SDGsウォッシュとは?意味や由来を解説
SDGsにまつわるごまかしを意味する「SDGsウォッシュ」という言葉をご存知でしょうか。SDGsウォッシュだけでなく、SDGsの意味も合わせて解説していきます。
SDGsにおけるごまかし・誇張表現
「SDGsウォッシュ」とは、SDGsに取り組んでいる企業のごまかしや見せかけを批判する造語です。都合のよいごまかしや体裁を取り繕うことを意味する「whitewash」という単語とSDGsを組み合わせたもので、ヨーロッパでよく使われています。
1980年代には環境への配慮をうたいながらも、実際には環境に悪影響を及ぼしている企業が多く見られました。こういった企業は「グリーンウォッシュ」と呼ばれて批判されており、これがSDGsウォッシュの由来となったのです。
持続可能な開発目標「SDGs」
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、持続可能な開発目標を意味する言葉です。2030年までによりよい世界を目指すため、2015年の国連サミットで採択されました。
貧困の解消やジェンダー平等の実現など、SDGsが掲げる開発目標は17個です。地球上の誰1人取り残さないことをテーマに、全ての人々が社会問題に取り組むことが奨励されています。
現在も地球規模での開発が進んでいますが、環境問題が深刻になるにつれて開発の持続可能性が考えられるようになりました。そのためには大きな影響力を持つ企業が、SDGsを意識する必要が出てきたのです。
企業がSDGsに取り組むメリット
SDGsは国際的に注目されている目標であり、積極的に取り組む企業も年々増えています。SDGsに取り組むことでブランドイメージが向上することが、大きなメリットです。
環境負荷の低減や社会活動など、SDGsに取り組む企業は社会貢献を果たしていると考えられます。製品にも付加価値が生まれ、エコや社会問題を意識する消費者からの支持を得やすくなるのです。
また、SDGsに取り組むことで国際的な評価が高まる場合もあります。海外進出に役立つだけでなく、グローバルな企業として人材が集まりやすくなる点もメリットの一つです。
SDGsウォッシュと批判される事例
企業のどのような行為が「SDGsウォッシュ」と見なされるのでしょうか。具体的な事例を挙げて検討していきましょう。
低賃金で重労働をさせるアパレル企業
アパレル企業には、ファストファッションを取り扱うブランドが多く存在します。そうしたブランドの中には、製品を低価格で提供するために人件費を安く抑えている企業もあるのです。
SDGsでは、個人の働き方や労働環境を重視しています。適切な給料が支払われていなかったり、多くの人が劣悪な環境で働かされたりしている状況は、SDGsの理念に反しているといえるでしょう。
海外では強制労働や児童労働など、過酷な労働環境で生産された原料を利用したメーカーの不買運動も起こっています。こうした現状が改善されないままSDGsを謳っている場合は、SDGsウォッシュの一例とされるでしょう。
脱炭素を掲げて石炭火力に融資する銀行
環境問題への意識が高まっていることもあり、国際的に脱炭素化の動きが進んでいます。メガバンクといわれる銀行も脱炭素化を支援していますが、その一方で火力発電所への出資を行っていました。
環境にやさしい社会をうたいながら、環境負荷の高い事業を支援するのもSDGsウォッシュです。SDGsに取り組むことで企業のイメージ向上が見込めますが、取り組み次第ではこのような批判を浴びる可能性もあります。
SDGsは、あくまでよりよい社会を実現するための取り組みです。言っていることとやっていることが違うと思われないよう、誠実に取り組まなくてはなりません。
SDGsウォッシュが企業に与える影響
SDGsウォッシュを行ってしまうと、企業活動にどのように影響するのでしょうか。考え得るデメリットを三つ紹介します。
投資家や取引先から信用を失う
企業がSDGsウォッシュを行うと、取引先や消費者からの信頼を失ってしまう恐れがあります。企業だけではなく、販売している製品やサービスのイメージダウンにつながる可能性もあります。
批判を受けて企業への投資を行う人が減少すると、株価も下がってしまいます。企業としての信用を失うことで、投資先としての魅力が低下してしまうのです。
ブランドイメージの低下によって資金を得るのが難しくなり、経営に影響が出てくる可能性もあります。
不買運動が起こる
従業員を劣悪な労働環境で働かせつつ、取り組みを誇張して発表するなどのSDGsウォッシュが判明した場合、商品の不買運動が起こる可能性があります。
これまでの企業のアピールは、表面的なものだったと見なされてしまうのです。
SDGsに取り組む企業を支持する消費者の中には、人権や社会問題に目を向けている人も多いでしょう。企業がSDGsウォッシュを行っていたことが判明すれば、こうした人たちを騙していたと思われてもおかしくありません。
実際に売上が大きく減少した企業もあるため、悪印象を持たれないような取り組みが必要とされています。
従業員の労働意欲が低下する
SDGsウォッシュは、従業員のモチベーションにも大きな影響を与えると考えられます。企業が虚偽の発表をしていたとしても、すべての従業員がその事実を知っているわけではないからです。
従業員の労働意欲が低下すると、仕事のパフォーマンスが下がり、製品やサービスの品質にも影響を及ぼします。社内の雰囲気が悪くなり、退職する人が増える可能性もあるのです。
従業員のモチベーションが下がることで、企業の評判も落ちてしまいます。優秀な人材を確保しにくくなるのも、SDGsウォッシュによるデメリットといえるでしょう。
SDGsウォッシュを見抜くコツ
SDGsを気に掛けている消費者にとって、企業がどのような取り組みを行っているかはとても重要です。SDGsウォッシュを行っている企業を見分ける方法について解説します。
途中経過や実績が公開されているか
代表的なSDGsウォッシュの例として、実績がないのに取り組みをアピールしているケースが挙げられます。そのため、その企業が本当にSDGsに取り組んでいるかを確かめるのが効果的です。
企業の公式サイトに目を通し、活動実績があるかどうかを確認してみましょう。途中経過や実績を公開しているなら、きちんと課題に取り組んでいるといえます。
たとえ実績があったとしても、内容に大げさな表現や虚偽が含まれている可能性もあります。根拠が薄く具体性に欠ける記述があれば、SDGsウォッシュの疑いがあるかもしれません。
取り組みが第三者に評価されているか
企業と直接的な関係を持たない第三者からの評価も重要です。独立した第三者機関を設けて評価を得ている企業は、消費者や投資家からも信頼されやすいでしょう。
また、企業が提供する製品やサービスが認証制度を受けている場合、他の企業と比べて信頼できるという印象を与えられます。SDGsに関する国際的な認証があれば、企業の取り組みが認められたとも考えられるのです。
第三者からの評価は、消費者にとって分かりやすい基準になります。SDGsウォッシュ企業を見極めるためには、認証制度や評価を意識して確認してみるのもよいでしょう。
トレーサビリティーが確立されているか
「トレーサビリティー」とは、製品に使われている原材料の調達から廃棄までを追跡できる状態を指しています。食の安全性とも大きな関わりを持ち、製品が倫理的に製造されているかを重視するSDGsとも共通する考え方です。
例えば、花王は2007年からパーム油の認証制度に参加しており、油を絞る工程のトレーサビリティーを完了しました。さらに、2025年までには生産農園のトレーサビリティーを実現しようと努力しています。
製品の原料の生産過程で過酷な労働が行われている可能性もあるため、トレーサビリティーが確立されれば、労働環境についても知ることが可能でしょう。
参考:
花王 | 2020年の進捗
花王 | 2021年の進捗
SDGsウォッシュを見逃さないで
環境や社会問題への意識が高まっている現在、SDGsは国だけではなく大きな影響力を持つ企業にとっても身近な取り組みとなってきました。
企業がSDGsウォッシュを回避するためには、単なるアピールに終始するのではなく、誠実に課題に向き合うことを意識する必要があります。
企業が正しくSDGsに取り組んでいるかどうかは、消費者にとっても重要な問題です。働き方改革や環境への配慮など、SDGsを掲げる企業は数多く存在しますが、さまざまな問題への取り組み方に注目していきましょう。
構成・文/HugKum編集部