夏の清涼感を届けてくれる香辛野菜のひとつ、茗荷(みょうが)。ちょっと不思議な名前をもち、古くは正倉院に収められた書物の中にも記載があるそうですよ。ほんの少しの量があればその特徴的な香りを楽しめますが、どんな方法で保存すれば長持ちするのでしょうか。今回はみょうがの保存についてご紹介します。
みょうが保存の基礎知識
みょうがは7月下旬頃、地面からにょきにょきと生えてくる花蕾(からい)と呼ばれる部分を食用にします。花が咲く前の「つぼみ」にあたる部分を食べているのですね。花が咲くと香りが弱まるので、その前にいただきます。
ハウス栽培によって一年中手に入りますが、旬は「夏みょうが」と呼ばれる7~8月と、「秋みょうが」の9~10月、年に2回収穫できます。「秋みょうが」のほうがぷっくりとして太く、強い香りがあります。
また、3~5月に採れる若い茎部分を「みょうがたけ」と呼び、鉛筆状ですが同じように食べることができ、長い期間にわたって流通しています。
みょうがには食欲増進、発汗作用の他、ホルモンバランスを整える作用もあることから、生理不順や更年期障害に効果的とされています。また生姜の仲間であることから、口に入れた後、じんわりとした温かさが喉元に感じられます。根や茎を刻んでお風呂に入れ、冷え性対策にも使われるそうですよ。
冷蔵保存の方法
みょうがは乾燥が苦手な植物です。湿度を保つ点をポイントに、冷蔵での保存方法をご紹介します。
保存期限
みょうがは冷蔵庫で10日~1か月、味もそのままに保存ができます。
丸ごと保存する
スーパーのパックされたみょうがは、きれいに洗浄されています。ほこりを払う程度に洗い、濡らしたキッチンペーパーで包み、タッパーに入れて冷蔵保存してください。
大量にある時は、丁寧に水洗いした後、新聞紙やキッチンペーパーでひとまとめに包んでから、ビニール袋で保存します。洗ったあとの水気を包み紙が吸い、適度な湿り気となります。
いずれも3~5日ほどで新聞紙やキッチンペーパーを交換すると、1カ月程度は保存ができます。徐々に柔らかくなり溶けるように傷んだ部分が出てくるので、その部分だけ切って破棄し、固い部分を早めに使うようにしてください。みょうがの香り成分は揮発性なので、少しずつ弱まっていきますが、シャキシャキ感は時間が経っても残ります。
千切りにして保存する
2〜3日分を細い千切りにして冷蔵しておくと、使いたい時にすぐに取り出せて便利ですよ。薬味はもちろん、炒める料理にも使えます。
みょうがの千切りにはちょっとしたコツがあります。みょうがを縦半分に切ったあと、付け根の部分を「逆V」の形で切り離します。あとは繊維に沿って千切りにすれば、きれいな「千切りみょうが」に。
切れ込みがないまま刻むと、付け根でつながったままの「薄切りみょうが」になります。もちろん、これもおいしいですが、針のような細切りに統一したい時には試してみてください。
切ったあとは、水に2~3分漬けておくことでアクがぬけ、よりさわやかな香味を味わえます。
保存するときは、保存容器に張った水の中に入れ、フタをして保存します。食感はシャキシャキのまま4~5日は保ちます。香りが飛んでしまい、辛味が最後まで残るので、お味噌汁の具材としてはいかがでしょうか。
小口切りにして保存する
みょうがの「輪切り」と言ったほうがわかりやすいかもしれませんね。繊維を断つ方向に小さく刻む方法です。シャキシャキ感は千切りに譲りますが、こちらは味がしみ込みやすく、具材と混ぜ合わせたり、豆腐などの柔らかい具材に乗せたりする時に、シャリシャリと存在を示しながら、良い香りを放ちます。
保存方法は千切りと同じく、水を張った保存容器に入れて冷蔵します。サラダに混ぜたり、焼き魚に乗せても。
みょうがは冷凍保存もできる
みょうがの冷凍法には、ちょっとしたコツがあります。詳しい冷凍保存法はこちらをチェックしてみてください。
みょうがのおすすめレシピ
千切りみょうがを添える形なら、大人もお子さんも同じメニューを楽しめますね。
アジア風海老と豚肉のつくね
子どもも食べられるエスニック風つくねは、好きな野菜と一緒にレタスで巻いてパクッと♪ 大人はお酒のつまみにも◎!
◆材料
(3~4人分)
豚ひき肉 250g
むき海老 100g
玉ねぎ 1/4個
にんにく 1/4片
しょうが 1/2片
塩、砂糖 各小さじ1/3
こしょう 少々
ナムプラー(なければしょっつるや薄口しょう油) 小さじ1
卵黄 1個分
片栗粉 大さじ1
サラダ油 大さじ2
グリーンリーフ 6~8枚
みょうが(千切り) 1個
きゅうり(千切り) 1/2本
【甘酢】
酢 大さじ3
砂糖 大さじ1/2
塩 小さじ1/3
薄口しょう油 小さじ1/2
◆作り方
【1】にんにくは芯を取り、しょうが、玉ねぎは皮をむき、みじん切りにする。むき海老は片栗粉少々(分量外)を加えてもみ込み、洗ってキッチンペーパーで水気を取ってざく切りにする。
【2】ボウルに豚ひき肉、【1】、塩、砂糖、こしょう、ナムプラー、卵黄、片栗粉を加えて粘りが出るまで混ぜ、8~9等分に分ける。手にサラダ油を付けて、空気を抜きながら細長く成形する。
【3】オーブンシートを敷いた天板に【2】をのせて、210℃に予熱したオーブンで10~15分ほど焼く※。透明な汁が出てくるのが焼き上がりの目安。
【4】きゅうり、みょうが(大人のみ)と一緒に、【3】をグリーンリーフで包み、材料を混ぜた甘酢をかけて食べる。
※フライパンを使う場合は、中火で両面にこんがり焼き色がついたら強めの弱火でフタをして、じっくり中まで火を通す。
教えてくれたのは
瀬戸口しおりさん
料理家。学生時代、東京・吉祥寺にあった『諸国空想料理店KuuKuu』のスタッフとして働き始め、その後、料理家・高山なおみ氏のアシスタントを経て独立。昔ながらの家庭料理や人気のエスニック料理をよりおいしく、おしゃれにレベルアップさせる独自のセンスに定評がある。
『めばえ』2017年9月号
みょうがの保存食レシピ
醤油や、お酢に漬ける他、ぬか漬け、粕漬にもできます。ここでは醤油漬けと甘酢漬けのレシピを見ていきましょう。
醤油漬け
お醤油に漬けるだけの簡単レシピです。
◆材料
みょうが2個
お醤油(大さじ2)
塩昆布(お好みでひとつまみほど)
◆作り方
お醤油に、小口切りに刻んだみょうがと塩昆布を浸します。にんにくや鷹の爪もこの時一緒に入れられるので、お好みで。2~3時間で出来上がります。
ご飯のお供にしたり、クリームチーズに乗せるとおつまみとして絶品です。
甘酢漬け
みょうがの淡い赤色は、抗酸化作用のあるアントシアニンによるもの。酸味がある調味料と合わせるとより鮮やかに発色し、かわいらしい彩りとなります。そのピンク色から赤紫蘇を使った梅酢漬けと思われますが、普通のお酢でも発色します。
◆材料
みょうが10個程度
しょうが(20g)
漬け液
酢1カップ(米酢の他、リンゴ酢、ワインビネガーなど、お好みのものを選んでください)
水3/4カップ
砂糖80g
塩小さじ1
粒胡椒
お酢を加熱する時は、酸の力によって鍋が腐食してしまう心配があります。アルミ、鉄鍋は酸に弱く、琺瑯(ほうろう)、ステンレス、土鍋、ガラス容器なら心配ありません。また、保存容器もガラス瓶が良いですよ。700mlの容量がおすすめ。
◆作り方
【1】鍋に漬け液の材料を全て入れます。ひと煮立ちさせて酢のアルコールを飛ばし、そのまま冷まします。電子レンジで加熱する場合は600wで1分30秒。砂糖が溶け残るので、温かいうちによく混ぜて溶かし、冷まします。
【2】みょうがは縦半分に切り、熱湯をかけてアクを抜きます。水気をきって冷まします。
【3】ガラス瓶にみょうがと生姜を入れ、全部浸るまで漬け液を入れます。フタをして3時間〜半日ほど冷蔵庫で保存すると完成。一日以上たつと酸味が強くなってきます。きゅうりやナス、カブを一緒に漬けるのもおすすめ。
保存期限は1週間です。
そのまま食べるほか、ドレッシングや、カルパッチョなどに刻んで散らします。漬け液は水や炭酸水で割ってドリンクにしたり、醤油を足して鶏のさっぱり煮にも。夏バテ予防にもなります。
少量あるだけで味が激変
みょうがはほんのわずかな量で、まったく違う料理にしてしまう存在感がありますね。いつものお豆腐やご飯に添えて、サッパリした味わいを楽しんでください。この夏は上手な保存でみょうがを存分に使ってくださいね。
構成・文・撮影(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)