細胞分裂とは?
そもそも細胞分裂とは、どのような現象を指すのでしょうか。まずは細胞分裂の定義をおさらいしましょう。
一個の細胞が二つに分かれること
一つの細胞が二つの細胞に分かれることを「細胞分裂」といいます。生物のスタートは、受精卵と呼ばれる一つの細胞です。
受精卵が二つに分裂し、それぞれの細胞がさらに分裂を繰り返して数を増やしていきます。増えた細胞がそれぞれ大きくなることで、生物の体は成長します。
植物も動物も、分裂の仕組みが一部異なるものの、細胞分裂によって成長する点では同じです。細胞分裂は、あらゆる生物の成長のベースとなる、重要な生命現象なのです。
細胞分裂では「染色体」も分裂する
細胞分裂では、染色体も分裂することを覚えておきましょう。細胞には「核」があり、核の中には「染色体」があります。
染色体の中には、「DNA」が折りたたまれた状態で入っています。DNAは「デオキシリボ核酸」の頭文字を取ったもので「生命の設計図」とも呼ばれる物質です。
染色体の数は以下のように、種によって決まっています。
・ソラマメ:12本
・タマネギ:16本
・イネ:24本
・ネコ:38本
・イヌ:78本
・ヒト:46本
染色体は、父と母それぞれから受け継いだものがペアとなっており、ヒトの場合は23組に分けられます。23組のうち1組は性別を決める「性染色体」で、残りの22組は「常染色体」です。
二つの細胞分裂の特徴
細胞分裂には「体細胞分裂」と「減数分裂」があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
体細胞分裂
体細胞分裂は、生物の体をつくるための細胞分裂のことです。体細胞分裂では、分かれてできる細胞の染色体の数はもとの細胞と同じになります。
全く同じ細胞が、もう一つ作られるという状態です。一般的に細胞分裂といえば、体細胞分裂のことと考えてよいでしょう。
なお、ヒトの体は約60兆個もの細胞で形成されており、そのほとんどが体細胞分裂によって増えたものです。身近な植物やペット、家畜なども同じように体細胞分裂を繰り返すことで、個性的な姿に成長していきます。
減数分裂
卵子や精子のような、生殖のための細胞(生殖細胞)ができるときに行われる細胞分裂を「減数分裂」といいます。
減数分裂によって生まれる生殖細胞は、染色体の数がもとの細胞の半分になるのが特徴です。
生殖細胞は受精すると染色体が2倍になるため、分裂の段階で染色体の数を半分にしておく必要があるのです。卵子と精子が出あい、無事に受精できたら体細胞分裂が始まり、体を成長させていきます。
細胞分裂の過程
細胞分裂はいきなり起こるわけではなく、きちんとした順番があります。一つの細胞が二つに分かれるまでの過程を見ていきましょう。
核の中に染色体が現れる
細胞分裂の初期段階では、核は球形の状態で細胞のほぼ中央に位置しています。このとき、核の中ではDNAの複製が行われています。
この状態は「間期」と呼ばれ、細胞分裂の周期の中でも最も長い期間です。DNAの複製は生物の成長にとって最も重要なシーンであり、ミスがあれば病気や障がいなどを引き起こす可能性があります。
そのため、ミスが起こらないように時間をかけて、慎重に行われているのです。DNAの複製が終わると「前期」に移行し、核が消えてヒモのような形状の染色体が現れます。
染色体が二つに分かれ、それぞれ集まる
染色体はやがて細胞の中央に並ぶように集まり、細胞の両極から伸びてくる「紡錘糸」と呼ばれる繊維状の物質と結合します。
紡錘糸の役割は、染色体を二つに分けてそれぞれの極に引っ張ることです。紡錘糸によって二つに分けられた染色体はそれぞれ集まり、次第に姿が見えなくなります。
細胞の中央に染色体が現れ、紡錘糸が結合するまでを「中期」、染色体が紡錘糸によって両極に引っ張られていく状態を「後期」と呼んでいます。
細胞質が二つに分かれ、それぞれに核ができる
細胞分裂の最終段階が「終期」です。染色体が分裂した後、細胞質が二つに分かれ、それぞれの細胞に核ができます。核の中では再びDNAの複製が始まり、同じ工程が繰り返されていくのです。
なお、細胞質の分裂の仕方は、植物と動物で異なります。
植物は細胞質の中央に板のような仕切り(細胞板)が現れますが、動物では中央部分にくびれが生じ、ちぎられるようにして分かれます。
生物の成長に欠かせない細胞分裂
細胞分裂は、あらゆる生物の成長に欠かせない現象です。私たち人間も、細胞分裂が繰り返されることによって存在しています。
育ち盛りの子どもにとって、体が大きくなる過程が分かる細胞分裂は身近なテーマかもしれません。細胞分裂について正しく理解し、子どもに教えられるように準備しておきましょう。
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文・構成/HugKum編集部