妊娠してから徐々に夫婦生活や夫婦の関係性に変化がでてくることはめずらしくありません。妊娠・出産を経て女性の心と体はホルモンの影響もあり、日々追われる子育ての疲れで体力も奪われがちに。産後は子供中心の生活になり、ライフスタイルが大きく変わってくるのが現実です。
夫婦間のコミュニケーションやスキンシップは夫婦関係に大きく影響する要素のひとつであるといわれています。そこで今回は、産後の夫婦生活についてママパパにアンケートを実施。なかなか人に聞きずらい産後の性行為について体験談を教えてもらいました。
目次
産後のセックスはいつからしていいの?
産後の性行為はいつから再開していいのでしょう。再開していいタイミングや一般的にいわれるセックスレスの定義についてみていきましょう。
1ヶ月健診以降、体の様子をみて
出産後、子宮や膣が回復したら性交を再開してもいいとされていますが、産後の体の回復には個人差があります。お産の状況にも関係しており、会陰切開や帝王切開で分娩した場合などは産後4~6ヶ月を過ぎても体の痛みがつづくこともあり、産後回復に時間がかかることもあります。まずは、産後の1ヶ月健診でかかりつけの医師に相談してみるのがいいでしょう。
また、産後の体の回復が良好でも、体と心のバランスがとれて初めてセックスで満たされた気持ちや感覚が得られるもの。昼夜問わず母乳やミルクによる授乳や、個人差はありますが産後のホルモンバランスの変動で、忙しいママの心のバランスが整うまでしっかり待ってあげる必要があります。
そして妊娠後期と同様に、産後のセックスは、ママの体の負担がないソフトなセックスから再開しましょう。無理に挿入までいかなくても、産後の女性の体を包み込む様な優しい肌の触れ合いや、思いやりのある心と体の重ね合わせや、育児に主体的に寄り添う夫の姿勢が、母親の体内で分泌される「オキシトシン」を「他者への攻撃性」の働きから「他者への愛情を強める」方向に働かせることが知られています。
物理的な育児の分担はもちろんのこと、ママの気持ちに寄り添い、共感してあげることで、ママがリラックスした副交感神経が優位な状態のときに、オキシトシンは愛情を強める方向に働きます。寄り添いや思いやりの気持ちがあることで、話し合いという心の交流だけで満たされ、自然と体の交流への触れ合いやセックスへとコミュニケーションを深めていくことができます。
また産後のエストロゲンの減少の程度は、個人差があります。エストロゲンの分泌が増加する時期も人により異なります。とくに完全母乳育児のママは、一般的に卒乳まで生理が再開しないことが多く、その時期までエストロゲンの分泌も低下しています。
エストロゲン減少による気になる症状
・産後の抜け毛・薄毛などの髪の毛のトラブル
・手足や顔などのむくみ
・疲労しやすい
・精神的不安定やうつ症状
・肌荒れ
女性ホルモンのバランスは産後の性欲にも影響してきます。産後のエストロゲン増加の時期は、個人差がありますが、可能な限りエストロゲンを増加させるような「朝日を浴びる」「善玉コレステロールの原料となる栄養素やビタミン豊富な緑黄色野菜、和食を中心とした食事を心がける」「血行を促す軽い運動を行う」「自分にも周りにも優しいスキンシップ」などを試してみるのもいいでしょう。
いつまでないとレスになる?
一般的なセックスレスの定義は、セクシュアルコンタクトが1ヶ月以上ない場合をさしています。しかし、セックスレスだからといって夫婦仲が必ずしも悪いというわけではありません。さまざまな夫婦のかたちがあり性行為がなくても夫婦仲が良好のカップルもいます。その一方、セックスレスが原因で不満や夫婦仲の関係が悪化してしまうケースもめずらしくありません。
産後のセックスに痛みや出血の心配はない?
産後のママの中には「性交痛」に悩む人も少なくありません。2人目の子供がほしいけれど、痛みが怖くて性行為に抵抗を感じるという声も。では、産後の性行為において知っておくべき注意点をみてみましょう。
セックスを控えた方が良い場合
出血や痛みを感じる場合だけでなく、まだ体の回復が十分でない、性交に対して不安に感じる場合も性行為を控えた方がいいでしょう。特に育児で心も体も疲れている産後直後は性行為に抵抗を感じる女性は少なくありません。
お産がスムーズに行えるよう関節や靱帯を柔らかくするために分泌されるリラキシンにより、骨盤が不安定な時期は、体力的にも精神的にも疲労がたまりやすいです。
また産後の母乳をあげているママは、乳汁分泌時に「プロラクチン」が分泌され、女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌が減っているため、性欲を感じにくくなっています。産後は女性ホルモンの分泌が激変する時期だからこそ、夫婦ともにそのことを事前に知っておくと、最適な再開のタイミングを見つけやすくなります。
また「会陰切開や膣壁裂傷の傷や痛みは、刺激を与えても大丈夫だろうか」「膣のゆるみは大丈夫だろうか」という不安な気持ちは、ママ自身が自分でもしっかり認識して我慢しないことが大切です。
さらに、生理が再開していなくても排卵している可能性もあるため、家族計画をきちんと立てて産後に適した避妊をする必要があります。ピルは授乳の有無によって服用できる時期が異なるため医師へ相談するようにしましょう。
痛みや出血の原因
膣がまだ完全に回復していない産後数カ月は、膣内の粘膜が弱いため性行為で傷つきやすい状態であり、出血をともなうことがあります。さらに、授乳中は女性ホルモンの影響によって膣内の粘膜が薄くなり痛みがでやすくなることも。産後のママの心と身体の変化を理解してもらえるようきちんとパートナーと話し合ってみるようにしましょう。
痛みがあるときの対処法
出産後はエストロゲン減少の影響で膣内の潤いが不十分になることもあり、性交痛を感じることもめずらしくありません。薬局で購入できる膣潤滑剤などを利用して外陰部を潤して痛みを緩和することが可能です。40代後半ぐらいから始まる更年期になると膣が乾燥しやすくなるなどの症状がでることもあり、婦人科で治療を行う方法もあります。痛みが強い場合や頻繁に痛みを感じる場合は医師に相談するようにしましょう。
産後セックスはいつから再開した?【ママパパの体験談】
出産後、性行為を再開した時期と体験談を3~5歳のお子さんをもつママパパに教えてもらいました。
Q.産後セックスを再開したのはいつごろですか?
今回のアンケート結果によると、産後に性行為を再開した時期で一番多くみられた回答は「産後1年後(27%)」でした。「1ヶ月健診後」、「2~3ヶ月後」、「産後6ヶ月後」はそれぞれ15%未満という結果になり、産後1ヶ月~6ヶ月の間ではばらつきがみられました。さらに、産後に性行為を再開していないとの回答は、27%を占めていました。
再開のきっかけは?セックスの誘い方【体験談】
妊娠~出産するまでの間に夫婦生活が変わってくれるのは自然なことです。しかし、なかなか産後に性行為を再開するきっかけがつかめないままであることもよくあるようです。
そこで、ママパパに産後に性行為を始めたきっかけについて教えてもらいました。
『2人目が欲しかったので』
お互いに話し合ってきちんと将来の家族計画をすることは大切なことです。2人目を計画して夫婦で話し合ってから再開したという意見が多数見られました。
『産後の体調も落ち着いてきたので』
産後の体の回復には個人差があり、1ヶ月健診を過ぎてもまだ体が十分に回復ができていないと感じることもあります。パパに理解してもらい、ママ自身が体調をみながらタイミングを見計らうのがいいようですね。
『授乳が落ち着いたタイミングで』
授乳期間中は体力も奪われ、疲れやすくなるものです。授乳が落ち着き体力が回復した時期をきっかけに夫婦生活も再開したという声もいくつかあがりました。
『旦那からストレートに言われて』
一番多かった回答でもあったのが、「夫に誘われて再開した」でした。産後の夫婦生活はパートナーとお互いに思いやり理解し合うことが大切ですね。
産後、セックスレスになった原因は?【ママパパの体験談】
今回のアンケート結果でも約30%の3~5歳のお子さんをもつママパパが産後性行為を再開していないと答えており、セックスレスとなっている夫婦も少なくはないようです。妻側・夫側の意見にわけてセックスレスとなった原因をそれぞれみていきましょう。
セックスレスの妻側の理由
まずは、セックスレスになった妻側の意見を聞いてみましょう。
『育児が忙しく疲れている』
産後は育児に疲れ、体力も低下しがちです。寝かしつけているときに子供と一緒に寝落ちしてしまう日も多くなり、乳幼児の子育て期は時間があれば少しでも寝たいというママが多いようですね。
『子どもが寝ているので気分になれない』
子供が近くにいるのに性行為などできないというママの意見も。パパとの考え方の違いもでてくるようです。
『元々好きじゃない』
もともと性行為を好ましく思っていないという意見もありました。
『タイミングがない』
子供が生まれて睡眠サイクルが夫婦で異なるようになり、タイミングが合わなくなったとの声もありました。子供が夜泣きをするたびに起きるという生活スタイルが続く中、心にも時間にも余裕がなくなってしまったとも。
『そもそもセックスレスだった』
いろいろな夫婦のかたちがあり、性行為がなくても夫婦関係が良好な場合も。セックスレスが原因で不仲となっていなのなら問題がないことももちろんあるようです。
セックスレスの夫側の理由
では、夫側はどのような理由でセックスレスになったと感じているのでしょう。妻側の意見との違いをみていきましょう。
『育児をしている妻に性欲が湧かなくなった』
少数でしたが、子供ができてから妻がお母さんになり、女性として見られなくなったという夫側の意見がみられました。
『子作り以外に必要ない』
子作り以外で性行為の必要性を感じないという意見も。妻側の意見でもありましたが、夫婦での性行為の必要性を感じないという考えもあるようです。
『断られている』
妻から断れ続けられているためセックスレスになったという夫側の意見もみられました。日々子育てに追われているママは子育てが中心となり、ママが拒否してしまうこともしばしばあるようです。セックスレスが原因で夫婦関係に亀裂が入らないよう、じっくり話し合ってみるのが大切ですね。
『誘いづらくなった』
誘いたいけど、産後の体の回復具合が十分でないため誘いづらくなったというケースも。産後の体を気遣ってくれる夫の思いやりに妻も感謝しているはずです。心のすれ違いとならないよう、感謝の気持ちを伝えるなどコミュニケーションを忘れずとることも重要ですね。
セックスレスで離婚の危機も…
セックスレスが原因で離婚の危機を感じたことがある夫婦もいるようです。すれ違いが原因で離婚とならないように、やはり大事なのは日々夫婦でお互いの気持ちを伝え、尊重し合える夫婦仲を築くことのようですね。
子育て期だからこそより深い夫婦の絆を
産後の夫婦生活において重要なポイントは、夫婦でよく話し合いお互いが理解し合うことです。産後のママの体の回復には時間がかかることもあり、多くのママが産後の性行為に対して不安を感じているものです。そのことをパパにも理解してもらえるよう、夫婦でよく話し合うことが大切です。産後の子育て期により一層夫婦の絆を深め、お互いを尊重し合える夫婦関係を築けるよう、束の間の夫婦の時間をひとつひとつ大切にしていきたいですね。
文・構成/HugKum編集部