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SDGsへの日本の取り組みとは?
最近、テレビや新聞などによく登場する「SDGs」。世界各国がSDGs達成に向けてさまざまな取り組みを進めているなか、日本でもさまざまな取り組みが始まっています。日本では具体的にどのような取り組みが行われているか見ていきましょう。
SDGsとは?簡単に説明すると…
「SDGs」は「エスディージーズ」と読みます。「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字をとった言葉です。
2015年に国連のサミットで採択されたもので、地球上で起きている環境や社会、経済などの問題を解決するために、2030年までに達成すべき17の目標が定められています。
SDGsの基礎知識などは以下の記事で紹介しています。
SDGsへの日本の取り組みを知ろう!
2015年に国連でSDGsが採択されたことを受けて、日本政府は翌年の2016年にSDGs達成に向けて、総理大臣をはじめ全閣僚をメンバーとする「SDGs推進本部」を設置。日本で具体的にどのような取り組みを行っていくか、その指針を策定しています。
SDGs実施指針とアクションプラン
SDGs推進本部は、SDGs達成に向けた“8つの優先課題”を定めた「SDGs実施指針」を策定。そして毎年、その実施指針にもとづいて、その年の重点事項として「SDGsアクションプラン」を発表しています。
8つの優先課題
- あらゆる人々の活躍の推進
- 健康・長寿の達成
- 成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
- 持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
- 省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会
- 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
- 平和と安全・安心社会の実現
- SDGs 実施推進の体制と手段
令和2年(2020年)12月にSDGs推進本部が発表した「SDGsアクションプラン2021」の中から、「SDGs実施指針」の8つの優先課題についての具体的な取り組みをいくつか紹介します。
日本の取り組み事例1:女性の活躍を推進
「あらゆる人が活躍する社会・ジェンダー平等の実現」に向けて、あらゆる分野における女性の活躍を推進するために、女性が育児・介護などを両立できる環境の整備や、性差についての無意識の思い込みの解消、女性に対する暴力の根絶などに取り組んでいます。
日本の取り組み事例2:新型コロナウイルス感染症への取り組み
「健康・長寿の達成」に向けて、2021年の大きな課題となっているのが新型コロナウイルス感染症への取り組みです。国内の医療・福祉サービス提供体制の確保をはじめ、危機に対する国際協力の推進、世界中の国々が公平にワクチンにアクセスできる取り組みを支援しています。
日本の取り組み事例3:食品ロスの削減
「省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会」の実現を目指す具体的事例のひとつに、食品ロス削減の取り組みがあります。食品の納品期限の緩和、フードバンクの活動を活用する仕組みの構築などが推進されています。
2050年にカーボンニュートラル(二酸化炭素排出量ゼロ)の実現を目指す、再生可能エネルギーの導入、循環型社会の構築なども重要な取り組みです。
日本の取り組み事例4:海洋プラスチックゴミ対策
「生物多様性、森林、海洋等の環境の保全」に向け、四方を海に囲まれた日本として、海洋ごみ、特に近年、海洋生態系への影響も懸念されているマイクロプラスチックの対策を進めていきます。
たとえば、海洋生分解性プラスチックの快活、船舶がもたらす海洋プラスチックごみの削減、漁業・養殖業が生み出す海洋プラスチックごみの削減などを進めています。また水産資源の持続可能な利用を促進するために、日本初の水産エコラベルの普及を進めています。
日本の取り組み事例5:子供の安全
「平和と安全・安心社会の実現」は、すべての基本といえます。特に未来を支える子どもたちの安全・安心は最も大切な課題です。子どもを不慮の事故から守るための取り組みや近年問題となっている児童虐待を防止するために、児童福祉司やソーシャルワーカーなどの専門性の強化、各種関係機関の体制強化・連携強化を進めています。
また国際的には、途上国における児童労働の撤廃に向けて、国際機関、NGO、民間企業などと連携しています。
SDGsへの日本の課題・問題点
各国のSDGsへの取り組みの達成度を比較したランキングで、日本は2021年に18位にランクインしました。ですが、フィンランド、スウェーデンなどの北欧の国々が上位を占めた一方で、日本は2017年の11位から下降傾向にあります。
各国の取り組みを分析した報告書で指摘された、日本の課題・問題点を見ていきましょう。
日本の課題・問題点1:ジェンダー平等の実現
国会議員に占める女性議員の割合が低いことや男女で賃金格差があることなど、日本ではジェンダー平等が進んでいないと指摘されています。
新型コロナウイルス感染拡大による景気低迷で、男女格差はさらに広まったといわれており、ジェンダーにかかわりなく、女性も活躍できる社会の実現は、日本が取り組むべき大きな課題のひとつとなっています。
日本の課題・問題点2:気候変動への具体的な施策
夏の暑さがますます厳しくなり、豪雨の被害が増えるなど、気候変動が進んでいることを私たちは身をもって実感しているはずです。
地球規模で問題となっている気候変動への取り組みが、日本は不十分と指摘されています。再生可能エネルギーの利用促進、二酸化炭素排出量の削減を今以上に推進する必要があります。
日本の課題・問題点3:海の豊かさを守る
海に囲まれた日本は、海から多くの恩恵を受けているにもかかわらず、海の存在が“当たり前”になってしまい、海に甘えているのかもしれません。
水産資源の乱獲、輸入による海洋生物多様性への脅威など、海の豊かさを守る取り組みも、もっと進める必要があります。
日本の課題・問題点4:陸の豊かさを守る
狭い国土に多くの人口が暮らしているため、私たちは山を切り開き、谷を埋めて、国土の利用を進めてきました。
絶滅のおそれのある種を守ることなど、陸の豊かさを守る取り組みも重要課題としてあげられています。
日本の課題・問題点5:パートナーシップ
途上国も含め、地球上のすべての国でSDGsを達成するためには、世界的なパートナーシップの強化が欠かせません。
日本は、国民総所得に対する政府開発援助(ODA)の割合などから、国際協力をさらに積極的に推進するよう期待されています。
SDGsへの取り組みを身近な例で紹介
世界中の国々で取り組みが進められているSDGs。難しい話や遠い話のように感じるかもしれませんが、実際の取り組みは、身のまわりの小さな取り組みの積み重ねです。
私たちの身のまわりで具体的にどんな取り組みが行われているのか、見ていきましょう。
企業の取り組み:LUSH
コスメブランドのLUSHでは、2016年と比較的早い段階からパッケージのない商品を販売しています。また使用済みの容器5個を持参するとフェイスマスク1個と交換して、容器をリサイクルする仕組みもあります。
企業の取り組み:イケア
スウェーデン発祥のイケアは、SDGsに配慮した商品開発に力を入れています。海洋プラスチックをリサイクルして布地にしたり、成長が早く再生可能な素材として注目されている竹を使った商品を販売しています。
企業の取り組み:イオン
環境に配慮した漁業に基づいた水産物に付けられる「MSC認証」。環境と地域社会や人権にも配慮した養殖水産物に付けられる「ASC認証」。
イオンは「海のエコラベル」と呼ばれるこの2つの認証をとった商品だけを集めた水産物コーナー「フィッシュバトン」を設置しています。
個人の取り組み:地域の食材を購入
生活している地域から離れた、遠方の場所で作られた食品は、輸送にトラックや飛行機などを使うことになり、その分だけエネルギーを消費することになります。
一方、同じ地域で作られた食材を選べば、そうしたエネルギーの削減につながります。私たちひとりひとりが「地産地消」を進めることが、SDGsの取り組みのひとつになります。
個人の取り組み:プラスチックのリサイクル
日本ではプラスチックゴミの処理が追いつかず、ゴミを海外に輸出していることをご存知でしょうか。そして日本のプラスチックゴミの輸出国のひとつだった中国は、ゴミの輸入を禁止する方針を打ち出しており、日本は自国だけでプラスチックゴミを処理することを迫られています。
日本のプラスチックのリサイクル率は24.8%(2013年度)と低く、さらにリサイクルを行っていくことが大切なのです。
個人の取り組み:冷蔵庫の食品を使い切る
私たちが無駄にして、捨てている食品は、1人あたり1日132g。これは1人あたり1年間で約48㎏にもなる量です。
食品を捨ててしまう理由として多いのが、食べ残しや食品を腐らせてしまうこと。食品ロスといわれる状況を防ぐために重要なことは、買い物の量を減らし、冷蔵庫の食品を常に使い切るように心がけること。小さな工夫の積み重ねが、食品ロスの削減につながります。
SDGsへの世界の取り組みを知ろう!
日本から世界に目を向けてみましょう。海外で行われているSDGsの取り組みを紹介します。
世界の取り組み事例1:スウェーデン「生ゴミで走るバス」
SDGs達成度ランキングで上位に入っているスウェーデンでは、街のあちらこちらに持続可能な社会を実現する仕組みが普及しています。
たとえば、街を走るバスは、生ゴミをガス化して燃料として使っています。生ゴミ1kgで2km走れるそうです。
世界の取り組み事例2:フランス「マスクアート」
新型コロナウイルス感染拡大の影響でマスクが欠かせない日常となった2020年。フランスでは、このマスクをアートの対象にして、社会問題について考えるきっかけを提起する「MASKBOOK」が盛り上がりました。
大気汚染や温暖化問題などをテーマに、コラージュされた奇抜なマスクが展示され話題となりました。
世界の取り組み事例3:フィンランド「マイボトル生活」
フィンランドは、国土の大半が森に覆われた自然豊かな国。そして世界でも数少ない、水道水を飲める国として知られています。
国民の多くが、水道水をマイボトルに入れて持ち歩き、市販の飲み物を買うことはめったにないそうです。
世界の取り組み事例4:アメリカ「ペットボトル飲料水の販売禁止」
アメリカのサンフランシスコ国際空港では、2019年からペットボトルを使った水の販売と提供が禁止されています。
空港内にあるレストランや自動販売機が対象で、代わりにリサイクル可能なアルミ缶などの容器を使って水を提供しています。また無料のウォーターサーバーを設置し、マイボトルの利用を推進しています。
世界の取り組み事例5:デンマーク「食品ロスを解消するアプリ」
デンマークでは食品ロスを解消するために「Too Good To Go」というアプリが開発され、今ではヨーロッパ各国で利用されています。
飲食店や食品メーカーで食品が余ると、廃棄せずにアプリを通して、一般消費者に販売するという仕組みです。
できることから取り組もう
日本でのSDGsの取り組みは、世界的に見るとまだまだ課題や問題点が多いようです。政府や企業だけに頼るのではなく、私たちも毎日の生活の中でSDGsの実現に取り組めることがあります。
ぜひ親子で身近なところからSDGsの話をして、小さなことから始めてみてください。
文・構成/HugKum編集部