摂氏と華氏、二つの温度表記を比較し、その違いや由来をくわしく解説します。近年では、海外旅行に出掛けずとも日本と異なる温度表記に出会うこともあります。換算方法を覚えてしまえば、海外作品などもスムーズに理解できるのではないでしょうか。
温度表記には2種類ある
海外などで天気予報を見て、日本ではありえない数字に目を丸くした人もいるかもしれません。実は、普段なにげなく使っている温度の表記方法は、万国共通ではないのです。
日常的に使われる温度表記には「摂氏」と「華氏」の2種類があります。まずは、この摂氏・華氏の違いや、換算方法について確認しましょう。
摂氏とは
摂氏は日本で一般的に使われている温度表記で、単位は「℃」です。読み方は、例えば15℃なら、「摂氏15度」と言ったり「15度シー」などと言ったりもします。
主な基準となる温度を見てみましょう。
- 絶対零度:-273.15℃
- 水の融点:0℃
- 水の沸点:100℃
絶対零度とは、これ以上下がらない最低温度のことです。摂氏は1気圧の環境で「氷が溶けて水になる温度(融点)を0℃」としており、「水が沸騰する温度(沸点)を100℃」としています。
華氏とは
華氏は海外のいくつかの国で使われている温度表記で、単位は「℉」です。日本で使われた場合の読み方は摂氏と同じように「華氏15度」と言ったり「15度エフ」と言ったりします。
- 絶対零度:-459.67℉
- 水の融点:32℉
- 水の沸点:212℉
摂氏と華氏で「水の融点」となる温度が異なることから分かるように、同じ温度であっても表される数字には大きな差があります。さらに、水の融点から沸点までの温度差が180℉であることにも注目しましょう。
なお、華氏が0℃になるのは「塩化アンモニウム・水・氷の混合物でできた寒剤の融点」です。なぜこれを基準としたのかは、次の章でくわしく説明します。
変換する計算式
摂氏と華氏では、気温を表す尺度が異なります。換算するときは、単純に「何度の差分を加えればよい」というわけにはいきません。
水の融点から沸点の間に、摂氏で100、華氏で180の差があることから分かるように、摂氏の1℃は華氏の1.8℉に相当するのです。また、水の融点に32の差があることから、摂氏と華氏の換算式は次のようになります。
- 摂氏(℃)=【華氏(℉)-32】÷1.8
- 華氏(℉)=摂氏(℃)×1.8+32
すぐ気温が知りたいとき
計算するよりもだいたいの目安となる数字を覚えてしまった方が楽かもしれません。目安となる数字を季節とからめると、「50℉以下は冬」「60℉は春や秋」「70℉は夏」となります。
参考:日本気象協会
二つの温度の起源
それぞれの単位をどのような人がいつ考案したのか、その成り立ちについて紹介します。
摂氏の起源とは
表記に使われる「C」は、摂氏を提案したアンデルス・セルシウスから取られました。英語では摂氏を「degrees Celsius」と表します。「摂氏」とは、「摂爾修斯」というセルシウスの中国語表記から文字を取って敬称を付けたものです。
1742年、摂氏が日常生活で使う温度単位として始めて提案された頃は、今とはプラスマイナスが逆でした。つまり、水の融点が100度・水の沸点が0度だったのです。
「氷点下になったとき、気温にマイナスを付けなくてもよいように」というのがその理由でした。しかし、セルシウスの死後1744年に、今のような形に訂正されています。
華氏の起源とは
表記に使われる「F」は、華氏を提案したガブリエル・ファーレンハイトから取られました。英語では「degrees Fahrenheit」と表します。「華氏」も、ファーレンハイトの中国語表記の「華倫海」に由来したものです。
1714年、ファーレンハイトは高精度で計測できる水銀温度計を発明しました。その際、より正確な温度が確認できるように、目盛りを細かく区切ったのです。
水ではなく、混合物である寒剤の融点を0℉としたのは、日常生活の中でマイナス表記の温度が出ないようにするためでした。
どんな国で使われてるの?
使い慣れた温度単位が通用する範囲を知っておくと、海外に行ったときも戸惑わずに済みます。ここでは、摂氏はどの国で通用し、どの国で華氏が使われているのか確認しておきましょう。
摂氏を使っている国
現在、世界中のほとんどの国で摂氏が使用されています。それらの国々は、共通の「SI単位系(国際単位系)」を採用しているためです。
1875年「メートル法を国際的な基準にしよう」とするメートル条約が締結されました。その後、メートル法と同じく十進法をベースにした、長さ・質量・秒・電流・熱力学温度・光度の単位もSI単位系として定めらたのです。
SI単位系は、正式にはフランス語で「Le Systeme International d’Unites」といいます。
華氏を使っている国
アメリカ・パラオ・バハマ・ベリーズ・ケイマン諸島の国々では、華氏が使用されています。ヨーロッパの国々では十数年前まで華氏が一般的だったため、イギリスなどでは現在も華氏が使われることもあるようです。
華氏のメリットは、普段使用する温度が全て自然数(正の整数)で表せることでしょう。設計などを行うときはSI単位系の使用が推奨されますが、日常生活においては華氏が便利といえるのかもしれません。
二つの温度表記の違いを覚えておこう
摂氏は日本で一般的に使われている温度の単位ですが、世界には華氏を使用する国もあります。どのような違いがあるのか知らないと、数字から伝わるイメージの差に驚くこともあるでしょう。
日本と関わりの深いアメリカも、華氏を使用する国の一つです。これからますます国際化が進んでいくことを考えると、子どもたちにも摂氏と華氏について教えておくとよいかもしれませんね。
文・構成/HugKum編集部