煮物に「冷凍」を用いる 3つのテクニック
冷凍は、食材を長期間保存するために役立ちますが、素材の細胞が壊れることから、味がよくしみ込む作用も働きます。これを生かして、下ごしらえの手間や、ゆっくり煮込む必要がある煮物に使える、3つのテクニックをご紹介します。
作った煮物を冷凍する
まずは基本中の基本として、たくさん作った煮物を長期間保存するための冷凍です。
汁もれには気をつけながら、できるだけ密閉して冷凍することで、およそ2週間は長持ちさせることができます。
冷凍素材を使って煮物を作る
日頃から冷凍野菜をストックしておいて、作りたいタイミングで調理するのも、冷凍を使いこなす技です。
冷凍された食材は、下ごしらえが済んでいるため、手間がかかりません。さらに、冷凍作用がもたらす味の染み込みやすさで、驚くほど短い時間でおいしい煮物に仕上がります。
冷凍で下味をつける
素材に味を染み込ませながら冷凍する「下味冷凍」とは、お好きな具材に味をつけながら冷凍ストックする方法です。調味料に浸けて冷凍保存すると、味がなじみ、素材を柔らかくすることができます。しかも仕込みから、2週間は保存しておけるんですよ。
次の項からは、具体的な方法をご紹介していきます。冷凍保存を使いこなすと、煮物を常備しやすくなりますよ。
煮物を冷凍する
ひじきやかぼちゃの煮物などは、一度にたくさん作って、冷凍保存しておくと使い勝手が抜群です。その都度、煮る必要がありませんから、サッとお弁当に入れて栄養バランスを整えられます。積極的に活用したい方法ですね。
ポイント1 できるだけ密閉して急速冷凍
ラップやフリーザーバックを活用して、具材にできるだけ空気が触れない工夫が肝心です。空気があると霜が発生しやすいため、解凍した後の劣化を招きます。
また、金属のトレイにのせて冷凍すると温度が下がりやすく、急速に冷凍が進みます。また、冷凍庫に入れた直後は、しばらく扉を開かないように気をつけるだけでも、冷凍は早まります。
ポイント2 こんにゃく、煮汁は取り除く
冷凍すると食感が大きく損なわれる食材は、こんにゃく、豆腐など。また、塩分を含む煮汁が多いと冷凍までに時間がかかります。あらかじめ取り除いてから保存をします。
ひじきの煮物 冷凍の手順
きんぴらや、切り干し大根の煮物なども、同じ方法で冷凍できます。
【1】鍋から冷凍する分を取り分けて、煮汁を軽く切ります。冷凍に適さない食材はここで取り除いておいてください。
【2】湯気が立たなくなるまで冷まし、冷凍に備えます。
【3】ラップを使って小分けします。離乳食用の製氷皿や、フリーザーバックに直接入れるのもOK。汁もれ防止のため、ラップで小分けしたものは、もう一枚フリーザーバックを重ねると安心です。
【4】空気から遮断するように気をつけ、密閉してください。金属トレイにのせてから冷凍庫へ入れます。
保存期間
冷凍した煮物は2週間をめどにお召し上がりください。長くなると、霜の発生、味の劣化や匂い移りが生じます。なるべく早いほうが、風味を感じながら味わえますよ。
解凍方法
解凍は水分が出ないようゆっくりと進めます。または逆に、一気に加熱して水が出る時間を与えない方法は電子レンジを使うと簡単にできます。
◆自然解凍
冷凍庫から冷蔵庫へ移すことで自然解凍ができます。お弁当に凍ったまま入れて、そのまま解凍すればお昼に食べごろです。
◆電子レンジ
電子レンジの温め機能を使います。耐熱皿にのせて温めてください。
冷凍素材を使って煮物を作る
次に、冷凍素材を使って煮物を作る方法をみていきます。
冷凍食品のお買い得日に買って、冷凍庫にあらかじめ用意しておくと、休日に仕込むことができます。スケジュールが立てやすいですね。または、帰宅後にサッと作る一品にも使えます。
冷凍里芋、冷凍イカで作る煮物
冷凍食材とだしパック、めんつゆで作るお手軽レシピです。
◆材料
冷凍里芋 150g
冷凍ロールイカ 150g
【だし汁】
水 150cc
だしパック 1袋
めんつゆ(ストレートタイプ) 大さじ3〜5
生姜 1片
◆作り方
【1】鍋に水を温め、だしパックを入れます。めんつゆで味を整えますが、だしパックよって塩分が変わるので、味をみながら。千切りにした生姜を入れてください。
【2】冷凍イカを、細切りにします。固くて切れない場合は、電子レンジでごく軽めに解凍します。
【3】【1】の鍋に冷凍里芋と【2】を入れて20分ほど煮ると完成。
保存期間
冷蔵保存で2〜3日の期間を目安にお召し上がりください。
要注意! 再冷凍はダメ
冷凍済の食品を使っていますから、でき上がった煮物を再冷凍することは控えてください。冷凍を繰り返すことは、食感の悪化や衛生面から、おすすめできません。
煮物に使えるおすすめの冷凍素材
使いやすい食材は根菜類の他、魚介、肉類など、種類は多くあります。
かぼちゃ 乱切り 1kg 冷凍野菜
冷凍の里芋やかぼちゃは、あらかじめ茹でてから冷凍されています。タネをとる手間はもちろん、下茹での必要もありません。すでに柔らかいため、加熱不足の失敗は、まずありません。これだけでも助かる冷凍野菜ですが、味が染み込みやすいのでおいしい煮物に仕上がります。
お徳用 冷凍ロールいか 5kg 8本入 アカイカ
イカは、魚介の中でも冷凍保存にむいている食材の代表。遠洋で漁獲されて、すぐに冷凍されるため、鮮度も味も良いものが手に入ります。凍ったまま、包丁で切れるところも、魅力です。
下味冷凍で煮物を作る
下味冷凍によって染み込んだ味は、初めて体験すると感動的です。短時間の加熱だけで、味がよく染みた煮物に仕上がりますよ。積極的に冷凍を使って、賢くおいしい時短料理を味わってください。
鶏と大根の煮物
もも肉を使った下味冷凍で、大根をおいしく炊いていきます。
◆材料
(2人分)
もも肉 200g
大根 100g
水 大さじ2
しょうゆ 大さじ2
みりん 大さじ2
酢 大さじ2
和風だしの素 小さじ1
◆下味冷凍の方法
【1】もも肉は一口大、大根はいちょう切りにカットします。
【2】材料をすべてフリーザーバックの中に入れて、調味料を全体にからめます。
【3】袋の空気を抜いて平らにして、冷凍庫に入れます。
◆調理方法
【1】鍋やフライパンに、袋の中身と水50㏄程度を加えて加熱します。
【2】解凍ができるまでフタをして、中火で蒸し焼きにします。
【3】素材がばらばらになったら、フタをはずし、水分がなくなるまで煮詰めれば完成。
保存期間
冷凍してストックしておける期間は、2週間~1か月程度です。調理の後は2~3日を目安にお召し上がりください。
作り置きしやすい! 冷凍できる煮物レシピ
多めに作り置きして、冷凍してもおいしいレシピを集めました。また、下味冷凍の参考にも使えます。充実した食卓で、忙しい日々を元気に過ごしたいですね。
ふんわりつくねとうずら卵の甘辛煮
れんこんをおろして肉に混ぜると、つくねが柔らか仕上がりに。
◆材料
(大人2人分+子ども2人分)
れんこん(小) 1節(130g)
鶏ひき肉 200g
うずらの卵の水煮 5~6個
ごま油 大さじ1
【A】
しょうゆ 大さじ2
みりん 大さじ2
酒 大さじ2
塩 少々
◆作り方
【1】れんこんは洗って皮ごとすりおろす。ボウルにひき肉、塩とともに入れ、粘りが出るまでよく混ぜ、食べやすく丸める。
【2】フライパンを中火で熱し、ごま油をなじませて【1】を入れ、両面に軽く焦げめがつくまで焼く。軽く油を拭いて、【A】とう ずらの卵を加え、煮汁が絡むまで煮込む。
*ミニトマトをあしらっても。
教えてくれたのは
井澤由美子さん
調理師、国際中医薬膳 師・中医師。旬の食材 の効能と素材の味を生かしたシンプルな料理 が人気。NHK『あさイチ』などテレビでも活躍 中。一女の母。
『ベビーブック』2017年2月号
サバのみそ煮
脳をぐんぐん成長させる最強育脳おかず。脳の働きを高めるDHAの補給に!
◆材料
(4人分)
サバの切り身(できれば真サバ) 4切れ(400~500g)
しょうが 1かけ(皮をむいてスライス)
【A】
水 200~250ml
酒 70ml
砂糖 大さじ2
味噌 大さじ3弱
◆作り方
【1】サバは5cm程度に切って熱湯をかけたあと、流水でよく洗う。
【2】鍋に【A】としょうがを入れて火にかけ、沸騰したら【1】を皮目を上にして入れる。
【3】3~4分後、出てきたアクを取り、火を弱めて煮汁が少なくなるまで煮詰める。※一度冷まして温め直すと、味がしみておいしい。
教えてくれたのは
りんひろこさん
料理家・フードコーディネーター・食育アドバイザー・薬膳アドバイザー。料理教室「みなとキッチン」主宰。京都で学んだ懐石料理と、アーユルヴェーダや薬膳など東洋の食養生の考えをもとにした、おいしく簡単な料理を提案。4歳と2歳、『めばえ』世代の子育てママでもある。
『めばえ』2018年10月号
鶏むね肉グリル焼きとパプリカのマリネ
しっかり味の甘辛チキンはご飯のお供にぴったり!
◆材料
鶏むね肉 1枚(250g)
塩 小さじ1/3
こしょう 少々
パプリカ(赤・黄) 各1/2個
【マリネ液】
オリーブオイル 大さじ4
酢、水 各大さじ2
ローリエ 1枚
塩、こしょう 各適量
◆作り方
【1】鶏むね肉は細長いそぎ切りにして、塩・こしょうをもみこむ。パプリカは1㎝幅に切る。
【2】魚焼きグリルで【1】を焼く。それぞれ途中で裏返して7~8分焼く(両面焼きグリルなら裏返さなくてOK)。
※フライパンで焼く場合は、オリーブオイル大さじ1/2を入れて表面を焼く(その分のオリーブオイルは【マリネ液】から減らす)。
【3】保存容器に【2】を入れ、マリネ液の材料を混ぜてかける。
◆ポイント
マリネ液を全体に回しかけ、30分ほど置くと食べごろに!
教えてくれたのは
田内しょうこさん
出版社勤務を経て、料理の道へ。働くママのための「シンプルで美味しい子どもご飯」を追求し、雑誌やWEBへのレシピ提案、出張料理教室、セミナー、取材やライティングなど幅広く活躍。
かぼちゃのレンジ甘煮
かぼちゃの煮物はレンジを使ってスピード調理! 最初に砂糖をまぶしてしっとり仕上げます。
◆材料
(大人2人分+子ども2人分)
かぼちゃ 1/4個
砂糖 大さじ2
【A】
みりん 大さじ1
しょうゆ 大さじ1
水 3/4カップ
◆作り方
【1】かぼちゃはワタを除いて一口大に切り、耐熱容器に入れ、砂糖をまぶし、【A】を加えて、ふんわりラップをかける。
【2】【1】を電子レンジで6分加熱し、軽く混ぜてさらに1~2分加熱する。
教えてくれたのは
ほりえさちこさん
栄養士、フードコーディネー ター、飾り巻き寿司インストラクター1級。男の子のママ。育児経験を生かした 簡単で栄養バランスのとれた料 理やかわいいレシピが人気。
『ベビーブック』2015年8月号
花煮しめ
お祝い料理の「煮しめ」をかわいらしく、お花のかたちに。
◆材料
(大人2人+子ども2人分)
れんこん 1/2節
にんじん 1/2本
里いも 3個
しいたけ 3個
絹さや 6枚
サラダ油 小さじ2
【A】
だし汁 2カップ
酒 大さじ1
みりん 大さじ2
砂糖 小さじ2
しょうゆ 大さじ1と1/2
◆作り方
【1】れんこんは厚さ1cmの輪切りにし、外周に切り込みを入れて花形にする。にんじんも厚さ1cmの輪切りにし、里いもは横半分に切り、ともに花型で抜く。しいたけは半分に切る。
【2】鍋にサラダ油を熱して【1】を炒め、【A】を加える。煮立ったら弱火にしてやわらかくなるまで煮、中火にして煮汁を半分量までとばす。
【3】ゆでた絹さやを添える。
※盛りつけに串を使っていますが、子どもに食べさせるときは必ず抜いてください。
教えてくれたのは
神みよ子さん
フードコーディネーター。編集プロダクション勤務、フリーランス編集者を経て、料理の世界へ。おいしく、楽しく、簡単なオリジナル料理をはじめ、キャラクターメニューの精巧さにも定評がある。
『ベビーブック』2011年1月号
筑前煮
炒め煮もフライパンで作ればくっつかず、火の通りも早い! 作りおきにも最適なレシピです。
◆材料
(大人2人+子ども2人分)
鶏もも肉 1枚
にんじん 1/2本
エリンギ 2本
大根 4cm
れんこん 4cm
サラダ油 大さじ1/2
【A】
水 150cc
酒 大さじ2
みりん 大さじ1
しょうゆ 大さじ4
砂糖 大さじ3
◆作り方
【1】鶏肉とにんじん、エリンギは一口大に切り、大根とれんこんは1cm幅のいちょう切りにする。
【2】【A】を合わせる。
【3】フライパンにサラダ油を熱して【1】を炒め、【2】を加え、弱火で20分ほど煮る。
◆ポイント
鍋で炒めるより、具材がくっつかないからラク。そのまま水と調味料を入れて煮込めば、面積が広いぶん火の通りが早く、味も早く染み込みます。
教えてくれたのは
尾田衣子さん
「ル・コルドン・ブルー」やイタリアにて料理を学び、OLから料理研究家に転身。現在、「料理教室 Assiette de KINU」を 主 宰。男の子のママでもある。
『ベビーブック』2011年2月号
冷凍テクニックでスピーディーな調理
調理の際、火加減や味付けの手間に戸惑うことは多いものです。そうして失敗もしながら経験が重なるにつれ、料理の腕が上がり、早くておいしい料理が作れるようになりますよね。
冷凍を使いこなせると、よりスピーディーな調理ができるようになります。時間をかけて身につける料理のコツとは、また違うテクニックですが、難しいわけではありません。むしろ簡単なのではないでしょうか。保存性とおいしさを兼ね備えた冷凍技術を試してみてください。
構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)