国際バカロレアは日本政府も普及に力を入れている、世界標準の教育プログラムです。認定校に通い、規定のカリキュラムを修了すれば、大学受験や就職に有利になるといわれています。国際バカロレアの特徴や認定校について分かりやすく解説します。
そもそも国際バカロレアって何?
「国際バカロレア」という言葉だけでは、何のことか分からない人も多いのではないでしょうか。国際バカロレアの概要と、注目される理由を見ていきましょう。
国際的な人材育成のための教育プログラム
国際バカロレアは、1968年にスイスでスタートした教育プログラムです。元々は外交官や国際機関の職員など、自国以外の国で暮らす家庭の子ども達のために開発されました。
国際バカロレアのカリキュラムを修了すれば、教育制度が異なる国に住んでいる子どもも、自国の子ども達と同じ大学受験資格を得られるようにしたのです。
どの国に住んでいても同じ教育ができるように開発されたことから、国際的な人材育成に役立つ世界標準の教育プログラムとして注目され、多くの国や地域で導入が始まります。
2019年3月には153以上の国や地域が国際バカロレアを取り入れており、認定校は5300校を超えています。日本でも文部科学省が積極的に普及に取り組んでおり、認定校の数は年々増加中です。
出典:IBとは | 文部科学省IB教育推進コンソーシアム
出典:国際バカロレア認定のための手引き(はじめに~第4章) (mext.go.jp)
注目される背景
国際バカロレアが世界で注目される背景には、企業や大学研究機関の急速なグローバル化があげられます。
外国との取引や共同研究を円滑に行うためには、言語を習得するだけではなく、宗教・文化・価値観などさまざまな違いを理解し、相手を思いやれる人材が欠かせません。
国際バカロレアでは以下の人物像を「学習者像」と位置付け、グローバルな視野を持つ人材育成を目指しています。
- 探求する人
- 知識のある人
- 考える人
- コミュニケーションができる人
- 信念をもつ人
- 心を開く人
- 思いやりのある人
- 挑戦する人
- バランスのとれた人
- 振り返りができる人
出典:IBの学習者像
国際バカロレア認定校とは
国際バカロレアを受講するためには、認定校に通う必要があります。日本の認定校の数や種類を見ていきましょう。
日本における認定校
日本では、2013年に閣議決定した「日本再興戦略」に基づき、国際バカロレア認定校を増やす取り組みを進めています。認定校の数は20年の11月時点で、全国で90校です。
国際バカロレアのプログラムは対象年齢によって4種類に分かれており、小学生向けの初等教育プログラムは認定を受けた小学校や、小学生対象のインターナショナルスクールで受講できます。
出典:認定校・候補校 | 文部科学省IB教育推進コンソーシアム
一条校とインターナショナルスクールの違い
国際バカロレアの認定校には、「一条校」と「インターナショナルスクール」の2種類があります。カリキュラム自体はどちらも同じですが、学校としての位置付けが違うため注意が必要です。
一条校とは「学校教育法第一条」で指定している学校です。文部科学省が定める教育カリキュラムに準拠した、小学校や中学校、高校、大学などが該当します。
一方のインターナショナルスクールは、基本的に日本に住む外国人の子どもを対象とした学校です。
日本人も通えますが、ほとんどのインターナショナルスクールは一条校ではないため、小中学校の場合は義務教育として認められません。
高校の場合も「高卒資格」が得られないので、大学受験のために別途「高等学校卒業程度認定試験」を受ける必要があります。
出典:学校教育法(昭和二十二年三月二十九日法律第二十六号):文部科学省
出典:11. 学齢児童生徒をいわゆるインターナショナルスクールに通わせた場合の就学義務について:文部科学省
年齢に応じた4つの教育プログラム
国際バカロレアには、子どもの発達段階や目的に応じた四つのプログラムが用意されています。対象年齢の目安と特徴を見ていきましょう。
3歳から12歳 初等教育プログラム「PYP」
PYPは「Primary Years Programme」の略で、3~12歳の子どもが対象です。日本の教育課程の幼稚園から小学校に当たり、体育のような身体的発達を目的としたカリキュラムも含まれています。
どの言語でも実施可能であるため日本語で受けることができ、英語に触れたことのない子どもでも大丈夫です。日本には、2020年11月時点で45の認定校があります。
11歳から16歳 中等教育プログラム「MYP」
MYPは「Middle Years Programme」の略です。11~16歳の子どもが対象で、PYPと同様にどの言語でも実施できます。
MYPの特徴は、小学校などで学んだ内容と、社会とのつながりを意識させるようなカリキュラム内容です。
教科の枠を超えた学習や1年間かけて仕上げる自由課題などがあり、次の段階に進むための基礎学習として捉えられています。日本の認定校は、2020年11月時点で23校です。
16歳から19歳 ディプロマプログラム「DP」
DPは「Diploma Programme」の略で、国際バカロレアの中で最も浸透しているプログラムです。日本の認定校も54校と、他のプログラムよりも多くなっています。
DPの対象年齢は16~19歳で、履修期間は2年です。論文の提出や課外活動など、規定の課題をクリアし最終試験に合格すると、国際的な大学入学資格を取得できます。
DPは英語・フランス語・スペイン語のいずれかで実施するのが原則です。文部科学省では国際バカロレア普及のため、一部科目を日本語に対応させたDPの導入も進めています。
16歳から19歳 キャリア関連プログラム「IBCP」
国際バカロレアにはIBCPと呼ばれる、生涯のキャリア形成に必要なスキルを学べるプログラムもあります。
IBCPは「International Baccalaureate Career-related Programme」の略で、DPの科目の一部と、リアルな職業体験を組み合わせた内容が特徴です。
対象年齢はDPと同じく16~19歳で、対応言語も同じです。残念ながら、日本にはIBCP認定校はまだありません。
国際バカロレアの魅力と課題
子どもが国際バカロレアを履修すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。課題も合わせて解説します。
国際社会で活躍するためのスキルが身に付く
国際バカロレアのプログラムには、論理的な思考力や表現力、コミュニケーション能力など、国際社会で活躍するためのスキルが身に付く要素がたくさん含まれています。
子どもの頃から国際感覚が磨かれるので、海外大学への進学や国際的な仕事に就くことを希望する人にとっては、大変有効です。子どもの進学や就職の選択肢が増えるのは、親にとっても大きな魅力です。
国内外の大学入学に有利
近年、国内外を問わずDPのスコアを入試に活用する大学が増えています。
イギリスやオーストラリア、カナダなどの国には、DPのスコアと書類・面接のみで受験できる大学が多く、日本でも東大などの有名国立大学や一部の私立大学が、DPを利用した試験を取り入れています。
また、DPのスコア次第で基礎科目の受講が免除されたり、単位の振り替えに使えたりと、入学後の履修面でも有利です。
国内の認定校の数が少ない
日本における国際バカロレアの課題は、認定校の少なさと学費の高さです。日本の国際バカロレア認定校はまだまだ少ない上に、都市部に集中しています。
また、認定校のほとんどが、インターナショナルスクールや私立学校です。子どもに能力があっても、家から遠い、学費が高いといった理由で進学できない家庭も多いのが実情です。
子どもの進学先候補の幅を広げよう
文部科学省では国際バカロレアの有用性を認め、認定校を増やしたり日本語DPを導入したりして、普及を推し進めています。
今はまだ小さな子どもが中学生・高校生へと成長する頃には、もっと環境が整うことが予測されます。
将来の進学先候補を増やしてあげられるように、今から国際バカロレアへの理解を深めておきましょう。
構成/HugKum編集部