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家庭での教科学習は、試行錯誤の繰り返し
こんにちは、ウチノコです。小1秋から不登校を選んだ現在小学3年生の息子とのくらしをゆるゆる発信しています。そんな息子は不登校を選んでからもずっと教科学習を続けています。不登校を選んだ際、子どもが心にダメージを受けているケースでは教科学習といつからどんなふうに向き合っていくか判断が難しいこともあるかと思うのですが、息子の場合は当初から学習を続けたいという本人の強い希望があったので続けることに決めました。
ただ、息子は発達が凸凹しているので、得意と不得意の差が大きく、学年で内容が決められている学校の教科書ベースでは苦痛を感じることや、もの足りなく感じることも見受けられました。また、感情コントロールの発達がゆっくりなため癇癪を起こしやすく、そういう面での難しさもカバーしながらの家庭学習は悩むことばかりでした。
2~3か月おきに教材や学習内容、かかわり方などを見直し、試行錯誤しながら教科学習を続けること2年。最近ようやく安定してきたと感じることが増えてきました。今回は色々と試した中から息子に合っていた教材をシェアしてみようと思います。
息子が苦手な漢字学習の悩み
息子は文字を書くことがとても苦手です。というのも、彼には小さなころから目で見た中から自分に必要な情報を抜き出す力に偏りがあったり、手と目の協調運動の発達がゆっくりで、自分の思うように体を動かすことの難しさがありました。そのため、小学生になってからは思考速度に文字を書く動作が追い付かず、もどかしさからくるイライラや苦痛が上手く処理できないことが増えていきました。
そのため、漢字学習の際に、「漢字を書いて覚える」というよくある学習方法では文字を書くことだけでエネルギーを使い果たしてしまい、記憶したり理解したりすることに割く余力が残らない状態になってしまうのです。実は、学校をつらいと感じるたくさんの理由の一つに「字を書かされることが辛い」という訴えもありました。そのため、家庭での教科学習をはじめた小学1年生のころは、小学校での辛かった記憶からか「オレの字は汚い!すぐバツをつけて直される!書きたくない!」と漢字を書くように促すだけで癇癪を起こしてしまう事もありました。
苦手からいったん距離を置くことに
今の彼に書字を無理強いしてしまうと、せっかくの学びたいという気持ちを潰してしまうかもしれない。そう感じた私は医師とも相談の上、書字と距離を置き、彼の発達の進みや心の傷が癒えるのを待つ方がいいだろうと判断。書字をできるだけ学習から外すことに決めました。
ただ一方で息子は読書が好きなので、読みたい本が読めることを目的とした漢字学習を進めることができないものだろうか・・・とも考えていました。書くことなく漢字学習を進めるにはどうしたらいいのか。漢字の教材と言えば、書くこと重視のものがほとんどでなかなか良いものは見つかりません。ついには、デジタル教材の自作を試み始めたころ「ミチムラ式漢字eブック」という教材と運命の出会いを果たしたのです。
ミチムラ式漢字eブックとは
ミチムラ式漢字eブックとは盲学校で指導していらっしゃった道村先生が、その経験をもとにつくられた漢字に特化した電子書籍です。現在、小学1年生から6年生までの光村図書と東京書籍の国語教科書に対応したものが発売されています。文字アリ、写真アリ、解説アリ、音声アリのデジタル漢字図鑑のようなもの、と言えばいいのでしょうか。主な学び方はひとつの漢字を部首などの単純なパーツに分けて、部品の組み合わせとして漢字が出来ていることを理解し、パーツの組み合わせを言葉にして唱えて覚えていくという方法です。
例えば「遊」という漢字なら(方)ほうへん(ノ)の(一)いち(子)こ(⻌)しんにょうという具合で、さらにこの呪文を音声読み上げ機能で読み上げてくれるようになっています。更に、訓読みと音読み(音読みだけでは意味が理解しにくいので必ず熟語と一緒に)も唱えてくれるので、それらを何度も繰り返し聞くうちに耳から言葉として漢字を理解することができるのです。目で見るよりも聞いて理解することが得意な子はこの点に使いやすさを感じることかと思います。(当時の息子はこのタイプでした)
書くよりも読めること、言葉を増やし漢字を使えるところまで
この教材では漢字を書けるようになることよりも、漢字を読めること、その漢字に関する語彙を増やすことに重点が置いてあります。そのため、漢字に興味を持てるように様々な熟語が写真と一緒に紹介してあります。知らない言葉でも写真が付いているので、意味が理解しやすく印象に残すことができます。
これは文字だけではなく、映像があるほうが記憶しやすいタイプにはありがたい表示です。また、その漢字のなりたちや同じ音読みの漢字、何故この部品が大事なのかなどの理由まで、漢字雑学がたくさん書いてあります。私も知らないことばかりで、へぇ~、知らなかった!なんて言いながら息子と一緒にワイワイ学習を続けています。そして、教える人へのメッセージが書いてあることもあり、子どもと一緒に漢字学習を楽しむことの大切さを私も教えてもらっています。
ミチムラ式漢字学習についてはこちらから>>
書かずに学ぶ→息子の苦手意識に変化が!
書かずに漢字が学べるようになったことで、息子の漢字学習に対する拒否感はなくなりました。以前は見るだけで嫌がった初めて出会う漢字や、どう書けばいいかわからない画数の多い複雑な漢字でも、パーツに分けてしまえば知った部品でできていることが理解できたことで、現在は量は少ないですが嫌がることなく漢字を書けるようになり、更に漢字を覚える速度も上がってきています。
「漢字は書いて覚えるもの」という思い込みを手放したことで、楽しそうに漢字学習に取り組む息子に出会うことができました。「書かずに覚える漢字教材」という、前例のない教材を作って下さった道村先生には本当に感謝しています。
その子に合った方法を見つけ出す
私は息子と学習するようになり、見る、聞く、記憶する、思考するなどの情報処理にも一人一人個性があることを知りました。私の物事の受け取り方や理解の仕方と、息子のそれは違います。つまり、私のやりやすい方法と息子のやりやすい方法は違って当然なのです。だからこそ、一つの学習方法だけを良しとするのではなく、それぞれの人に合った方法を選んで学ぶことが学習を楽しむためには大切なのだと考えるようになりました。
学習が思うようにいかないときはまず、それが何故なのかの見極めが必要です。どういうインプット方法がやりやすいのか、頭の中でどう情報処理しているのか、どんな方法なら負担なくアウトプットできるのか。周囲の大人がその子の見えない部分について思いを巡らせ、観察し、向き合ってみることが突破口を開くきっかけになるのかもしれません。
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文・イラスト・構成/ウチノコ
構成/HugKum編集部
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