気化熱の原理とは? 打ち水で空気が冷える仕組みを知ろう【親子でプチ科学】

気化熱は、暮らしの中で体験する機会の多い身近な科学現象です。気化熱について知ることは、子どもが理科の学習に興味を持つよいきっかけになるでしょう。簡単な実験方法や気化熱を利用した家電の仕組みなど、親子で学ぶヒントを紹介します。

気化熱とはどのような現象?

気化熱について頭では何となく分かっていても、具体的に説明するのは難しいものです。気化熱の定義や計算方法について解説します。

液体が蒸発する際に吸収する熱エネルギー

気化熱の「気化」とは、液体が気体に変化する現象のことです。

液体は気化する際に、周囲の熱を吸収する性質を持っています。このときに吸収される熱エネルギーが「気化熱」の正体です。

逆に、気体が液体に変化する「液化」の際は、「凝縮熱」と呼ばれる、気化熱と同じ量の熱エネルギーが放出されます。

気化熱を計算する方法

気化熱はどのように計算するのでしょうか。

液体は温度が上がると沸騰して徐々に気体へと変化していきますが、変化している最中は温度が変わりません。

例えば、100℃で沸騰する水は、全てが蒸発し終わるまで、温度はずっと100℃のままです。

このため、水が気化する際に必要な熱量を計算するときは「温度を上昇させるための熱量(顕熱)」と、「沸騰してから気体に変わるまでの熱量(潜熱)」を別々の方法で求め、最後に合計します。

試しに20℃の水200gを100℃まで沸かし、完全に気化するまでの熱量を計算してみましょう。

顕熱の計算には、比熱(水の場合4.184kJ/kg)を用います。200gは0.2kg なので、「0.2×4.184×(100-20)=66.9kJ」となります。

潜熱は気圧によって変わり、1気圧の場合は1kg当たり2257kJと決まっています。水200gなら2257 ×0.2 = 451.4kJとなり、顕熱と合計すると518.3kJです。

518.3kJがどのくらいの熱量なのか具体的にイメージできないときは、同じ熱量の単位「kcal(キロカロリー)」に換算してみましょう。

1Jは約0.24calなので、518.3kJは124kcalとほぼ同じ熱量となります。

気化熱を実感してみよう

液体が気化するときにどのくらい熱を吸収しているのかは、簡単な実験で分かります。家庭で手軽に試せる、気化熱の体験方法を見ていきましょう。

夏なら打ち水

地面に水をまく「打ち水」は、気化熱を利用して暑さを和らげる手段です。

地面にまかれた水は、地表の熱を奪いながら気化します。気化熱により地面の温度が下がるため、周囲が涼しく感じられるのです。

自宅の玄関やベランダなどに打ち水をして、効果を実感してみましょう。基本のやり方は以下の通りです。

1.打ち水をする場所の気温を測る
2.ジョウロやペットボトルなどを使って水をまく
3.数分後に同じ場所で気温を測る

水は1m四方につき1Lを目安に、まんべんなくまきましょう。お風呂の残り湯や雨水でも問題ありません。

5分おきに何度か測って気温の変化を記録したり、打ち水の場所や時間帯、日にちを変えたりして、色々と試してみるとよいでしょう。

扇風機の前に氷を置く

扇風機と氷があれば、室内でも気化熱を実感できます。氷が溶けて水になり、蒸発するときには気化熱で周囲の空気が冷やされます。

扇風機の前に氷を置くと、冷たくなった空気が風で運ばれ、とても涼しく感じるでしょう。水で濡らしたタオルでも代用できますが、羽に絡まないように注意しましょう。

水とアルコールで冷やす力を比較する

消毒用のアルコールを肌に塗ったときに、冷たく感じるのは気化熱が原因です。アルコールは蒸発しやすい性質があるため、水よりも奪う熱量が多く、冷やす力が強いのです。

温度計を2本用意して、実際に比べてみましょう。水とアルコールはあらかじめ室内に出しておき、同じ温度にしておきます。

水で濡らしたガーゼと、アルコールで濡らしたガーゼをそれぞれ温度計に巻き付け、しばらく置いてから目盛りを観察します。

アルコールを巻き付けたほうが、水よりも低い温度を示していることが分かります。

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身近にある気化熱を利用した家電

「物を冷やす」力を持つ気化熱の原理は、エアコンや冷蔵庫にも利用されています。それぞれの仕組みを見ていきましょう。

エアコン

エアコンの内部では、室内機と室外機の間を「冷媒ガス」と呼ばれる物質が循環しています。冷媒ガスを気化または液化させることで、空気中の熱を吸収・放出し、温度を調節する仕組みです。

冷房のときには、室外機が冷媒ガスを低温の液体に変えて、室内機内部の熱交換器に送ります。

室内機に吸い込まれた部屋の空気は、熱交換器の液化した冷媒ガスによって熱を奪われ、冷たくなって室内に戻されるのです。

空気の熱を奪って気体になった冷媒ガスは、室外機で冷やされ再び液体になります。冷房運転中の室外機から温かい風が出てくるのは、冷媒ガスが液化する際に熱を放出するためです。

冷蔵庫

冷蔵庫もエアコンと同様に、冷媒ガスによる気化熱を利用しています。

冷蔵庫の内部では、冷媒ガスを液体から気体へ、そしてまた液体へと変化させる「冷凍サイクル」が利用されています。

冷凍サイクルは、庫内に冷媒ガスが出入りする際の圧力を変えることで気化や液化を促し、効率的に冷やす仕組みです。

冷媒ガスを気化しやすい状態にして庫内に送り込み、発生する気化熱によって冷気を保っています。

気化熱の仕組みを知りエコな涼しさを

気化熱の仕組みを知れば、水や氷だけでも周囲を涼しくできることが分かります。複雑そうに見える家電製品も、水の代わりに冷媒ガスを使っているだけで、原理は同じです。

暑い夏には気化熱を利用して、エコな涼しさを体感してみましょう。

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文・構成/HugKum編集部

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