日本では、赤ちゃんが生まれると戸籍登録のために「出生届」を提出します。出生届の提出がなければ、赤ちゃんは日本国籍を取得できないので、必ず手続きが必要です。期限や記載方法、提出時に必要なものを知っておきましょう。
出産後に提出する「出生届」とは?
出産後は、赤ちゃんが生まれたことを自治体や国に知らせるため「出生届」を提出します。赤ちゃんの戸籍を登録するために必要なことなので、早めに手続きをしましょう。
赤ちゃんを戸籍に登録する手続き
赤ちゃんが生まれて出生届を提出すると、パパとママの子どもとして戸籍に登録されます。そして、戸籍を持つ人間が受けるサービスのすべてが利用可能となるのです。
予防接種や検診、児童手当など子どもにはさまざまな権利があります。もし、出生届を出すのを怠り放置していると子どもは無戸籍のままです。「日本国籍の子どもとして認められていない」状態となり、不利益を被ってしまいます。
出生届を出すのは両親の義務なので、期限までに必ず手続きを済ませましょう。
出典:法務省:出生届
用紙は市区町村役場や産院でもらえる
出生届の用紙は、基本的には市区町村役場や産院でもらえます。子どもが生まれる前に準備しておきたいときは、市区町村役場に行ってもらっておきましょう。
子どもが生まれてから慌てて書くよりも、ゆったりとした気持ちで準備できるのではないでしょうか。
出生届を出す手続きを知らなかった人や、用紙をもらいに行く暇がない人も心配はいりません。出産後に産院で用紙を手渡されることが多いはずです。事前に用意できていない場合でも、それほど困ることはないでしょう。
自宅出産を選んだ場合でも、医師や助産師から用紙を手渡されます。もし、もらえなかった場合は確認するか、市区町村役場まで取りに行きましょう。
ダウンロード、デザイン画付きでもOK
「せっかく出生届を出すなら思い出に残るものがよい」と考えている場合は、デザイン画付きのオリジナル出生届を検討してみましょう。
キャラクターや写真付きなどの出生届も人気です。近年は、自治体などでもオリジナル出生届けが作られていて、ホームページからダウンロードできます。
すでにデザインされているものから自分たちで写真を追加するものまで、選び方は自由です。
デザイン画付きのオリジナル出生届の中には、記念に手元で保存できるタイプのものもあります。子どもが大きくなったときに見せて思い出を語るなど、さまざまな使い方ができるでしょう。
出生届を書くときのポイント
出生届は、赤ちゃんが生まれたときに行う手続きです。書き間違いが原因でトラブルが起こらないよう、正式な書類であるという気持ちを忘れず丁寧に書きましょう。
消えない黒のボールペンで丁寧に
出生届には、子どもの名前や生年月日など重要な情報を記載します。
シャープペンシルや摩擦で消えるボールペンではなく、黒のボールペンなどを使って書きましょう。このとき、太文字のペンを使用すると文字がつぶれて読みづらくなってしまうので、細字のものがおすすめです。
書き間違いがないよう、また誰が読んでも分かるよう丁寧に書くことも大切です。簡略化した文字ではなく、正しい漢字を使いましょう。
特に、子どもの名前は重要です。万が一間違えて登録されてしまうと、容易に変更ができません。出生届は慌てて書くのではなく、しっかり時間を取って書くことをおすすめします。
修正液や修正テープは使わない
出生届は正式な書類です。間違ったときは修正液や修正テープは使わず、自治体ごとのルールに従いましょう。
出生届だけでなくすべての公的書類は、修正液や修正テープでの修正が認められていません。簡易な修正を認めてしまうと、書類を書いた後に誰かが改変しても気づくことができないためです。
「間違った箇所を二重線で消して訂正印を押す」のが一般的です。出生届を提出するとき、修正した箇所に訂正印がないと印鑑を求められることもあります。
出生証明書は医師や助産師が記入
出生届には、パパやママが記載する部分だけでなく、「出生証明書」と呼ばれる、医師や助産師が記載する部分がセットになっています。
子どもの名前や生年月日を書くのは出生届と同じですが、生まれた時間や出生した施設の情報・身長体重など、さらに細かく記載されるものです。
出生証明書の部分は医師や助産師が記載するため、誤って自分で記入したり、間違いを訂正したりするのはやめましょう。万が一間違いがあると気づいた場合は、記入した医師や助産師に訂正を求めます。
提出先と手続きに必要なものは?
出生届は、提出先が決まっています。また、提出時に必要なものもあるため、忘れずに準備しておきましょう。
決められた市区町村役場に提出
出生届を提出する場所は、市区町村役場です。子どもが生まれた場所、パパやママの本籍地・所在地などが対象となります。自治体によってどこで手続きができるかは異なるため、事前に確認しておきましょう。
また、出生届は郵送でも受付が可能です。しかし、明らかな間違いでなければそのまま受理されてしまうこともあり、ミスを防ぐには窓口での提出をおすすめします。
母子手帳などを忘れずに
出生届の提出には、印鑑や母子手帳などが必要です。また、身分証明のために健康保険証なども持っていきましょう。国民健康保険に加入している場合は、生まれた子どもの加入手続きも必要です。早いうちに済ませてしまいましょう。
印鑑は、訂正があったときや押し忘れを指摘された場合に使えます。届出印と同じもので、シャチハタは不可です。
なお、訂正ができるのは届出を行う本人のみで、代理人が提出する場合は訂正できません。母子手帳には出生届を提出済であることが記載されます。
出典:出生届の提出は、祖母が行ってもいいですか。|葛飾区公式サイト
出生届はいつまでに提出する?
出生届は赤ちゃんが生まれてから、すぐに提出の期限がやってきます。ママが提出できない場合は、ほかの人の力を借りましょう。提出しないとペナルティーもあるので、「うっかり忘れていた」では済みません。
出産の日を含めて14日以内
日本で出産した場合、出生届の提出期限は「出産の日を含めて14日」と定められています。それまでに子どもの名前を決め、提出を済ませる必要があります。
「産後の数日間はあっという間に過ぎていく」と感じるママは多いものです。子どもの名前は、妊娠中から考えて候補をしぼっておくなど、あらかじめ身内で話し合いを進めておくことが大切です。
出生届の提出は、原則生まれた子どものパパやママが行います。早めに準備しておけば、出産後に大慌てする必要はないでしょう。
海外で出産した場合は3カ月以内
出産した場所が日本国内でない場合、出生届の提出は猶予されます。出産の日を含めて3カ月と比較的長い期間が定められているため、すぐに日本に戻れない人も心配はいりません。
また、3カ月以内に日本に戻らず海外で生活を続ける場合は、出産した国の日本大使館などに出生届を提出すれば手続きが完了します。
国によって制度は異なりますが、国内で出産した子どもすべてに国籍を与える国もあるため、子どもに日本国籍を取得させる考えがある場合は、「国籍留保の届け出」も同時に行いましょう。
手続きを忘れると子どもの日本国籍が失われてしまい、将来本人が国籍を選ぶ権利がなくなってしまうので注意しましょう。
遅れた場合は過料の対象になることも
出生届の提出が遅れた場合、状況によっては過料の対象になります。過料とは「行政のルール違反による罰金」のようなものです。法律では最大5万円と定められています(戸籍法第137条)。
子どもの生年月日は変えられないため、ずらすことはできません。出産した日を含めて14日以内に提出されていない場合は、文書にて理由を求められます。
やむを得ない理由と判断されると過料の対象ではありませんが、正当な理由として認められるのは事故や災害、病気などです。「手続きの期限を知らなかった」などでは認められないことも多いため、気を付けましょう。
出典:出生届の届出期間14日を過ぎて提出すると罰を受けるのですか? | 厚木市
出典:e-Gov法令検索
平日に提出できない、そんなときは?
ママは入院中、パパは仕事で平日休みが取れないなど、出生届を出す時間がなかなか取れない家庭もあります。しかし、出生届は平日でなくても受け付けてもらえます。
週末の時間などをうまく使って、期限内に出生届を提出しましょう。
土日や祝日、夜間の提出も可能
出生届は、市区町村役場が開庁していないときも提出が可能です。
土日祝日・夜間には、休日対応の窓口が開いています。原則24時間対応で、戸籍の手続きも可能です。なお、支所によっては夜間や休日対応を行っていない場所もあるので、事前に近くの夜間休日窓口を確認しておきましょう。
出生届をパパが提出する場合は、仕事終わりでも提出できる「夜間休日窓口」が役立ちます。
ただし、夜間休日窓口は受付のみで、その場で審査や確認はされません。不備がある場合は、後日手続きが必要です。また、児童手当や保険加入などの手続きは、別途平日に行う必要があります。
代理人申請を検討
「どうしても、ママやパパによる出生届の提出ができそうにない…」と悩むときは、代理人申請も受け付けています。身内や友人などでも提出は可能です。
例えば、ママが入院中で、パパは単身赴任で近くにいないなど、ママとパパが出生届を提出するのが難しいことはよくあります。別々の地域にいる場合にはコミュニケーションが取りにくく、提出時の間違いなども起こりやすいでしょう。
代理人ができるのは提出のみですが、平日なら児童手当の手続きも同時に可能です。代理人の身分証明書を持っていけば、必要な手続きをまとめて終わらせることもできます。
出典:よくある質問 児童手当の申請方法を知りたい。|相模原市
手続き方法は事前にしっかりと確認しよう
出生届など、赤ちゃんの今後に関わる重要な書類は、事前に期限や記載方法、提出先などをきちんと確認しておきましょう。準備ができていれば、出産後に慌てることはありません。
なるべく素早く手続きを済ませて、ひと息つける時間をつくりましょう。
文・構成/HugKum編集部