日本語を使いこなすに当たって、助詞の正しい使い分けは必要不可欠です。改めて助詞の種類・役割・性質について詳しく学び、日本語への理解を深めましょう。子どもに助詞の使い方をうまく伝えられる、おすすめの方法についても紹介します。
目次
子どものうちから「てにをは」を学ぼう
子どもは大人が驚くほど学ぶ力を持っています。乾いた植物が水を吸い上げるように、物事の考え方やルールをぐんぐん吸収していくのです。この貴重な時期に正しい助詞を学ぶ重要性について見ていきましょう。
文法は自然と学ぶもの
人は普段の生活の中で見聞きしたものからも、自然に文法を学んでいます。言語を習得するための学びは生まれる前から始まっていて、聴覚が完成した頃から言葉を音として捉えているのです。
日常生活の中からどれだけのことを吸収しているのかは、乳幼児期の成長を見ているとよく分かります。
単語が出始めたと思ったら、あっという間に2語文・3語文を話し、気付けば助詞まで使い始めたことに驚いた人も少なくないでしょう。
もちろん、これは親が文法を教えたからではありません。子ども自身が親をはじめとする周囲の人々が使う言葉を覚え、さらに応用させていったのです。平均として、義務教育が始まる頃にはほとんどの助詞を使えるようになります。
コミュニケーションが重要なポイント
近年、子どもの国語力の低下が度々話題になります。しかし、子どもだけではなく、完全に正しい日本語を話すのは大人でも難しいと感じる部分もあるのではないでしょうか。
助詞を正しく使い分けられるようになるには、「正しい言葉を何度も繰り返す」ことが重要です。さらにいえば、日本語に限らずインプットだけではなくアウトプットが多いほど言葉は発達していきます。
正しい日本語をインプットするには良質な本を読むのが近道ですが、使いこなすには学んだ言葉をアウトプットする場が欠かせません。他人とコミュニケーションを取る中で試行錯誤し、知識を固めていくのです。
こうした何気ない訓練を積み重ねることで、正しくない助詞の使い方を「何となく気持ち悪い」と感じるようになる「言葉のセンス」が磨かれていきます。
学び方、教え方はどうすればよい?
質のよい本を与えたり、正しい言葉遣いを聞かせたりすることで、「読む・聞く」力は養えます。子どもにさらによい経験を積ませるためには、親とのコミュニケーションを通してアウトプットの機会を与えてあげるとよいでしょう。
ここでは、親と子どもが一緒にできる助詞の習得方法を紹介します。
言葉を区切る練習から始める
文法を自然に覚えてきたため、多くの子どもは助詞の存在をはっきり理解していません。「わたしはお母さんとご飯を食べた」という文を読んで、どれが助詞なのか分からないという子どもがほとんどでしょう。
そこで、まずはほかの品詞と助詞を区別させることから始めます。おすすめの方法は、「/」を入れて文を単語レベルで区切る練習です。
先ほどの例文でいえば「わたし/は/お母さん/と/ご飯/を/食べ/た」というふうに区切ります。練習を繰り返すうちに、「文章には物の名前や動作を表す単語以外の語がある」と、子どもに意識させられるはずです。
間違い探しなどゲーム感覚で
助詞の正しい使い方を学ぶには、正しい文章と誤りのある文章を見比べる「間違い探し」がぴったりです。
例えば「わたしわお母さんとご飯お食べた」という文を書いて渡し、子どもに間違っている部分を指摘してもらいます。間違い部分を見つけやすいように、例文は国語の教科書の文章を使うとよいでしょう。
間違い探しに慣れてきたら、今度は子どもにわざと助詞を取り違えた文章を作ってもらいます。初めは1人で作るのは難しいので、お母さんが一緒に作り、お父さんに間違い探しをしてもらうという方法がよいかもしれません。
長めの文章を書く練習をする
助詞の使い方や短文作りに慣れてきたら、長めの文章を書く練習を始めます。一から創造するのはハードルが高いので、何かテーマを与えてあげるとよいでしょう。
「今日学校でびっくりしたこと」や「友達と何をして遊んだのか」といったことだと書きやすいですね。やがて「人に伝わるように書くこと」を意識できるようになるため、総合的な国語力アップも期待できます。
ゲーム感覚で楽しく学ぶなら?
勉強するというと抵抗を感じる子どももいるかもしれません。勉強に乗ってこないときは、もっとゲーム要素のある言葉遊びで子どもの興味を引くとよいでしょう。自然に助詞の使い方をマスターするのに役立つ遊びを紹介します。
簡単にできる「しりとり」
言葉を覚えるのにぴったりのゲームといえば「しりとり」です。直接助詞の使い方を覚えるわけではありませんが、言葉の基本でもある語彙(ごい)を増やせます。
知識の増えてきた年代の子どもなら、特別ルールを適用した「助詞つなぎの言葉」のみでのしりとりもおすすめです。
「卯の花」のような有名な商品名や「寝耳に水」のような慣用句など、固有名詞として認識されているような言葉のみでしりとりするのです。助詞つなぎの言葉を探すのも、助詞を意識するのに役立ちます。
絵カードもおすすめ
文字ばかりだとやる気をなくしてしまう子どもには、「絵カード」を用意してあげるとよいでしょう。
「かるた」で読み上げた言葉と絵を結びつけるのは、助詞の使い方をインプットする方法の一つです。聞く・見るだけではなく、同時に記憶する・探すといった動作も必要なので集中力も養えます。
絵を見てどんな状況なのか言葉で説明させる方法もおすすめです。文章を作るにはストーリー性があった方がよいので、4コマ漫画を用意しましょう。「誰がどこで何をした」というように、助詞を含めた文の構成を学べます。
辞書を引くことを習慣づけてみても
言葉に興味を持つ第一歩として「辞書引き」を習慣にしましょう。赤ちゃんが1年以上かけて使える言葉を蓄えていくように、子どもは語彙(ごい)を増やしていくことが文章力につながります。
「これはどういう意味?」と聞かれたら、一緒に辞書を調べるようにしましょう。調べ方が分かるようになったら1人で辞書を引かせます。
開いたページに付箋を貼り、日付と調べた言葉をメモしておくと達成感が得られやすいでしょう。使用する辞書は、ふりがなやイラストを多用した分かりやすい説明が加えてあるものがおすすめです。
ちょっと本格的に、助詞の種類
助詞は大きく4種類に分けられます。学び始めたばかりの子どもにはまだ必要のない知識ですが、教える側である大人はしっかりと種類を把握しておいた方がよいでしょう。それぞれの助詞について詳しく解説します。
「が」「の」など格助詞
「わたしが食べた」の「が」のように、名詞・代名詞・数詞などの体言に付く助詞を「格助詞」といいます。
主な格助詞は「が・の・を・に・へ・と・より・から・で・や」の10種類です。それぞれの格助詞の働きは次の通りです。
・が・の:主語になる
・の:連体修飾語になる
・を・に・へ・と・から・より・で:連用修飾語になる
・の・に・と・や:並立関係
・の:体言の代用
前に体言が付いていれば、それは格助詞ということです。複雑な構成の文章は例外ですが、日常生活で使う分にはこれだけ覚えておけば十分です。
「でも」「から」など接続助詞
「寝坊したけれど、怒られなかった」の「けれど」のように、動詞・形容詞・形容動詞といった用言のほか、助動詞に付いて、文をつなぐ役目を果たす助詞を「接続助詞」といいます。
具体的には「けれど(けれども)・と・ても・から・し・が・たり・なり・つつ・ものの・て・ながら・ば・のに・ので・ところで」などが接続助詞です。
接続助詞には、順接・逆接・並立・補助といった役割があります。「晴れたから、外で遊ぶ」の「から」は順接、「晴れたけど、家で遊ぶ」は逆接の接続助詞です。
「サッカーも好きだし、野球も好きだ」の「し」は並立関係、「試しに食べてみよう」の「て」は補助の役割を果たしています。
「など」「しか」など副助詞
「りんごなどのフルーツ」の「など」や、「お菓子しか食べない」の「しか」のように、直前の語に意味を加える働きをする助詞を「副助詞」といいます。
例に挙げた「など」は例示、「しか」は限定の意味を加える副助詞です。そのほかにも、強調・類推・並立・添加・程度・不確実といった用法もあります。
副助詞は体言や用言だけではなく、助動詞や助詞などさまざまな語に付くのが特徴です。ほかの助詞にくっついたり、副助詞が続けて二つ使用されることもあります。
そのため、どれが副助詞なのか見分けるのが難しいかもしれません。まずほかの助詞ではないか考え、どれにも当てはまらなければ副助詞だと判断するとよいでしょう。
「~ね」「~かしら」など終助詞
「きっとそうね」の「ね」や、「明日は雨かしら」の「かしら」など、主に文末に付けてニュアンスを加えるのが「終助詞」です。文末以外にも、「今日はね、日曜日だよ」の「ね」のように文中に使用されることもあります。
「な・や・ぞ・わ・こと・か・ね・ぜ・とも・かしら・の・さ・よ・もの」といった語があり、例文の「ね」は同意、「かしら」は疑問の意味です。そのほか、反語・禁止・感動・勧誘・確認・呼びかけといったさまざまな用法があります。
なお、文中に付くと説明した終助詞を、「間投(かんとう)助詞」として終助詞と分けて考える場合もあると留意しておきましょう。
助詞の意味、性質をチェック
ここでは、改めて助詞が果たす役割や特徴について解説します。また、助詞と紛らわしい助動詞との見分け方についても知っておきましょう。
文節を作るための付属語
助詞は、名詞や動詞など単体でも意味を持つ語に付いて文節を作る「付属語」です。単体では使えません。しかし、助詞は日本語にとってとても重要な品詞です。
助詞を抜いてしまうと「わたし、お母さん、ご飯、食べる」のように、何となく意味は分かるものの、ギクシャクとした日本語になってしまいます。複雑な文章になると、ほとんど意味が取れなくなってしまうでしょう。
また、挿入する助詞を変えるだけで意味も一変します。「わたしはお母さんとご飯を食べた」「わたしのお母さんにご飯を食べさせる」など、助詞は、直前の語に意味を添えたり、文節同士の関係性を表したりするのです。
活用ができない単語
助詞はどこでどのように使われても語形が変化することはありません。助詞と同じように直前の語に付いて意味を加える品詞のうち、活用するものは「助動詞」と呼ばれます。
さきほどの例でいうと「わたしのお母さんにご飯を食べさせる」の「させる」は助動詞です。活用するため、文脈によっては「させれ」「させろ」といったふうに語形が変わります。
助詞と助動詞を区別するのは「活用があるかないか」の一点のみです。
番外編 〜英語には助詞がない?〜
「英語には助詞がない」と習ってきた人は少なくありません。では、英語ではどのように細かな意味の違いを表しているのでしょうか。日本語の助詞に当たる部分を、英語は何でカバーしているのか解説します。
日本語の助詞に相当する言葉はない
英語圏の人が日本語を勉強したとき、助詞の使い方につまずく人は多いでしょう。なぜなら、英語には明確に助詞として分類される品詞がないからです。
逆に、日本人が一人称の「わたし」に相当する英語の「I・my・ me・ mine」を勉強するとき、訳語として「I=わたしが・わたしは」「my=わたしの」「me=わたしに・わたしを」「mine=わたしのもの」と助詞の意味を含めて覚えます。
代名詞以外にも、「If it rains tomrrow, I will stay home.(明日雨なら家にいる)」や、「I wonder if he will come.(彼は来るかしら)」の接続詞ifや動詞wonderのように、英語では「単語そのものに助詞の意味が含まれている」のです。
なお、be動詞や前置詞など、単体で日本語の助詞のような役割を持つ単語もあります。
英語は語順が重要なポイントになる
日本語は主語や動作の対象などを助詞によって表現します。一方、英語はそれを語順によって表現する言語です。次の例文を見てみましょう。
○She bought her son a toy.(彼女は息子におもちゃを買った)
×She bought a toy her son.(彼女はおもちゃに息子を買った)
○She bought a toy for her son. (彼女は息子におもちゃを買った)
主語は必ず先頭に、次に動詞を置き、対象が必要なときは3番目に目的語や補語が置かれます。修飾語が入ることもありますが、倒置などの例外を除いて文章を構成する基幹部の語順が変わることはありません。
助詞の役目を理解して美しい日本語を
言葉を学んでいる途中の子どもにとって、助詞はとても理解するのが難しい部分でしょう。無意識に使い分けている事柄を分かりやすく説明するには、教え方に工夫が必要です。
あまり「勉強」を意識させてしまうと、国語が苦手な子どもは消極的になってしまうかもしれません。そんなときは、ゲーム感覚で楽しく文法を学ぶ勉強方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。
助詞を正しく使い分けることが、日本語をスムーズに操る要となります。いつ子どもに質問されてもよいように、助詞の役割について再確認しておきたいですね。
文・構成/HugKum編集部