育休後に退職を検討中の方必見! リスクや気になるお金について知ろう

育児休業を取得した後に、職場に復帰せずに退職することは可能です。しかし、育休後の転職や退職には、保育園の認定を取り消されたり、転職先が見つからなかったりするリスクも考慮しなければなりません。退職金や失業手当の有無についても解説します。

育休後の退職は可能?

日本には子どもを養育する労働者が休業を取得できる「育児休業制度」があります。育休期間が終了した後、復職せずに会社を辞めるのはルール違反なのでしょうか?

育休後に退職したい理由

原則として「育休」は、職場復帰を前提として申請するものですが、育休中に事情が変わり退職せざるを得なくなるケースがあります。

育休後の退職を考える主な理由には「保育所の空きがない」「共働きになると、子の面倒を見る人がいなくなる」などが挙げられます。

勤務先と自宅が離れている人は「万が一のことがあったときに駆け付けられない」「育児と仕事の両立ができない」という不安も聞かれます。

退職を希望する理由の多くは子の養育に関するものですが、中には「別の部署に配属された」「仕事についていけるか不安」といった声も聞かれます。

退職することは可能

結論として、育休後に退職をしてはいけないという決まりはなく、本人が望めば退職は可能です。会社側が退職を望む人を強く引き留めれば、違法と見なされる可能性もあります。

「両立が難しい」「保育所が見つからない」などのやむを得ない理由であれば、会社側は退職を認めざるを得ません。

厚生労働省の雇用均等基本調査によると、2017 年4月1日~18 年3月 31 日までの1年間に育休を取得した女性のうち、復職した人は 89.5%、退職した人は 10.5%でした。全体の約1割の人が何らかの理由で退職をしていることが分かります。

参考:平成30年度 雇用均等基本調査 事業所調査 結果概要|厚生労働省

有給休暇の取得も

育休は、労働の義務が免除される「無給の休業期間」であるため、育休中に有給休暇を請求することはできません。ただし、育休後に職場復帰した後であれば、当然の権利として有給休暇が使えます。

復帰後に有給を消化し、その後に転職や退職するのはルール違反ではありません。会社側は「退職日が育休復帰日以降」である場合は、「職場復帰日から退職日までの期間」の有給消化を認める必要があります。

注意したいのが、退職日と育休終了日が同日である場合は有給休暇が請求できない点です。また、職場復帰した上での有給休暇は当然の権利ですが、会社側は快く思わないことも覚えておきましょう。

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育休後に退職するリスクは?

育休後の退職にはさまざまなリスクがあります。やむを得ない事情があるときは仕方がありませんが、リスクを減らすために一時的に復帰をし、しばらく様子を見てから退職をする手もあるでしょう。

保育園の内定が取り消しに

認可保育園への入園が決定した後に退職や転職をすると、自治体によっては内定が取り消しになる可能性があります。

認可保育園は、保育の必要性がある人を優先的に入園させるルールのため、どちらかが退職して共働きでなくなってしまうと、入所の優先順位が下がってしまうのです。

転職予定先の就労予定証明書を出した場合は「勤務中」ではなく「就労内定」で選考され、以前よりも保育園に入りにくくなることが考えられます。退職を決める前に「保育園の入所基準」を自治体に確認しておきましょう。

育児手当が受け取れないことも

育休中は「育児休業給付金(育児手当)」が支給されますが、育休後に退職をすると給付金が受け取れない恐れがあります。

本来は育児休業給付金は雇用継続給付の一種で、「育児休業終了後の職場復帰」が前提です。育児休業中に状況が変化したのであれば仕方がありませんが、育休前から退職を考えていた人は給付金の支給対象外と見なされます。

職場復帰せずに育休中に退職を申し出た場合は、「退職日を含む支給単位期間の一つ前の支給単位期間」で給付金がストップする点に注意しましょう。

参考:Q&A~育児休業給付~|厚生労働省

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育休後の転職は実際どうなの?

育休後に転職を考えた場合、新しい仕事と子育てを両立するのは容易ではないようです。周囲の理解やサポートを得られる人はよいですが、そうでない場合は現在の職場よりも負担が大きくなる可能性があります。

なかなか転職先が決まらない

育休後に立ちはだかるのが、転職活動の壁です。場合によっては小さい子どもがいるというと、不採用になるケースも少なくありません。

「急に休むのではないか」「繁忙期の残業を拒まれるのではないか」など、企業側にあまり歓迎されない傾向があるのです。

また、小さい子どもがいると、必然的に会社に求める条件が多くなります。「週に数回のリモート希望」「残業なし」など、自分が希望する就業条件と企業が提示する条件が合わず、話し合いの末に不採用となることもあるでしょう。

周囲のサポートが必要

育休後は、限られた時間の中で効率的に転職活動を行わなければなりません。親族に子どもをいつでも預けられるのであればよいですが、周囲にサポートしてくれる人がいない場合は、子育てと家事の合間を縫って面接に行くことになります。

育休後の転職活動をした人からは、「面接の時間を調節するのが大変」「転職先がゆっくりと選べない」などの声も聞かれます。ベビーシッターや一時預かり所を利用する手もありますが、転職活動が長引く場合は費用がかさんでしまうでしょう。

時短勤務などが難しくなる

育児・介護休業法には「短時間勤務制度」が設けられています。条件を満たした労働者が申し出た場合、企業側は1日の所定労働時間を原則6時間としなければなりません。制度を利用すれば保育所の送り迎えも可能になり、仕事と子育ての両立が図れるでしょう。

ただし 育児・介護休業法では、労使協定により「入社後1年未満の労働者」は時短勤務の対象から除外することが認められています。

転職先で時短勤務ができないことを考慮し、現在の職場で時短勤務を申請して働き続けることも検討してみましょう。

参考:両立支援のひろば|厚生労働省

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育休後の退職で気になるお金の話

育休後の転職は、すぐに仕事が見つかるとは限りません。就職せずに育児に専念すると決めた場合も、お金の不安がつきまといます。

また、育休後すぐの退職に「退職金」や「失業手当」がもらえるのかどうかは誰もが気になるところでしょう。

退職金は出る?

退職金とは、労働者が退職をする際に事業主から支給される金銭を指します。

法律上、会社に退職金の導入は義務付けられておらず、退職金が支給されるかどうかは会社の就業規則に左右されます。退職金のある会社であれば、育休後に退職した場合でも退職金は支給されるでしょう。

育児・介護休業法には「事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない」と記載があります。

ただし、育休中は「ノーワーク・ノーペイの原則(労働をしない場合は賃金の支払い義務が発生しない)」が適用されます。退職金の計算時に、育休期間が退職金の算定基礎となる勤続年数から除かれ、退職金の額が減る可能性があることも覚えておきましょう。

参考:両立支援のひろば|厚生労働省

育児休業給付金は返金が必要?

育休を取ると、休業開始時賃金日額50~67%×支給日数の育児休業給付金が支給されます。給付金は復職が前提であるため、「育休後に退職・転職してしまったら、返金が必要なのでは?」と心配になる人がいるようです。

結論から言えば、やむを得ない事情で復職できなかった場合、給付金を返金する必要はありません。

一方で、初めから退職するつもりで育休を取り、給付金を享受するのはルール違反です。退職予定の人の不正受給が判明した場合は、返金もあり得るでしょう。

失業手当の条件とは?

求職中の失業者は、一定の条件を満たすと「雇用保険(失業給付)」が受けられます。

失業中の安定した生活と、1日でも早い就職をサポートするために国から支給される給付金で、「退職した日以前の被保険者期間が12カ月以上あること」が基本的な条件です。

「育休後に退職した人は受給の対象外」というルールはありませんが、受給を受けるためには以下の全ての条件を満たす必要があります。「育児で求職活動ができない人」や「育児に専念するために退職した人」は、条件に当てはまらないため対象外です。

●積極的に就職しようとする意思がある
●健康状態・環境面などにおいて、いつでも就職できる能力がある
●積極的に求職活動をしているが職が見つからない

参考:Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~|厚生労働省

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育休後の退職を会社に伝えるポイント

育休や有給休暇を利用するのは法的に問題はありませんが、すぐに退職を決めると「復職せずに育休や手当だけをもらう人」というイメージを持たれてしまいます。円満に退職するためには、会社にどのように伝えればよいのでしょうか?

きちんと理由を伝えよう

育休は復職が前提の制度なので、退職せざるを得ないときはきちんと理由を伝えることが大切です。「一身上の理由で退職します」の一言だけでは、会社側としても納得がいかないでしょう。

会社は復職を前提として仕事のスケジュールを組みます。育休中は他の社員の業務の負担が大きくなっていた可能性も考えられるため、お詫びと感謝の気持ちを込めて誠実に対応するのがマナーです。

迷惑をかけないためにも、退職を決めた時点ですぐに伝える必要があります。育休中でも出社して伝えるのがマナーですが、外出が難しいときはメールではなく電話で伝えるのがベターでしょう。

一旦復職することも検討を

育児と仕事の両立は難しく、子どもと離れたくないという気持ちもあるかもしれません。しかし、やむを得ないケースを除いては、一旦復職することを検討しましょう。

退職の理由が「部署が変わった」「時短勤務を希望している」「育休を延長したい」などの場合、一度会社に相談することをおすすめします。仕事を続けたい意思をきちんと伝えれば、退職せずに悩みが解決するかもしれません。

子どもが生まれるとこれまでよりも多くのお金がかかり、子育てをしながらの転職活動は困難を極めます。この点も考慮し、退職を考えている人は「半年後」が一つの目安です。円満な退職を望むのであれば、繁忙期ではないタイミングに退職を申し出ましょう。

育休後の退職は慎重に

育休後に退職や転職をする場合、認可保育園に入りにくくなってしまったり、勤め先がなかなか見つからなかったりと悩みは尽きません。「もう少し仕事を続ければよかった」と後悔する人もいます。

子育てと仕事の両立に悩んでいるのであれば、正直な気持ちを会社に伝えてみましょう。日本にはさまざまな「両立支援制度」が準備されていますが、本人が申し出なければ適用されません。

育休や育児手当は復職を前提とした制度なので、育休後はできる限り復職をするのが望ましいといえます。やむを得ずに退職をする際は、退職の理由と謝意をしっかり伝えるのがポイントです。

 

構成・文/HugKum編集部

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