国会とは、いったいどのような役割を果たしているのでしょうか? どのような人たちが働いていて、どのような仕事をしているのか、重要なポイントをわかりやすく解説します。参議院・衆議院の違いや、国会の種類についてもおさらいしておきましょう。
国会ってどんなところ?
国会とは、日本全体で何か決め事をするときに「最も強い権力を持つ機関」であって、日本で唯一「法律をつくることを許された機関」であります。
まずは、どのような人たちが集まり、どこで話し合いをしているのか、国会の基礎知識について確認しましょう。
国民の代表が集まっている
国の大事な話し合いに参加するのは、「国民によって選ばれた代表者」です。国会で決められたことに全国民が従うことになりますが、主権が国会にあるということではありません。
国を動かす権利は、国民一人一人が持っているものです。しかし、もし国民全員が話し合いに参加したとすれば、一つを決めるのにとても長い年月がかかってしまうでしょう。いくら話し合っても、意見がまとまらないかもしれません。
そこで、国の政治をスムーズに行うために、日本国憲法は国民を主権とした国会というシステムを定めたのです。なお、国会については、日本国憲法の第4章に規定されています。
参考:日本国憲法
参考:国会のしくみ:国会のしくみと法律ができるまで:キッズページ:参議院
国会議事堂の特徴は?
国会は、東京都千代田区にある「国会議事堂」で開催されます。1936年に建設されて以降ずっと国の会議が行われてきた、日本にとって重要な建物の一つです。
65.45mの高さの塔を中心に、全長206.36mと横長の形状をしています。なお、右側が参議院、左側が衆議院です。国会議事堂は正面から見ると完全な左右対称となっており、これは国会の「二院制」の象徴ともいえるでしょう。
どんなお仕事をしているの?
日本国憲法は、1カ所に権力が集中しないよう、国家の権力を「立法」「行政」「司法」の三つに分けた「三権分立」の形をとっています。
このうち、「立法」をつかさどるのが国会です。ここでは、国会が具体的にどのような決め事をしているのか解説します。
法律づくり
さまざまな考えを持つ人々が仲良く暮らしていくには、全員が定められたルールに従う必要があります。このルールである「法律」をつくるのが国会です。
新しい法律がつくられるときは、まず内閣や国会議員によって「こういうルールがあったほうがよいのではありませんか?」と法律案が出されます。この法律案のために国会が開かれ、衆議院・参議院の両方で話し合いが行われるのです。
国会で可決された法律案は、その分野を担当する国務大臣と内閣総理大臣が署名した後、天皇によって国民全員に「新しい法律ができました。○月○日から適用されますよ」と知らされます。
税金の使い道を決める
国民の生活を守っていくには、政治を行うためのお金が必要です。そのために、国民は収入の中から「税金」を納めています。この税金の使い道を決めるのも、国会の大切な仕事の一つです。
1年に一度、内閣は「集まったお金をこのように使うのはいかがでしょうか」と、国会に予算案を提出します。衆議院で可決された後、参議院でも可決されると、この予算案にそって税金が使われるのです。
ほかにもいろいろな仕事がある
海外の国々ともうまく付き合っていくため、内閣は外国との約束事である「条約」を結びます。この条約も、事前に「日本国民が認めました」と国会に承認されなければいけません。
また、内閣総理大臣は国会議員の中から選ばれますが、「誰を内閣総理大臣にするのか」を決めるのも国会です。そのほかにも、「憲法改正の発議」「弾劾裁判所の設置」「皇室財産授与の議決」など、国会はさまざまな仕事をしています。
参考:法律への署名
参考:内閣総理大臣になるためには | 内閣総理大臣に詳しくなろう! | 首相官邸きっず
参考:国会のしくみ:国会のしくみと法律ができるまで:キッズページ:参議院
二院制とは?
法律国家には「一院制」と「二院制」があり、日本では二院制を採用しています。二院制とは、国会に異なる二つの議院があることです。ここでは、二院制とそれぞれの議院の違いについて解説します。
二院制をとるメリット・デメリット
日本の国会には「衆議院」と「参議院」があります。二院制のメリットは、一つの議院が思うがままに強い権力を使わないよう抑制できることです。
片方の議院が誤った決め事をすれば、もう一方が補正することもできます。広く意見を取り入れることで深い部分まで検討されるため、より国民の意見を反映できる制度だといえるでしょう。
一方で、一院制に比べて慎重に意見交換がされるため、物事を進めるのに若干時間がかかるという点がデメリットです。議員数が多い分コストがかかるのも、経済的観点からすると痛手でしょう。
衆議院と参議院の違い
衆議院も参議院も、仕事内容に大きな違いはありません。ただし、その任期と権利には少し異なる部分があります。衆議院の任期が4年で解散制度があるのに対し、参議院の任期は6年で解散制度はありません。
任期が長く、突然の解散がない参議院は「長期的な視野」で問題に対応するできます。また、衆議院が解散したときに、国会を支える役割も担っているのです。(緊急集会)
一方、誤った政治を行えば辞任や解散にもなる衆議院は、「より国民の意見を反映した代表者の集まり」であるといえるでしょう。
予算案は衆議院が先に審議する権利があり、法律・予算・条約・内閣総理大臣を決める際にも衆議院の意見が優先されます(衆議院の優越)。
参考:参議院のあり方及び改革に関する意見:参議院改革の歩み(参議院改革関係年表):参議院のあらまし:参議院
会期と種類
一年中、毎日のように国会議事堂で国会が開かれているわけではありません。国会は「会期制」といって、決まった時期に天皇によって召集されます。最後に、国会の会期と種類について見ていきましょう。
常会(通常国会)
「常会」とは、毎年1月に開かれる国会のことで、会期は「150日間」です。ニュースなどでは、「通常国会」という名前を耳にすることが多いでしょう。
常会では、内閣から提出された予算案や法律案について話し合われます。内閣総理大臣のほか、経済・財務・外務大臣による演説(政府四演説)や質疑応答も注目したいところです。
臨時会(臨時国会)
常会で決められたことに不足部分があったり、緊急事態が起きたりしたときには予算案や法律案を見直す必要が出てきます。「臨時会」とは、こうした必要に応じて開かれる国会のことです。
主に次のような場合に、臨時会が開かれます。
・内閣の要求があったとき
・いずれかの議院の総議員の1/4から要求があったとき
・衆議院議員の総選挙が行われたとき(30日以内)
・参議院議員の通常選挙が行われたとき(30日以内)
なお、臨時会の会期に決まりはなく、衆議院・参議院によって議決されます。延長は2回まで可能です。
特別会(特別国会)
「特別会」とは、衆議院の解散にともなって総選挙が行われたときに開かれる国会です。総選挙の日から30日以内に召集しなければいけないと定められており、ここで新たな内閣総理大臣が指名されます。
会期は臨時会と同じく、衆議院・参議院の話し合いにより決定されます。なお、衆議院と参議院はそれぞれ独立していますが、国会を開く時期は同じです。つまり、衆議院が解散されると参議院も閉会することになります。
参議院の緊急集会
衆議院の解散にともない参議院が閉会したとき、国で緊急に決めなければいけないことがある場合には、内閣が「参議院の緊急集会」を求めます。
しかし、緊急集会で採用された案は、臨時のものに過ぎません。次の国会が開会した後10日以内に衆議院が同意しなければ、その決定は効力を失います。また、議決しないまま10日経過した場合も同様です。
参考:会期制度の内実
国会についてもっと興味をもとう
国会は国民を代表して重要な案件について議論しています。ときには納得のいかない法案があるかもしれませんが、それも国民が選んだ議員による国会で決定されたことです。自分たちの意見を反映させるためには、もっと積極的に選挙に参加し、政治に参加しようという意識を持つことが大切でしょう。
国会議事堂は一般見学もできるため、機会があれば申し込んでみてはいかがでしょうか? 実際の重々しい雰囲気を身近に感じることで、「政治を学ぼう」という気持ちが芽生えるきっかけとなるかもしれません。
文・構成/HugKum編集部