育児休業中に支給されます。ただし1歳を過ぎた後も休まなければならない事情がある人は、受給期間を延長することも可能です。育児休業給付金を延長できる期間や条件、申請方法について解説します。

育児休業給付金の延長は可能?

育児休業給付金は、育児休業中の給料の代わりに国が支給する給付金です。何らかの事情により育休を延長した場合は、給付金も続けて支給されます。

支給延長の制度について、概要を見ていきましょう。

最長2歳まで延長できる

育休を延長できる期間は、最長でも「子どもが2歳になるまで」です。ただし、いきなり2歳まで延長できるわけではありません。

子どもが1歳になった以降に職場復帰できない事情がある人には、まず1歳6カ月までの延長が認められます。1歳6カ月以降も引き続き職場復帰できない事情がある人のみ、2歳までの再延長が申請できるのです。

延長期間は復職できる条件が整い次第終了となり、給付金の支給も終わります。

育児休業は段階的に2歳までの延長が可能

支給金額は延長前と変わらない

給付金の支給金額は、休業前6カ月の平均賃金を基に決定します。

育児休業開始から6カ月間は賃金の67%、6カ月以降は50%が支給される決まりです。このため育休を延長したからといって、支給金額が増えたり減ったりすることはありません。

※月給は手取りではなく額面。ただし支給上限額と下限額が設けられています。
育児休業給付金は、育休開始からの日数(180日前か180日後か)で受給率が定められている

 

例えば、子どもが10カ月のときにパパが育休を開始して、1歳6カ月まで延長した場合でも、最初の6カ月間は賃金の67%が受け取れます。

支給金額は延長する・しないにかかわらず、育休開始日からの期間によって決まることを覚えておきましょう。

パパ・ママ育休プラスの検討も

共働きの人は「パパ・ママ育休プラス」を使えば、後から休むほうの休業期間を「子どもが1歳2カ月になるまで」延長できます。申請の条件は以下の通りです。

・子どもが1歳になるまでに配偶者が育休を取得している
・本人の育休開始予定日が、子どもの1歳の誕生日以前である
・本人の育休開始予定日が、配偶者の育休開始日以降である

例えば、ママが先に育休を取得して、パパが数か月遅れで育休を取得した場合、通常は1歳で終わる育休期間を、あとから育休を取得したパパは1歳2カ月まで延ばせるようになります。

図は、ママの育休開始後、パパもあとから育休を取得し、ママが先に育休を終了するケース。パパとママの育休をどう重ね合わせるかは各家庭の事情にあわせて。

 

パパ・ママ育休プラスは、夫婦が協力して育児できるようにと設けられた制度なので、特別な事情がなくても利用できます。もちろん延長分の給付金も支給されるので、条件に合う人は利用を検討してみるとよいでしょう。

参考:パパ休暇及びパパ・ママ育休プラス|厚生労働省

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延長するための条件とは?

育児休業給付金を延長するためには、一定の条件を満たす必要があります。延長が認められるケースを、具体的に見ていきましょう。

保育所に入れない

共働きの場合、仕事に復帰するには子どもを保育所に預けなくてはなりません。しかし自治体によっては保育所に空きがなく、受け入れ先が見つからないこともあるでしょう。

そのため保育所への入所を希望し、申し込んでいるにもかかわらず入所できない場合は、育休の延長が認められます。

なお延長の対象となるのは、自治体を通して申し込む認可保育施設を希望していて入所できていない場合です。無認可の保育施設にのみ入所届を出していて、入れなかった場合は延長が認められません。

参考:保育所に入所できない場合の育児休業給付金 支給対象期間の延長についてのご案内|厚生労働省

養育予定の配偶者が不在

子どもが1歳になった後に、養育を行う予定の配偶者がいなくなった場合も育休を延長できます。配偶者には、婚姻届を出していない事実婚の人も含まれます。配偶者不在の主な例は以下の通りです。

・配偶者が死亡した
・配偶者が負傷や疾病、精神疾患により子どもの養育が困難になった
・離婚して配偶者が子どもと別居することになった

また育休中に新たな妊娠・出産を迎える人は、出産予定日から6週間(多胎妊娠では14週間)、または産後8週間以内なら育休の延長を申請できます。

参考:Ⅱ-1 育児休業制度 Ⅱ-1-1 育児休業の対象となる労働者 厚生労働省

育児休業給付金延長の申請方法

育児休業給付金を延長したいときは、どのように手続きをすればよいのでしょうか。期限や必要書類も合わせて見ていきましょう。

申請先

延長の申請先は、最初に給付金を申請したときと同じです。基本的には会社に育休の延長を申請した後で、会社が所轄のハローワークで給付金延長及び支給申請の手続きをします。

給付金に関しては、受給者本人がハローワークに出向いて直接手続きすることも可能です。ただし、どちらの場合も、先に会社に対して育休の延長を申し出ておく必要があります。

延長の可能性が出てきた時点で会社の担当部署に連絡して、手続きについて相談してみるとよいでしょう。

申請の期限

会社に育休の延長を申し出る期限は、育休終了予定日の2週間前までです。

1歳まで育休を取った人が1歳6カ月まで延長する場合、育休終了予定日は1歳の誕生日の前日です。誕生日当日と勘違いして、申請期限に間に合わないケースもあるため注意しましょう。2歳まで延長したい人も、延長期間終了予定日の2週間前までに申請します。

なお、パパ・ママ育休プラスを使う人は、取得条件を証明できる書類をハローワークに提出する必要があります。育休を申請するときに、制度を利用することを会社に伝え、必要書類も渡しておくとスムーズでしょう。

参考:育児休業制度について|厚生労働省 雇用環境・均等局 職業生活両立課

必要書類

育児休業給付金の延長に必要な書類は、延長理由によって変わります。育休延長の申し出と一緒に、会社に提出できるよう準備しましょう。

・保育所に入所できないとき: 自治体が発行した保育所等の入所保留通知書など
・養育予定の配偶者の死亡や離婚:世帯全員について記載された住民票の写しおよび母子健康手帳
・養育予定の配偶者の負傷や疾病:配偶者の状態について証明する医師の診断書等
・育休中に出産する場合:母子健康手帳

パパ・ママ育休プラスでは、世帯全員について記載された住民票の写しなど、申請者と配偶者の関係が証明できる書類を提出します。

また配偶者が給付金を受給していない場合のみ、「育児休業取扱通知書」の写しなどの配偶者の育休取得を確認できる書類も必要です。

参考:ハローワークインターネットサービス 雇用継続給付 厚生労働省

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育児休業給付金の延長に係る保育所申込の注意点

育児休業給付金延長の理由として最も多いのが、子どもが1歳になるまでに保育所に入所できないパターンです。

給付金を受け取るためには、入所できない事実を証明しなければなりません。確実に受給できるように、保育所申込の注意点を見ていきましょう。

入所希望は必ず出す

給付金は復職までの収入を保障するものなので、本人に復職の意思がないと判断された場合は支給されません。

そのため子どもが1歳になるまでに「保育所の入所希望を出していること」が支給の条件となっています。

待機児童が多い自治体では、「申し込んでもきっと入れない」と最初からあきらめてしまい、入所希望すら出さない人も多いようです。しかし入所希望を出していない人が、保育所に入所できないからと延長を申請しても給付金はもらえません。

復職の意思がないとみなされるため、入所できるかどうかにかかわらず必ず申し込むようにしましょう。

間違えやすい「入所希望日」

給付金を延長するためには、保育所の入所希望日を子どもの「1歳の誕生日まで」に設定する必要があります。

育休の終了日は1歳の誕生日の前日なので、誕生日当日に子どもが保育所に通えるようにしていなければ、復職の意思を認めてもらえません。

たとえ子どもが1歳になるまでに申込が済んでいても、入所希望日を誕生日の翌日以降にしてしまうと給付金がもらえなくなります。

参考:保育所に入所できない場合の育児休業給付金の延長について|ハローワーク飯田橋

入所申込の締切もチェック

入所申込の期限は、自治体によって異なります。入所希望月の前月10日で締め切る自治体もあれば、毎月1日を入所希望日にしなければならない自治体もあります。

例えば、子どもの誕生日が6月20日で上記の条件だった場合、5月10日までに申し込み、入所希望日を6月1日にする必要があるのです。

また、1~3月からの入所は、年度初めの調整業務を優先するなどの理由から、募集をしていない自治体もあります。

年度初めにあたる4月生まれの場合、年末の募集で申し込みをするなど、誕生月よりも数カ月前に申し込みしないと間に合わないケースがあります。

育休を開始する時点で、自治体のホームページや広報誌をチェックして、締切日を確認しておくと安心です。

育児休業の延長を視野に入れておこう

育児休業期間は、復職に向けて準備を進める期間でもあります。

とはいえ、子どもの預け先がなければ復職はかないません。待機児童が多い地域はもちろん、保育所に空きがある地域に住んでいる人でも、配偶者に何かあれば予定通りに復職できないこともあるでしょう。

育休は、条件付きで期間を延長することも可能です。育休を取得する際は期間の延長も視野に入れつつ、必要なときには滞りなく手続きできるよう準備することをおすすめします。

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構成・文/HugKum編集部

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