「白鳳文化」の特徴とは? 時代背景や代表的な美術作品を紹介【親子で歴史を学ぶ】

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「白鳳文化」は中国や朝鮮を始めとする、アジア諸国の影響を受けた国際色豊かな文化です。日本が一つの国家として本格的に始動した時期で、大らかで活気に満ちた作品が多く生まれたことでも知られます。白鳳文化の特徴と主な美術作品を紹介します。

白鳳文化の特徴

白鳳(はくほう)文化は、いつ頃、どのようにして発展したのでしょうか。白鳳文化の担い手や特徴を見ていきましょう。

律令国家建設期に花開いた仏教文化

白鳳文化は、7世紀後半から8世紀の初めにかけて、藤原京を中心に栄えた仏教文化です。645年の大化の改新以降、日本は本格的な律令国家として歩みはじめます。

天武(てんむ)天皇や持統(じとう)天皇を中心に、新しい国づくりに邁進(まいしん)するなか、遣唐使(けんとうし)がもたらした大陸の最新情報に刺激を受け、これまでよりも開放的で寛大な文化が花開きました。

藤原京に中国の条坊制を採用

律令国家の整備にあたり、天武天皇は、日本にも中国や朝鮮の王朝のような本格的な都城(とじょう)が必要と考えます。そこで天皇は、中国式の「条坊制(じょうぼうせい)」を採用した新しい都城・藤原京の建設に着手しました。

条坊制とは、街路を東西南北に碁盤の目のように配置する都市計画です。街を南北に貫く大通りを中心に、東西の街路「条」と、南北の街路「坊」が交わるのが特徴です。

藤原京は、持統天皇の代にはほぼ完成し、694年に日本の首都となります。710(和銅3)年の平城京遷都まで、持統・文武・元明(げんめい)の三代の天皇が居住しました。

漢詩文の流行と和歌の成立

7世紀の半ばに、朝鮮半島の国・百済(くだら)が、唐と新羅(しらぎ)の連合軍に滅ぼされ、多くの百済人が日本に亡命してきました。彼らの影響で宮廷では漢詩文が流行し、大友皇子(おおとものみこ)や大津皇子(おおつのみこ)ら皇族が優れた作品を残しています。

漢詩文の伝来は、日本古来の文学・和歌にも大きな影響を与えました。それまで口伝(くでん)だった歌は、漢字を使って表記されるようになり、五音や七音で構成する基本形式も定まります。

奈良時代に編さんされた『万葉集(まんようしゅう)』には、「額田王(ぬかたのおおきみ)」や「柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)」など、この時代に活躍した歌人の歌が多く収められています。

藤原京跡(奈良県橿原市)。蓮の花の奥中央に見えるのが、万葉集にも数多く詠われている畝傍山(うねびやま)。標高199m。天香久山、耳成山(みみなしやま)とともに、大和三山と呼ばれ、国の名勝に指定されている。万葉集では、「瑞山(みずやま)」とも詠まれている。
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白鳳文化を代表する仏像・彫刻

仏教の影響を強く受けた白鳳文化は、たくさんの優れた仏像が生まれたことでも有名です。国宝に指定されたものも多く、今も見る人の心を安らかにしてくれます。

【国宝】薬師寺「金堂薬師三尊像」

薬師寺(やくしじ)の金堂に祀(まつ)られる「薬師三尊像」(国宝)は、697年に寺の本尊として開眼(かいげん)法要が行われたとされる仏像です。「薬師如来」を中央に、向かって右側に「日光菩薩(にっこうぼさつ)」、左側に「月光菩薩(がっこうぼさつ)」が並んでいます。

薬師如来は、別名を「医王(いおう)如来」といって、病気の苦しみから人々を救ってくれる医薬の仏として親しまれています。左右の菩薩は太陽や月のように、すべての人々を平等に見守る存在です。三体とも、当時の最高技術を駆使して造られたと思わせる、流れるような美しい姿勢が特徴といえます。

なお、薬師寺は天武天皇が創建を思い立ち、妻の持統天皇が完成させた寺院です。寺院にも本尊にも、両天皇の思いが詰まっており、まさに白鳳文化を代表する作品といえるでしょう。

薬師寺(奈良市)。国宝の東塔(左)は、現存する建築で、唯一、奈良時代に造られた仏塔。薬師三尊像が祀られている金堂は、1976(昭和51)年に再建された。西塔は、1981(昭和56)年の再建。

【国宝】興福寺「銅造仏頭」

「銅造仏頭(ぶっとう)」は、天武天皇が飛鳥山田寺の本尊として造らせた、薬師如来像の頭部です。685年に開眼されたとの記録があり、白鳳文化を語るうえで欠かせない存在といえます。

仏像は1187(文治3)年に興福寺の東金堂本尊として移されますが、1411(応永18)年に落雷による火災で頭部以外は焼失してしまいました。焼け残った頭部は、本尊の台座に納められたまま忘れ去られ、1937(昭和12)年の東金堂解体修理の際にようやく発見されたのです。

白鳳時代の仏像に特有の、若々しく伸びやかな表情が印象的で、全身が残っていないことが大変惜しまれます。

興福寺東金堂(奈良市)。銅造仏頭が発見された東金堂は、国宝。現存する東金堂は、室町時代の1415(応永22)年に再建された6代目で、1998(平成10)年、世界遺産に登録された。

【国宝】法隆寺「阿弥陀三尊像」

法隆寺(ほうりゅうじ)の「阿弥陀(あみだ)三尊像」は、日本最古の「念持仏(ねんじぶつ)」として有名です。念持仏とは、個人宅に安置して崇拝されていた仏像のことです。

「阿弥陀三尊像」の持ち主は、天武天皇から聖武(しょうむ)天皇まで、長く宮廷に仕えた女官「県犬養橘三千代(あがたいぬかいのたちばなのみちよ)」と伝わっています。

宮廷内で強い力を持っていた彼女は、藤原不比等(ふひと)との間に生まれた自分の娘を、聖武天皇に嫁がせます。娘は皇族以外から出た初の皇后となり、一族の繁栄に貢献しました。

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白鳳文化を代表する絵画

白鳳文化が発展した時期に造られたとされる寺院や古墳の壁には、美しい壁画が残っています。それぞれの代表的な作品を紹介しましょう。

法隆寺「金堂壁画」

法隆寺は、7世紀の初めに、聖徳太子(厩戸皇子、うまやどのおうじ)が創建した寺院で、「金堂」や「五重塔」は、現存する世界最古の木造建築として有名です。金堂の外陣(一般の人々が拝礼する部分)の壁には、12面にわたって釈迦(しゃか)や阿弥陀がいる浄土の世界が描かれています。

インドの「アジャンター石窟寺院(せっくつじいん)」や、中国・敦煌(とんこう)の「莫高窟(ばっこうくつ)」に描かれた壁画とよく似ており、当時の日本が中国仏教の影響を強く受けていたことが分かります。

壁画は、アジア仏教美術の至宝として修復・保存が急がれていましたが、1949(昭和24)年に起きた火災で表面の彩色がほぼ失われてしまいました。

現在の法隆寺では、火災直前に撮影した写真原版を元に、デジタル化した画像をインターネットで公開しています。

法隆寺金堂壁画ガラス原板 デジタルビューア|Glass Photographic Plates of the Murals in the Kondō Hall of Hōryūji Temple―Digital Viewer―

高松塚古墳「壁画」

高松塚(たかまつづか)古墳は、直径18mほどの小さな古墳で、埋葬者が誰かも分かっていません。しかし1972(昭和47)年に、石室の内部に壁画(国宝)が見つかったことで一躍有名になりました。

高松塚古墳(奈良県高市郡明日香村国営飛鳥歴史公園内)。藤原京期に造られた高さ5mの二段式円墳。墳丘は、2009(平成21)年に、造られた当初の形に整備され一般公開されている。壁画は紆余曲折を経て、2020(令和2)年3月、12年かけて行われた保存修理が完了した。

 

東西南北の壁には、それぞれの方角を司る「四神(しじん)」が、天井には星座が描かれています。面積の広い東西の壁には、手前に男性、奥に女性で4人ずつ、計16人の人物がいます。

なかでも西壁に描かれた女性4人の絵は、色彩が鮮明に残っていたことから「飛鳥美人(あすかびじん)」と名付けられ、カラー写真で広く紹介されました。

1983年には、高松塚古墳の南に位置する「キトラ古墳」でも、同様の構図で描かれた壁画が発見されています。天井の天文図は、太陽・月・赤道などが描かれた本格的なもので、現存する中国式星図の中でも最も古いとされています。

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優れた仏教美術を残した白鳳文化

白鳳文化が栄えた時代、日本は律令国家として成長するために、唐や朝鮮から最新情報をどん欲に仕入れていました。特に、仏教は当時の為政者に大変重要視され、優れた仏像や壁画が多く残っています。

古代の日本で起こった国際化の波について、白鳳文化を通じて想像してみると、また新たな発見があるかもしれません。

時代背景をもっと深く知るための参考図書

小学館アーカイヴス ニッポンの国宝100「国宝 仏像」ザ・極み

国宝の仏像100体を写真とともに解説。この記事でとりあげた法隆寺の釈迦三尊像や、薬師寺の薬師三尊像も扱っています。実際に現地で仏像を見る前に、見どころガイドとしても役立ちます。

小学館版  少年少女学習まんが 日本の歴史2「飛鳥の朝廷」

この記事でご紹介した高松塚古墳。さて古墳とはどんな時代にどんな背景をもって生まれたのでしょう。古墳がさかんにつくられた時代の日本の様子をまんがで学ぶことができる一冊です。

小学館版  少年少女学習まんが 日本の歴史3「奈良の都」

本記事で多く登場した古代の天皇たちは、どのようにこの国を治めていったのでしょうか。飛鳥時代に続く奈良時代を、その後に国づくりの礎となる政策や文化とともに紹介する、歴史学習まんがの決定版です。

小学館 日本全国「万葉の旅」大和編

万葉集の魅力を、そのなりたちと美しいビジュアルでドラマティックに紹介する一冊です。教科書で知った古典の範囲を超えて、今の私たちに訴えかけてくる古の美意識に、普遍的な大和ごころを感じとれることでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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