「リビングに本棚」で子どもが本好きになる神話は本当だった!?【本好きキッズの本棚、見せて見せて!第6回】

親にとって「本好きな子」は永遠の憧れ!?そして願いですね。JPIC読書アドバイザーで小学生男子の母でもある、ノンフィクションライター・須藤みかさんが、本をたくさん読むお子さんをお持ちのご家庭に突撃ルポ!リアルな本棚を報告してもらいます。今回は千葉県・公立小学校 小3年&6年物語好き姉妹アキカちゃん・ナツコちゃんの場合です。

「リビングに本棚」のおかげで、姉妹は物語好き!

イラスト/カラスヤマ ミライ

子どもを本好きにしたいなら、“環境”から!
「本棚はリビングに」という方法を、ご存知だろうか? 「読み聞かせをする」、「親が本を読む姿を見せる」とともに指南されるひとつだ。

カヨコさんのお宅も「本棚はリビングに」
そして、その本棚が実にいい!
下段は普通に本を収納し、上段は面置き型。そう、表紙がバーンと見える、図書館などに置いてあるタイプの本棚。以前に知人の家で見て「いいな」と思い、引っ越しを機に購入したそう。

借りた本を面陳列。まるで移動図書館⁉

カヨコさんは、娘のナツコちゃん(小6)とアキカちゃん(小3)が好きそうだな、と思う本を図書館で見つけてきては、面置きにするそう。
「借りてきた本を並べると、『あ、新しい本だ』とすぐに気づきますね」

絵本や物語に混じって、左端には『トン・チンカンの科学教室』『できる・できないのひみつ』など科学系も。カヨコさんの夫が小学生だった頃、好きだったという本。

子どもたちに読んでほしいなと思う本があった時、大切なのは押し付けずに「さりげなく」。その点、面置きタイプは置くだけで、本が「おもしろいよ、読んでみて」と主張しだす。背表紙だけが見える並べ方よりも俄然、子どもたちは興味を持って手を伸ばす。

本棚で、まず目についた絵本は『オレときいろ』。鮮やかな色彩と圧倒的なエネルギーにあふれた表紙は、手にとらずにはいられない。

あばれっぷり、いたずらっぷりがハンパないネコのおはなし『あくたれラルフのたんじょうび』は、題名の「あくたれ」に惹かれそう。

シンプルな線画が逆に目を引く『ゆかいなさんぽ』は、動物たちの鳴き声のリズムが楽しくなる。

 

この3冊は、動物が出てくるおはなしが好きだ、というアキカちゃん向けに。

フィランドで読み継がれている『オンネリとアンネリのおうち』は、仲良しの女の子たちが、ある日、2人だけの家に住むことになるというおはなし。かわいさ満載のファンタジーながら、独立心や自立心などが描かれている。さすが北欧!と思う児童書だ。アキカちゃんも、夢中になって読んでいるそう。

ナツコちゃんに、と借りてきたのは、『かさねちゃんにきいてみな』とのこと。カヨコさんが知り合いから紹介してもらい、気になっていた本で、小6の女の子を班長とする登校班の日常が子どもたちの会話中心に進んでいくストーリー。

『アナベル・ドールの冒険』はナツコちゃんが3年生の夏休みに、学校図書室の司書さんから勧められた本で、再読しようと、借りているそう。「普段は忙しそうな司書の先生も、夏休みだけは少しゆったりしていたんでしょうね。『ナツコちゃんはこの本が好きだと思うよ』と手渡してくれたそうです。嬉しそうに読んでいました」

 

2人とも物語好きだが、アキカちゃんは前述の通り、好んで読むのは動物が出てくるもの。
一番好きな本は『バムとケロ』シリーズで、なかでも好きなのが『バムとケロのそらのたび』だ。

 

ナツコちゃんは、「魔法や不思議な世界が出てくるもの」がお気に入り。
好きな本は、『ココの詩』『十一月の扉』『時計坂の家』の3冊。どれも高楼方子さんの作品だ。もともとカヨコさんが高楼さんの大ファン。図書館で借りて読んでいるうちに、ナツコちゃんも好きになったよう。

 

長~い物語も読めるようになったのは、父親の○○読みのおかげ?

ナツコちゃんの好きな本はどれもボリュームがある本。

いつから長い本が読めるように?――――

「毎日たくさんの絵本を一緒に読んで、本を楽しむ時間を共有してきました。お姉ちゃんは3年生くらいのころには親以上の読書家になっていました。妹は、お姉ちゃんが本を読み出すと遊んでもらえないので、『おねえちゃん、ほんばっかりよんで! ほん、きらい』と怒っていたくらいです。だから長い本は自然に読めるようになっていったと思うんですが、夫の荒業もきっかけのひとつかも知れません」

毎晩20~30分『ハリー・ポッター』を読み聞かせた!

荒業とは?――――

「3年生のころですが、夫が毎晩20~30分『ハリー・ポッター』を読み聞かせしたんです。1冊読むのに、1か月くらいかかったでしょうか。それからナツコの物語好きに拍車がかかりました。2冊目からは1人で読んでいました。『少し背伸びした本の世界にも触れてほしいと思って始めた』と夫は言っていましたが、実際は眠気との戦いだったようです。私だったら、とてもできません(苦笑)」

夫も、本好き。子どもたちへの読み聞かせを今も2週間に1度くらいするのだという。

「お父さんの読み聞かせはおもしろい。ラップ読みとかするんです」とナツコちゃんがクスクス笑いながら言うと、「変読みもするよね」とアキカちゃん。

お父さんバージョンのリズミカルな楽しいおはなしの世界があるようだ。

 

スマホ、テレビに没頭の、中だるみの1年も実はあった…

なんと理想的な環境!と思っていたら、「この本棚がスカスカだった時が1年くらいあるんですよ」とカヨコさん。

寝る前には絵本を3冊読むというルールをずっと守ってきたが、ナツコちゃんが小4、アキカちゃんが小1の冬くらいから、子どもたちが“ひとり寝”するようになった。ちょうど、カヨコさんが資格試験の勉強をスタートしたころとも重なったそう。

「子どもたちは楽しそうに寝ているし、私も疲れているし、と本から離れていったんです。1年ほどはパッタリと読書から離れ、親子ともにスマホや漫画、テレビに飲み込まれていました。でも、ふと自分を振り返り、スマホを見る時間が長かったことを猛省しまして、図書館通いを再開しました」

写真はどれも小6ナツコちゃんが好きな本。学校の図書室からはこの日、『獣の奏者』『いつも心に好奇心(ミステリー)!』を借りていた。

 

カヨコさんは以前よく読んでいたリンドグレーンなどの児童書を図書館で借りてくるようになった、という。

 

「気になる児童書をあれこれ読んでいると、その世界にトリップできて、すごーく楽しくて! その楽しさが、目からウロコの体験でした。心の中に物語の世界があることで、ほんとに心が楽になって。スマホを見てばかりの時には味わえない楽しさでした」

思春期のムズカシイ時期、本の世界にトリップできるのがいい

気づくと、ナツコちゃんも自然とリビングで読むように。今では、オススメの本を教え合うのが楽しみになっている。アキカちゃんも本好きだが、「お姉ちゃんの時に比べて圧倒的に読み聞かせ時間が少ないからか、本への興味はお姉ちゃんよりは少ないように思います」と語る。

ナツコちゃんは本も好きだが、ゲームも漫画も大好きだ。

「あとから聞くと、(中ヌケだった1年間)子どもたちは学校では本を読んでいたそうです。物語への思いは、消えていなかったんだなぁと思います。だから本から気持ちが離れていたのは、私だけでした。ナツコは思春期にさしかかり、気持ちがしんどそうな時は本の世界にトリップしているようです。親が本に親しんでいること、リビングに常にいろんな本があることって、子どもがいくつになっても大事なのかもと今、しみじみ感じています」

 

読むだけでなく…好きが高じて「執筆活動」も⁉

写真の人形は、この童話に出てくる主人公。アキカちゃんと2人で作った、という

ナツコちゃんは、物語を書くのも大好き。

『ひまわり村のおはなし』という童話を3年のころから書き始め「友達やその家族たちにも売り込んで、読者を獲得して好評だったたようです」とカヨコさん。

現在休筆中だそうだが、ぜひ再開してほしい。

 

新作『くろーばーの森』は昨年の作品。

奥付には、プロフィールとともに「きょかなくコピーしていいです」と書かれていた。

ナツコちゃんの夢は、本屋さんと物語を書く人。

アキカちゃんの夢は、えかきさん。

 

いつか姉妹で本を出版する日が来るかもしれない。

 

幼少期の愛読書は?

物語好きの姉妹は幼い頃、どんな絵本を好きだったのだろう?

◎ナツコちゃんは、『まるてんいろてん』や元永定正さんが絵を描いている『もこもこもこ』『もけらもけら』『いろいきてる!』など。

「音にも絵にもリズムがあって、読んでいて楽しかった。でも、なんと言っても工藤ノリコさんの「ピヨピヨシリーズ」がナツコにとって不動の一位です」(カヨコさん)。

◎アキカちゃんは、『だいこんだんめんれんこんざんねん』がお気に入り。「読んで」と持ってくるのは、この本が1番多かったそうだ。

 

ナツコちゃん・アキカちゃんが夢中になった本リスト

小3動物好きアキカちゃん ★はお気に入りNo.1


『オレときいろ』作/ミロコマチコ WAVE出版


『あくたれラルフのたんじょうび』作/ジャック・ガントス 絵/ニコール・ルーベル 訳/こみやゆう PHP研究所

 


『ゆかいなさんぽ』作・絵/土方久功 福音館書店

 


★『バムとケロのそらのたび』作/島田ゆか 文渓堂

 

小6ナツコちゃん好みの魔法や不思議な世界の物語 ★は特にお気に入り


『かさねちゃんにきいてみな』著/有沢佳映 講談社

 


『アナベル・ドールの冒険』作/アン・M.マーティン、ローラ・ゴドウィン 絵/ブライアン・セルズニック 訳/三原泉 偕成社

 


★『ココの詩』作/高楼方子 絵/千葉史子 福音館書店

 


★『十一月の扉』作/高楼方子 福音館書店

 


★『時計坂の家』作/高楼方子 絵/千葉史子 福音館書店

 

姉妹共通で好きな本


『オンネリとアンネリのおうち』作/マリヤッタ・クレンニエミ 絵/マイヤ・カルマ 訳/渡部翠 福音館書店

 

お父さんの読み聞かせ本


『ハリー・ポッターと賢者の石』作/J.K.ローリング 訳/松岡佑子 静山社

 

幼少期の姉妹のお気に入り


『まるてんいろてん』作/中辻悦子 福音館書店

 


『もこもこもこ』作/谷川俊太郎 絵/元永定正 文研出版

 


『もけらもけら』文/山下洋輔 絵/元永定正 構成/中辻悦子 福音館書店

 


『いろいきてる!』文/谷川俊太郎 絵/元永定正 福音館書店

 


『ピヨピヨスーパーマーケット』作/工藤ノリコ 佼成出版社

 


『だいこんだんめんれんこんざんねん』作/加古里子 福音館書店

 

おまけ・ナツコちゃんの好きな本


『長くつ下のピッピ』作/アストリッド・リンドグレーン 訳/大塚勇三 岩波書店

 


『やかまし村の子どもたち』作/アストリッド・リンドグレーン 訳/大塚勇三 岩波書店

 


『ニレの木広場のモモモ館』作/高楼方子 絵/千葉史子 ポプラ社

 


『ミリー・モリー・マンデーのおはなし』作/ジョイス・L・ブリスリー 訳/上条由美子 絵/菊池恭子 福音館書店

 


『獣の奏者』作/上橋菜穂子 絵/武本糸会 講談社青い鳥文庫

 


『いつも心に好奇心(ミステリー)!』作/はやみねかおる、松原秀行 絵/村田四郎、梶山直美 講談社青い鳥文庫

 

番外編・お父さん自身が読んだお気に入り


『できる・できないのひみつ』絵/内山安二 学研

 


『トン・チンカンの科学教室』監修/青木国夫 学研

 

取材・文/須藤みか
ノンフィクションライター。長く暮らした中国上海から大阪に拠点を移し、ライターとして活動中。現在は、「子どもと本」「学童保育」など子どもの育みをテーマにしたものや、「大阪」「在日中国人」「がん患者の就労」について取材中。東洋経済オンラインなどに執筆している。著書に『上海ジャパニーズ』(講談社+α文庫)他。2009年、『エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。地元の図書館や小学校で読み聞かせやブックトークも行っている。JPIC読書アドバイザー。小学生男子の母。

※学年は取材時のものです。

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