毎晩のオーディオブック習慣が小2の女の子を本好きに!【本好きキッズの本棚、見せて見せて!第7回】

ノンフィクションライター・須藤みかさんが日本全国の本好きの子どもたちの本棚や、本好きになった理由をひもとく連載。大好評の7回目は、大阪市・公立小学校2年 「オーディオブック派 ノブコちゃん」の場合です。親世代には「効果はあるのだろうか?」と気になる存在のオーディオブックをお母さんが上手に使いこなし、ノブコちゃんは見事に本好きキッズに成長しました!

母の「読み聞かせ」代行はオーディオブック。その効果は?

イラスト/カラスヤマ ミライ

読み聞かせ。親がしてあげるのが理想だとは分かっていても、現実はそうも言っていられないという家庭もあるだろう。家事もある。育児もある。仕事もある。疲れている時に無理して読んでも、寝落ちすることもあるだろうし、イライラが伝わって子どもたちも楽しくないかもしれない。

そんな時は無理しないで、「他力」を使ってしまうのもひとつの手だ。

在宅で中国語の翻訳をしているアキコさんは自分で読み聞かせもするが、ノブコちゃんが眠りにつく時間はオーディオブックを利用している。

5歳のときの「素話(すばなし)」がきっかけ

「きっかけは東京に住んでいたころ、上野にある国際子ども図書館で、『素話(すばなし)』を聞いたことでした」

素話とは、語り手が覚えたおはなしを子どもたちの目を見ながら、語って聞かせるもの。ストーリーテリングとも言われる。語るものは、日本や外国の昔話と童話だ。短いものなら5分前後からあり、長いものだと30分を超すものもある。図書館のおはなし会などで語られているのは、10分前後のものが多いだろうか。

絵本や紙芝居のように視覚に訴えるものがないので、耳で聴きながら子どもたちはイメージを膨らませていく。

素話を初めて聞いたのは、ノブコちゃんが5歳の時。理解できるのだろうかとアキコさんは半信半疑だったが、ノブコちゃんは楽しんでいた。

毎晩ふたつのお話しを聴く1人読みの後押しにも。

「小さくても、耳から聞いただけでおはなしをふくらませていく力があるんだと気づきました。素話はとても良いと思いましたが、自分でできるわけではありません。そこで、オーディオブックを使おうと思いました」

ノブコちゃんがよく聴いているのは、『お話、きかせて! 聴く絵本 むかしばなしベスト100』。日本や世界のむかしばなしが100話、収録されている。ひとつのおはなしの長さは5〜10分。毎晩、2つくらいおはなしを聴く。

オーディオブックを聴かせ始める前は毎晩、3冊ぐらい読み聞かせていたそう。

「忙しい時は夜半まで仕事を続けるので、オーディオブックの存在はありがたかったです。アナウンサーや声優、朗読家の方たちが情感豊かに語っていて、とてもいいですよ」

アキコさん家族は東京で暮らした後、夫の転勤で米国に1年滞在した。その後、大阪へ。

「アメリカは、子ども向けのオーディオブックコーナーが充実していました。オーディオブックは物語を体感するのにちょうど良いものですね。1人読みの後押しをするものだなと感じました」

米国にいたころ買った本も並ぶ。週末はインターナショナルサタデースクールに通っている。

文字は読めても本を読めるようになるとは限らない?

脇明子著『読む力は生きる力』(岩波書店)に、「小学生になって文字が読めるようになっても、自分で本を読めるようになるとは限らない」とある。

小学校に上がって、字が読めるようになったら自分で本が読めるでしょ、と大人は思いがちだが、“字が読めること”と“本を楽しんで読むこと”の間には大きな隔たりがある。だから、「橋渡しが必要になる」と翻訳者で英国ファンタジー研究者である著者は言う。

橋渡しのひとつとして勧めているのが、ストーリーテリングだ。

絵のない世界に最初はなじめなかったり、戸惑ってしまったりする子もいるが、続けていくうちにおはなしを楽しめるようになっていくようだ。思考力と想像力を育んでいく。

“音声本・聴かせ”3年後の今、ハマっている本は…?

オーディオブックを聴くようになって3年。ノブコちゃんはどんな本を読んでいるのか。

「ハッピーエンドもので、特別な力を持っている女の子が主人公の本が好きです。今は、『魔法の庭ものがたり』シリーズなど、あんびるやすこさんの本が大好きですね」

↑本棚の配置はこんなふうに・・・・

アキコさん自身、本が常に身近にある環境で育った。

「私が好きだったのは、『いやいやえん』や、『ふたりはいっしょ』などのかえるくんシリーズです。子どもにも勧めましたが、『ふたりはいっしょ』は気持ち悪いと言われてしまいました(苦笑)」

毎日1〜3冊、図書館の本や家にある本を読む。

読み聞かせを始めたのは、ノブコちゃんが1才前後。発語するころだった。小さい頃のノブコちゃんのお気に入りは、『じゃあじゃあびりびり』や、せなけいこさんの『あーんあん』『きれいなはこ』のほか、ノンタンシリーズなど。週に3回は図書館に行き、毎週1回あるおはなし会の常連でもあった。

赤ちゃん時代の本は30冊ほど寄付したが、このお気に入りの本はノブコちゃんが「ダメ!」と言った。

「どこへ行ってもお金がかかるので、図書館にはよく行きましたね。近所の図書館には、外国絵本のコレクションもあったので、それも楽しみでした。アメリカでも図書館に行っていました。絵がきれいだからと好きになった『マドレーヌ』シリーズもアメリカの図書館で出会いました」

 

オーディオブックを利用しつつも、アキコさんは今もノブコちゃんと妹を連れての図書館通いを続けている。図書館から帰ってくると、借りてきた本の読み聞かせをする。

最近、図書館で借りてきたもの。紙芝居は必ず借りる。

お姉ちゃんが妹に読み聞かせ会を開催

最近は、ノブコちゃんが妹をお客さんにして、おはなし会をするようになったそう。

「妹は正座をさせてられて聞いています(笑)。『見ちゃだめ』と言われているので私は耳で聞いているだけですが、まず『はじめるよ、ったらはじめるよ』の手遊びをして、紙芝居は声色をかえて読んでいます」

ノブコちゃんが本を読まない日はない。図書館で借りてくる本や家にある本を繰り返し読んでいる。絵本もふくめて1〜3冊は読む。「私にしかられた時やしょぼんとしている時なども、『来ないで』と言って、いつの間にか本を読んでいますね」

読書記録を続けるのは大変なので、アキコさんは貸出シートをノートに貼る。幼稚園年長の頃のノブコちゃんの感想。

書店にもよく行く。子どもたちが欲しいと言った本は基本的に買うが、例外もある。小学生の間で大人気の科学マンガ系のシリーズなどは「図書館で借りてもいいよね」と促すそう。

いい「本」選びは難しい。いつも情報収集を

ノブコちゃんは、本好きな子どもに育っている。うらやましい限りなわけだが、アキコさんにも悩みはある。

「すべての世界を親が見せられるわけではありませんが、本ならばいろんな世界にふれることができます。だから好きな本を読んでほしい一方で、単純な娯楽としての本だけではなく彼女の育ちに役に立つような本も読んでほしいと思っています。でも、絵本の情報はたくさんありますが、児童書は何がいいのか分からなくて…。探すのが難しいですよね。

ママ友との情報交換でも、本の話はなかなか出てこないですからね」

たしかに、そうなのだ。絵本ならパラパラと見れば、どんな内容か分かるが、児童書となると学年が上がるにつれページ数も増えていく、親が目を通すのにも限界がある。

そこでアキコさんが頼りにしているのが、

★雑誌なら季刊誌の『この本読んで!』。新刊絵本の100冊紹介は読み応えがあるし、児童書の紹介コーナーもある。

★サイトでは絵本ナビ https://www.ehonnavi.net

教文館ナルニア国 https://www.kyobunkwan.co.jp/narnia/、

国立国会図書館国際子ども図書館 https://www.kodomo.go.jp

 

だという。

最近、もうひとつ気になることがある。ノブコちゃんの5歳の妹が、あんびるやすこさんの本を読み始めたという。

「お姉ちゃんが大好きだから、真似しているんだと思うんです。先を読みたいという欲が出てくるのは悪いことではないですが、さすがにちょっと早いですよね。この年齢にあったもの、やさしい語りのものにふれてほしいと思うんですが…」

本好きの子どもを持ったら持ったで、悩みはつきないのだ。

ノブコちゃん姉妹が夢中になった本はこちら

▼オーディオブック

『お話、きかせて! 聴く絵本 むかしばなしベスト100』

▼同種のオーディオブックが小学館からも!

『心やさしく賢い子に育つみじかいおはなし366』

https://audiobook.jp/product/242238  / audiobook.jp

「Google Play」「Apple Book」「Audible」でも販売

 

『ハーブ魔女のふしぎなレシピ―魔法の庭ものがたり』作・絵/あんびるやすこ ポプラ社

幼少期のベスト5

『じゃあじゃあびりびり』作・絵/まついのりこ 偕成社

 

『あーんあん』作・絵/せなけいこ 福音館書店

『きれいなはこ』作・絵/せなけいこ 福音館書店

『ノンタンおやすみなさい』作・絵/キヨノサチコ/作 偕成社

『げんきなマドレーヌ』作・画/ルドウィッヒ・ベーメルマンス/作・画 訳/瀬田貞二 福音館書店

妹に聴かせる紙芝居

紙芝居『にんぎょひめ』原作/アンデルセン 文/香山美子 画/工藤市郎 教育画劇

紙芝居『くじらなぜなぜしおをふく』作・画/山本省三 教育画劇

図書館の今のお気に入り

『マンガとレシピでHAPPYクッキング 1巻 はじめてのおうちごはん』原作/粟生こずえ 学研教育出版

『ともだちひきとりや』作/内田麟太郎 絵/降矢なな 偕成社

『はちかづきひめ -御伽草子より』再話/長谷川摂子 絵/中井智子 福音館書店

季刊誌『この本読んで!』出版文化産業振興財団発行 メディアパル発売

 

取材・文/須藤みか
ノンフィクションライター。長く暮らした中国上海から大阪に拠点を移し、ライターとして活動中。現在は、「子どもと本」「学童保育」など子どもの育みをテーマにしたものや、「大阪」「在日中国人」「がん患者の就労」について取材中。東洋経済オンラインなどに執筆している。著書に『上海ジャパニーズ』(講談社+α文庫)他。2009年、『エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。地元の図書館や小学校で読み聞かせやブックトークも行っている。JPIC読書アドバイザー。小学生男子の母。

※学年は取材時のものです。

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