乳腺炎にはマッサージが有効? 自己流は注意!メリット・デメリットから治療法まで【助産師監修】

「おっぱいが痛い」、「胸が熱い感じがする…」このような症状は授乳中のママによくあることですが、もしかするとそれは「乳腺炎」かもしれません。そこでこの記事では、乳腺炎の症状や原因、治療法をはじめ、マッサージが乳腺炎予防にいいといわれる理由などを解説していきます。

その胸の痛み、乳腺炎かも?

乳腺炎の予防にはマッサージがいい?

乳腺炎についてどんなことを知っていますか。乳腺炎を予防するにはマッサージがよいといわれていますが、本当でしょうか。これから、乳腺炎とマッサージについて説明していきましょう。

乳腺炎とは?

「乳腺炎」とは、母乳をつくり、分泌する「乳腺」が何かしらの理由で炎症を起こしている状態のことをいいます。母乳育児を行なっているママに起こりやすい病気です。

原因と種類

乳腺炎には「うっ滞性乳腺炎」と「化膿性乳腺炎」の2種類あります。

うっ滞性乳腺炎

「うっ滞性乳腺炎」は、母乳の通り道である乳管が詰まることにより、母乳が乳房内に溜まることで起きます。原因としては、

  • 乳管が十分に開いていないこと
  • 赤ちゃんの母乳を飲む力がまだ弱いこと
  • 授乳や搾乳の間隔が空いてしまい母乳がたまりやすくなった状態

などが考えられます。

化膿性乳腺炎

「化膿性乳腺炎」は、うっ滞性乳腺炎が進行し、乳頭や乳輪の傷口などから細菌が入り、乳管や乳腺組織内に細菌が広がって炎症が起きた状態のことをいいます。

主な原因は、赤ちゃんが母乳を吸うときに乳頭の含み方が浅かったり、赤ちゃんが乳歯で乳首を噛んだりしたことで傷ができて、そこから黄色ブドウ球菌、レンサ球菌などの細菌が侵入することです。

症状

乳腺炎が起きるとどのような症状が現れるのか、見ていきましょう。

熱感

乳房が熱を帯びることがよくあります。ひどくなると、高熱が出たり、悪寒を感じることもあります。

痛み

乳房全体、またはしこり部分が痛いと感じる人が多いです。

赤み・かゆみ

胸全体が赤くなったり、かゆみを感じることもあります。

しこり

胸にしこりが出て、痛みを伴うこともあります。初期段階ではしこりが出るだけで、痛みはない場合もあります。

そのほか:頭痛や体の節々が痛んだり、体の倦怠感を感じる人もいます。

【医師監修】乳腺炎とは?初期症状や対処法と予防法、かかってしまったときの治療法まで解説
乳腺炎とは 出産して母乳育児を行っているママに起こりやすい病気のひとつが「乳腺炎」です。乳腺炎は、なんらかの理由で乳腺が炎症を起こしてしま...

マッサージが乳腺炎予防にいいといわれる理由

乳腺炎を予防するには、マッサージを行うとよいといわれています。しかし、マッサージにはメリット・デメリットがあるので、チェックしておきましょう。

乳腺炎予防のマッサージのメリット・デメリットとは?

メリット

乳腺炎の原因のひとつは、乳房内に母乳が溜まりすぎていることです。ですので、乳房が硬い場合はマッサージで乳房をほぐして授乳や搾乳をすれば、排乳しやすくなることがメリットといえます。また、乳頭や乳房のマッサージによって、授乳と同じように幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」を分泌でき、ストレスを緩和したり、癒し効果があるといわれています。

デメリット

デメリットは、誤った方法でマッサージすると逆効果になってしまうことや、すでに乳腺や乳房に炎症が起きている場合は、マッサージすると悪化する可能性もあります。

乳腺炎の予防に自己流マッサージは危険

乳腺炎の予防にマッサージは効果的なのですが、自己流でやるのはNG。自己流でマッサージすると、もし乳腺炎にかかっていた場合は、症状を悪化させる可能性があります。必ず医師や助産師の指導のもと、行うようにしましょう。

マッサージ後に熱感・発熱

自己流のマッサージを行ったあとに、熱感が現れたり、発熱することもあります。これは、誤ったマッサージによって炎症を悪化させていることが原因かもしれません。

痛みが増す

自己流のマッサージで力加減がわからず、強めにマッサージしたことにより、痛みが増すこともあります。

しこりができてしまった

しこりができることもあるようです。これは、正しいマッサージができていないため、乳腺炎予防として効果的ではなかったことが原因と考えられます。

乳腺炎になったら

もし、乳腺炎になったらどうしたらよいのでしょうか。病院に行くタイミングや食べ物について解説します。

病院に行くタイミングは?何科へ?

乳腺炎になったら、できるだけ早く病院で診察してもらいましょう。早く病院へ行くことで、症状の悪化を抑えられます。

タイミングとしては、しこりが取れない、詰まりが取れない、38度を超える発熱がある、寒気を感じるなどの体調不良が現れた場合に病院へ行きましょう。受診する科は、産婦人科または母乳外来などがよいでしょう。

熱がある場合は、抗生物質など投薬が必要なことが多いため、医師の診察を受けましょう。助産師が勤務している場合は、必要に応じてマッサージをしてくれます。助産院では薬は処方できないため、注意が必要です。多くの場合は、授乳を続けたまま治療できます。

食べ物は?

乳腺炎になったときに大切なのは体を冷やさないようにすることです。食事や飲み物は温かいもの摂るようにしてください。

また、乳房に溜まった母乳を出すことも重要なため、授乳や搾乳も行ってくださいね。乳房は血液でできていますので、血行をよくするように水分をたっぷり摂りましょう。

乳腺炎の治療法

乳腺炎の治療法について解説していきます。

治療法1:薬による治療

乳房の痛みや張りがひどい場合には、消炎鎮痛剤や抗生物質が処方されます。また、化膿性乳腺炎の場合も同様です。乳腺炎で処方されるおもな薬には、

消炎鎮痛薬

カロナール(アセトアミノフェン)、イブプロフェンなど

抗生物質

セフゾン、メイアクトなど

があります。いずれの薬も、授乳中や妊婦の方でも服用することができます。

治療法2:膿を取り除く手術

化膿性乳腺炎でしこりがとれない場合は手術をすることもあります。手術の内容は、一部の皮膚を切開し、膿を取り出します。

漢方薬の服用は慎重に

乳腺炎で処方される薬のひとつに「葛根湯」があります。葛根湯は漢方薬で、母乳の出がよくなる作用や、うっ滞改善の効果があるとされています。

しかし、漢方薬は副作用が少ないイメージがありますが、妊娠中の服用は安全性が確立されていないともいわれています。また、妊娠中ではなくても、自己判断で服用しないようにし、必ず医師の診断を仰ぐようにしてください。

乳腺炎になったら病院へ

乳腺炎の痛みはママにとってとてもつらいものです。また、痛みによって思うように授乳ができなくなり、ストレスが溜まることもあります。乳腺炎になったら、なるべく早めに病院を受診し、治療するようにしてください。また、乳腺炎を予防するために正しいマッサージをすることも忘れずに。

記事監修

Kawai
助産師・看護師・保育士
河井恵美

看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。様々な診療科を経験し、看護師教育や思春期教育にも関わる。青年海外協力隊として海外に赴任後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。現在はシンガポールの産婦人科に勤務、日本人の妊産婦をサポートをしている。また、助産師25年以上の経験を活かし、オンラインサービス「エミリオット助産院」を開設、様々な相談を受け付けている。

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文・構成/HugKum編集部

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