はんぺんは、魚の甘みとフワフワな食感がおいしい人気の食材です。煮物にすると出汁をよく吸い、自身の味を変幻自在に変化させていきます。真っ白なはんぺんが、雪だるまのように煮物の中で浮かぶ様子はかわいらしく、つい箸をつけたくなるお子さんも多いものです。今回ははんぺんの冷凍方法を見ていきましょう。
はんぺんは冷凍できる!
お弁当のちょっと空いた隙間や、なにか一品が欲しい時にこそ活躍してくれるはんぺん。じつは冷凍するとさらに使い勝手が良くなります。こんな使い方もあったの!?と、思わず買いに行きたくなるような、驚きの冷凍方法を見ていきましょう。
はんぺんの特徴は?
はんぺんは、江戸時代に駿河の地で料理人として生きた半平(はんぺい)さんが創案したことから、この名がつけられました。白身魚のすり身と山芋を4:1の割合で混ぜ、塩と昆布だしを練り合わせてから、茹でたものがはんぺんです。
じつは同じ練り物である、ちくわと材料が同じで、竹に巻きつけて焼いていたのがちくわ、茹でているのがはんぺん、という違いだけだそうです。兄弟みたいなものですね。
魚が主原料なので、冷蔵での賞味期限は1週間程度。保存期間は案外短いのです。
冷凍保存の期限
はんぺんの冷凍保存は、2週間ほどの保存期限です。加工食品なので、つい長く保存できそうな気がしてしまいますが、あくまでも魚なので、早めの消費を心がけたいところですね。
はんぺんは劣化したらどうなる?
もしも、はんぺんが傷んでしまった時の状態を確認しておきましょう。
・真っ白な色が黄みを帯びている
・袋が膨らんでいる
・匂いが生臭い
・手触りがヌルっとする
このような変化が見られた場合は、残念ですが速やかに破棄してください。
はんぺんの冷凍方法
はんぺんのフワフワの食感は冷凍しても変わらずに、おいしくいただくことができます。詳しい冷凍方法をみていきましょう。
パッケージのまま冷凍
はんぺんは冷凍しても柔らかいままなので、なんと凍ったまま包丁で切る事ができます。そのため、買ってきたパッケージのまま冷凍庫へ保存しておき、使う分ずつ切り分けながら調理に使うことができます。
もし余った時には冷凍庫に戻しても問題ありません。その際はラップで包み、冷凍用保存袋へ入れてください。
また、切り分けてから小分けすると、切り口同士でくっついてしまい離れません。もう一度包丁で切れば解決しますが、間隔を開けるなどの工夫が必要です。
調理してから冷凍
冷凍したはんぺんは、お弁当を詰める忙しい朝や、ちょっとしたおつまみが欲しい時にも役立ちます。
次のレシピでは、はんぺんに華やかでかわいい工夫を加えています。あらかじめ多めに作って冷凍しておくと、お弁当の一品として良いですね。保冷もしながら、2~3時間で自然解凍されるので、そのまま食べてください。
チーズとハムのお花はんぺんサンド
はんぺんとチーズ、ハムを型で抜くだけ。見た目がかわいいので、子どもも残さず食べられそう!
◆材料
はんぺん、スライスチーズ、スライスハム 各適量
◆作り方
【1】はんぺんを一口大の花型で抜いて5mm~1cm厚さに切る。半数は中央をストローでくり抜いておく。
【2】その他の材料も同じ花型で抜き、【1】のはんぺんではさむ(上になるほうのはんぺんは中央を抜いたものに)。
教えてくれたのは
中村陽子さん
料理研究家。味はもちろん、見た目の美しさも重要視したオリジナル料理が人気。持ち前の美的センスと器用さを活かしたモチーフ料理に定評があり、書籍も多数。一男一女の母。
『めばえ』2016年6月号
はんぺんの解凍方法
冷凍したはんぺんの解凍方法と、使い方をみていきましょう。
解凍せずにそのまま使う方法
はんぺんは冷凍しても柔らかいので、冷凍前と変わらない調理ができます。開封して中身を取り出し、そのまま食べることもできます。
冷凍はんぺんの海苔巻き
真夏の暑い日に、コンロに火をつけるのも憂鬱になる時はこちらのレシピはいかがでしょう。冷凍はんぺんに海苔を巻き、夏の定番枝豆と、魚焼きグリルで焼ける鶏の手羽先か厚切りベーコンをつければ、栄養バランスが良い献立になります。
◆材料
冷凍はんぺん(1個)
焼き海苔か味付け海苔(適量)
◆作り方
【1】冷凍はんぺんを凍ったまま拍子木型に四角く切り、海苔を巻きます。
【2】凍ったまま冷たいうちにいただきます。
一方、冬のコンビニで売られているおでんのはんぺんは、出汁に浮かべ、白いままの部分と、お出汁に浸かる部分に分けて煮込まれています。かまくら型にすることで、はんぺんそのものの味と、お出汁を吸った味の両方を楽しめる工夫をしているのだそうです。皆さんは、どちらのはんぺんがお好きでしょうか。もしかしたら、一口に両方を味わうのが一番おいしいのかもしれませんね。
煮込み料理のベースとなるスープの味を変える方法は、柔軟に味を変えていくはんぺんにはピッタリの調理法です。次のレシピでは基本の昆布だし、そしてクリーミーなシチュー、お味噌と、3種類の味をご紹介します。冷凍はんぺんをそのまま入れて、お好みの味を試してください。
寄せ鍋
あっさりした寄せ鍋は大人仕様にせず、野菜や肉、魚の旨味たっぷりのスープの中にウィンナーなど子どもの好きな具もたくさん入れて大好きな鍋にしてあげましょう。
◆材料
(大人2人分+子ども2人分)
鶏もも肉 1枚
たら(または鮭) 2切れ
ウィンナー 3本
チーズ入りはんぺん 3~4個
白菜 1/4個
水菜 1/2袋
にんじん 1/2本
【A】
昆布だし 3~4カップ
みりん 小さじ2
ゆでうどん 3玉
◆作り方
【1】白菜はざく切りにし、水菜は5cm長さに切る。にんじんは5mmの輪切りにする(一部を型で抜いても)。鶏肉とたらは食べやすい大きさに切り、ウィンナーは半分に切る。
【2】鍋に【A】を煮立て、白菜とにんじんを入れて煮、しんなりしたら、鶏肉、たら、ウィンナー、はんぺんを入れて煮、最後に水菜を入れる。
【3】大人はポン酢やごまだれなどをつけて食べ、最後にうどんを入れて煮る。
■シチュー味
子ども茶碗に汁をお玉1~1と1/2杯取り、シチュールウ1/2かけを混ぜる(溶けにくい場合は、軽く電子レンジで温める)。具やうどんをのせる。
■みそバター味
子ども茶碗に汁をお玉1~1と1/2杯取り、みそ小さじ1/2とバター1gを溶き、具やうどんをのせる。
教えてくれたのは
阪下千恵さん
料理研究家、栄養士。二人の女の子のママ。家族のために作り続けてきたおいしくて、栄養バランスのいいレシピが人気。
『ベビーブック』2014年12月号
解凍して使う方法
解凍は、冷凍庫から冷蔵庫へ移しておき、2時間ほどで解凍できます。または、電子レンジでチンしても良いです。本当に扱いやすい食材ですね。
解凍したはんぺんは手でよくもみほぐし、ハンバーグ種を作るイメージで、他の食材と混ぜ合わせるのはいかがでしょうか。
えび団子のお吸い物
はんぺんをつなぎに簡単に作りましょう!
◆材料
(大人2人分+子ども2人分)
むきえび 80g
はんぺん 1/4枚(25g)
【A】
長ねぎのみじん切り 3cm分
酒 大さじ1
塩 少々
絹さや 適量
【B】
だし汁 2と1/2カップ
酒 大さじ1
薄口しょうゆ 小さじ1
◆作り方
【1】えびは背ワタを除き、包丁で叩いて細かくする。ボウルに入れ、はんぺんをつぶしながら加え、【A】も加えてよく練り混ぜる。
【2】鍋に【B】を煮立たせ、【1】を8等分の団子状に落としていき、火を通す。
【3】薄口しょうゆで調味して器に盛り、ゆでて斜め切りにした絹さやを飾る。
教えてくれたのは
中村陽子さん
料理研究家のアシスタントを経て独立。かわいくて簡単に作れるレシピが人気。女の子と男の子のママ。
『ベビーブック』2018年3月号
お弁当にも使えるおすすめレシピ
はんぺんは魚介との相性の良いので、おジャコや他の魚もおすすめの材料です。次のレシピは、ぶりを使ってお弁当のおかずにもできる一品です。
ぶりのふわふわナゲット
ぶりとはんぺんを混ぜるだけのお魚フリット。はんぺんがつなぎになって硬くならず柔らかいので子どもも大好物です。
◆材料
(大人2人分+子ども2人分)
ぶり(切り身) 2切れ
はんぺん 大1枚
揚げ油 適量
◆作り方
【1】ぶりは皮を除いて適当に切り、ポリ袋にはんぺんとともに入れ、よくもみつぶす。
【2】揚げ油を180℃に熱し、【1】からスプーンですくって落とし入れ、こんがりと揚げる。
*せん切りのレタスを敷いても。
教えてくれたのは
井澤由美子さん
料理家。旬の食材を使い、食べ合わせによって体への相乗効果を大切にしたレシピが人気。食育にも力を注ぐ。NHK『きょうの料理』や広告、書籍、雑誌などで活躍中。
『ベビーブック』2014年1月号
懐の広いはんぺんの冷凍
生でも、焼いても、煮込んでもおいしく、チーズや、魚介と合わせても素材を引き立ててくれるはんぺん。しかも冷凍してもそのまま調理ができるという、なんと懐の広い食材でしょうか。ぜひ冷凍保存をして、活用の場所も広げてみてくださいね。
構成・文・撮影(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)