ぶどうというと、干したレーズンや発酵させたワイン、ビネガーと、形を変えながら身近にある食材です。今回は生のぶどうをご家庭で、手軽に美味しく保存する方法について、詳しくご紹介します。
ぶどうの基礎知識
ぶどうの旬は8月~10月です。この期間には豊富な種類のぶどうが店頭に並び、さらには海外からの輸入も多いことから、通年にわたり手に入れることができるフルーツです。
人気の品種
食べやすい「種なしぶどう」は、ジベレリンという自然由来のホルモンを利用して、安全なバイオテクノロジーによって改良された品種です。また、「シャインマスカット」なら皮も食べられるので、小さなお子さんでも食べやすいぶどうです。
ただし、丸ごと飲み込んでしまうと窒息する危険性がありますので、大粒のぶどうは、必ずおうちの方がカットしたりほぐしたりしてあげてください。
ぶどうの王様と呼ばれる「巨峰」、それよりも大粒で傷がつきにくい「ピオーネ」。逆に小粒で甘味が強い「デラウェア」など、数多くの品種があります。
ブルームは食べても安全
皮の表面についている白いものはブルームと呼ばれ、新鮮さの印です。農薬ではなく、ぶどうの実を守るために分泌された天然成分なので、安心して口にしてください。
皮が黒や赤の品種にはポリフェノールが多く含まれます。抗酸化作用、眼精疲労の回復、動脈硬化の予防などが期待できるので、気にならなければ皮ごと食べると良いですよ。
香りと甘味
香りがよいマスカットなどの品種を長期間冷やしてしまうと、せっかくの香りが弱まります。なるべく早く食べることがおすすめです。
また、ぶどうは茎に近い方が甘く、下部にいくほど甘さが弱くなります。房を切り分けると味に偏りができるので、気をつけてくださいね。
ぶどうを美味しく保存するポイント
ぶどうの美味しさを保つには、どんな保存方法が良いのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
常温と冷蔵の保存期間
ぶどうの適温は5~10℃なので常温保存にはむきません。冷蔵庫の野菜室で保存します。常温では2日間程度の保存期間ですが、冷蔵なら10日間程度です。
バナナなどにある追熟はなく、完熟で収獲されています。収獲後は味が落ちていくので、なるべく早く食べて、美味しく味わってください。
一粒ずつ切り離して保存
ぶどうは房のまま保存すると、下になった部分が重さで痛み、カビが発生することもあります。
また、ぶどうの粒を軸から離してしまうと傷になり、そこから劣化が進みます。これを防ぐために軸を5mmほど残したまま、はさみで切り離します。これならぶどうの皮に傷がつくことなく、乾燥も防げておいしさが長持ちします。
容器には、ペーパータオルを一枚ひいて傷から守ります。押しつぶされたり、割けたりしやすいので、上から重さがかからないように、フタをしてください。
洗うのは食べる直前がよく、水を張ったボウルに入れた後、ペーパータオルで水気を吸い取るときれいになります。
簡単に皮をむく方法
ぶどうは皮と実の間に栄養と甘味が多いので、できれば皮ごと食べるか、口の中に含んでしごき出すようにすると、濃い味わいを楽しめます。
ピオーネ、巨峰などのように、厚みのある皮は食感が気になることもあるので、皮をむく方法について確かめておきましょう。
湯むき
たくさんある時は、トマトの湯むきと同じ手順でおこなうと手早く処理ができます。まずは、包丁で表面に切れ目を入れていきます。
沸かしたお湯の中へ10秒くらい入れ、引き上げたらすぐに氷水へ移します。あとは、ツルンと切れ目から皮をむくだけなので、お子さんとおしゃべりしながらでも処理ができますよ。
冷凍する
ぶどうは冷凍すると、皮が簡単にむけるようになります。皮下の栄養を多く含んだ部分も果肉側に残ることから、おすすめできる方法です。
アウトドアにも! ぶどうのアレンジレシピ
冷やしたぶどうは、そのままでも十分美味しいものですが、少し手を加えると、香りや甘味が別の形で楽しめるようになります。
ぶどうのゼリー
涼しげなゼリーの中にプカプカ♪見た目もかわいく、ゴロッとジューシーなぶどうがアクセントに。
◆材料
(4人分)
粉ゼラチン 9g
水(A 45ml、B 100ml、C 350ml)
レモン果汁 1個分
グラニュ ー糖 80g
ぶどう 16粒
◆作り方
【1】粉ゼラチンを水Aでふやかす。
【2】ぶどうは皮をむき、使う直前まで冷蔵庫で冷やす。
【3】 鍋に水B 、グラニュー糖、レモン果汁を入れて火にかけ、ひと煮立ちしたら火から下ろす。【1】を加えて余熱で混ぜ溶かし、こし器を通してボウルに移す。
【4】水Cを加えて氷水で冷やしながら、ゴムべらで絶えず混ぜ続ける。
【5】全体にとろみがついたらぶどうを加えてグラスに分ける。ぶどうがゼリーの中に均等に浮かぶように調整し、冷蔵庫で約2時間冷やし固める。
教えてくれたのは
柳瀬久美子さん
フードコーディネーター。 1988年から4年間フランスで修業し、エコール・リッツ・エスコフィエ・ディプロマを取得。帰国後、広告・雑誌のフードコーディネート、企業や店舗のメニュー開発など幅広く活躍。自宅で教える少人数制のお菓子教室も人気。
『めばえ』2017年8月号
ぶどうとにんじんのラペ
一晩漬けてから、水気を切るとお弁当にも入れられます。
◆材料
【A】
にんじん(2本)
皮ごと食べられるぶどう(4粒程度)
くるみ、またはカシューナッツ(適量)
【B】ドレッシング
酢(大さじ3)
オリーブオイル(大さじ1)
はちみつ(大さじ1)
マスタード(小さじ1)
塩、こしょう(少々)
◆作り方
【1】にんじんを細切りに切ります。おろし器を使うと簡単です。
【2】ぶどうをスライスします。種があればこの時にはずします。【3】にんじん、ぶどう、くるみと、ドレッシングを和えれば完成です。
ぶどうとマスカルポーネのスコーン
保冷バックに、ぶどうとマスカルポーネを入れて、アウトドアでのおやつはいかがでしょうか。
◆材料(1人分)
スコーン(2個)
マスカルポーネ(大さじ4)
はちみつ(大さじ2)
皮ごと食べられる、種なしのぶどう(8粒程度)
◆作り方
スコーンを半分に割り、たっぷりのマスカルポーネとぶどうをのせ、はちみつをかけていただきます。
ぶどうのハーブウォーター
ハーブウォーターは、ハーブやフルーツを水に漬けておくだけのドリンクです。定番はミントとレモンですが、色のきれいなぶどうを加えると、甘味も加わりおすすめです。
また、ぶどうは皮があるので水でふやけてしまうことがなく、形を保ったまま崩れません。
◆材料
水(500㏄)
ミント(1~2茎)
レモン(1切れ)
ぶどう(3粒程度)
◆作り方
材料を容器に入れ、1~8時間漬け置きます。
漬ける時間が短いと見た目が涼やかな飲料水に、長いと水溶性のミネラル、ビタミンが溶けだしたリラックスウォーターができます。このままでも美味しいですし、炭酸ガスを注入できるメーカーを使って、ソーダーにするのもおすすめです。
常温なら材料を入れてから24時間で飲み切ってください。冷蔵なら、中身を取り出して保存すると、3~4日の期限です。
ぶどうを保存して楽しい食卓に
甘くジューシーな果肉に加えて、見た目にも華やかなぶどうは、食卓を彩り豊かにしてくれます。冷やすだけでももちろん美味しく、調理の材料としてアイデアを絞るのも、楽しい気分を引き立ててくれますね。ビー玉のように美しいぶどうを、ぜひ楽しんでくださいね。
構成・文・撮影(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)