「共和制」の意味
「共和制」は、古くから存在する国の政治体制の一つです。いつごろ始まり、どのような国が採用しているのでしょうか。
国民が選んだ代表が行う政治
「共和制」は、国王や皇帝のような専制君主が存在しない国家体制を意味しています。
共和制では、国民が選んだ人物が代表となり、国を統治します。ほとんどの場合、共和制の代表は「大統領」と呼ばれます。
大統領の権限の範囲は、国によって異なり、大統領の他に、内閣の長「首相」を置く国も少なくありません。政治の実権は首相が握り、大統領は外交や儀礼に徹するだけの国もあります。
古代ローマが始まり
歴史上、最初に共和制を始めた国は、古代の都市国家ローマです。ローマには、もともと国王がいましたが、紀元前6世紀に、王を追放して共和制が始まりました。
ただし、当時の共和制は、貴族階級が重要役職である「官職」の座を独占しており、平民は政治に参加できませんでした。しかし、ローマの支配領域が広がるにつれて、平民が力を増していき、「身分闘争」が起こります。
紀元前3世紀の初めごろには、平民が貴族と同等の権限を手にして、本格的な共和制となります。古代ローマの共和制は、紀元前27年に「アウグストゥス(オクタヴィアヌス)」が皇帝になるまで続きました。
共和制の国とは?
現在では、世界の半数にあたる約150カ国が共和制をとっています。主な共和制の国は、以下の通りです。
・アメリカ合衆国
・中華人民共和国
・ロシア連邦共和国
・大韓民国
・フランス共和国
・ドイツ連邦共和国
・イタリア共和国
・メキシコ合衆国
・インド共和国
・ブラジル連邦共和国
なお「合衆国」や「連邦」は、二つ以上の国または州で構成されている国を指します。
共和制のメリット・デメリット
共和制では、原則として、国の代表を国民が選びます。このため国民の判断が、国の命運を左右するといってもよいでしょう。共和制が持つメリットとデメリットを解説します。
定期的に代表を選び直せる
共和制では選挙によって国の代表を選び、政治をゆだねます。選挙は定期的に行われるので、代表となった人物が期待外れだった場合、違う人を選び直すことが可能です。
また、同じ人が代表でいられる期間も決まっており、基本的に、長期にわたって権力の座に居座ることはできません。選挙が公正に行われている限り、特定の人に権力が集中することを防げるのです。
共和制の国の多くは、「司法」や「立法」と大統領の権限を分けています。行政や外交においては、大きな権限を持つアメリカ大統領も、立法や司法に過度な介入はできず、独裁的な政治を行うことは困難なのです。
国民の正しい判断がカギ
共和制国家で、代表に選ばれるためには、選挙で勝つ必要があります。初当選を目指す人も、再選を狙う人も、国民の人気を得られそうな政策を掲げて選挙に臨むでしょう。
国民も、自分にとって都合のよい政策を掲げる人を選ぶことになります。このため共和制では、選挙に勝つ手段として大衆に迎合する政治家が登場しやすく、国民もその戦略に乗せられる危険があります。
さらに一度選ばれた代表は、任期が終わるまで、誰も解任できません。極端な思想の持ち主や、国際感覚が鈍い人が選出されると、国が間違った方向に進んでしまう可能性があるのです。
「民主制」や「君主制」との違い
共和制と同様に、国の政治体制を表す言葉に、「民主制」や「君主制」があります。それぞれについて、共和制との違いを見ていきましょう。
「民主制」の特徴
「民主制」とは、政治の主権を国民が持つ政治体制のことです。
民主制を端的に表した文言が、アメリカ大統領リンカーンの有名な演説「人民の人民による人民のための政治」です。
共和制と民主制は、一見同じように思えますが、共和制をとっている国が、必ずしも民主国家とは限りません。国民が主権を持たない、独裁的な共和制をとる国も存在します。
また、日本は、天皇が存在するため共和制ではありませんが、政治の主権は国民にあるため、れっきとした民主制国家です。
「君主制」の特徴
「君主制」は、共和制の対義語で、「君主」と呼ばれる特定の人物が国を治める政治体制を指します。君主は、世襲の場合と選挙で選ばれる場合があり、日本の天皇やイギリスの国王は世襲制です。
また、君主制には「絶対君主制」と「立憲君主制」の2種類が存在します。
前者は、君主が絶対的な権力を持つ体制で、中世のヨーロッパ諸国がそのよい例です。現在でも、サウジアラビアやブルネイなどは、絶対君主制の国として知られています。
立憲君主制では、君主の権力は、憲法や法律で制限されています。日本の天皇のように、君主が政治的な権力を持たないのが特徴です。
日本やイギリスをはじめ、オランダ・スペイン・ベルギー・タイ・カンボジアなど約40カ国が立憲君主制をとっています。
国ごとに異なる政治スタイルの一つ
共和制を分かりやすく言い換えると、「国王や皇帝がいない政治体制」となります。かつては、多くの国で王族や皇族が君臨し、絶対的な権力を持っていました。
しかし近代では、国民が主体となって、代表を決める共和制が主流です。ただし共和制とはいえ、一部の人に権力が集中している国もあります。国ごとの政治スタイルをよく把握して、国際情勢の理解に役立てましょう。
こんな本を読んでみましょう
小学館 キッズペディア「世界の国ぐに」
刊行時点で、国際連合に加盟しているのは193か国。それ以外に日本が国家として承認する4か国(バチカン、コソボ、クック諸島、ニウエ)を含む、197か国すべてを、写真とともに紹介しています。正式名称・首都・人口・面積・主要言語といった各国の基本情報のほか、読者の興味をそそる、楽しくて役に立つ情報を紹介します。諸外国の政治体制に目を向けるには、前提となる気候や文化や歴史などについても理解を深める必要があります。お子さんが日本の外に興味をもたれたときの、世界への扉をひらく“最初の一歩”となる学習百科です。
小学館版 学習まんが 世界の歴史3「ローマ」
歴史教科書で有名な山川出版社の編集協力を得て誕生した「学習まんが世界の歴史」シリーズ。この第3巻では、紀元前6世紀~紀元後5世紀までのローマを扱っています。本記事でも紹介した、世界史で初めてといわれる共和制がどのように発展したのか、またその政治体制がどのような問題をはらみ、当時の大国だったローマがどのように衰退していったかをたどることは、現代史や政治史を考えるうえでも重要なヒントとなります。
講談社 マンガ「ローマ帝国の歴史1 ユリウス・カエサル、世界の運命を握った男」
ローマの興亡を描き下ろした迫力の歴史マンガです。ローマ共和制がどのように終焉し、帝政へと移行していった経緯を、カエサルの生涯とともにたどっていきます。人類初の大規模な共和国がどのような理由から崩壊していくのか、歴史に学ぶことで、政治史への関心と理解が養われます。世界史に名高いカエサルの人物録としてもドラマチックなストーリーを楽しめます。
岩波新書 シリーズ アメリカ合衆国史2「南北戦争の時代」
「大統領」を冠する大国アメリカが、どのような変遷を経て形成されていったか。その実態を「南北戦争」という内紛をさまざまな対立軸とともに描き、「奴隷国家」から「移民国家」への変貌をたどる一国史です。アメリカを理解するうえで避けて通れない時代の歴史をじっくり追うことができます。
構成・文/HugKum編集部