SDGsの目標2は「飢餓をゼロに」。2030年までに達成すること

SDGsの目標2は「飢餓をゼロに」です。アジアやアフリカでは飢餓による栄養不足で子どもたちの命が失われている一方で、先進国では食品ロスが問題視されています。食の不均衡が起こる原因や飢餓が深刻化する地域の状況を解説します。

目標2「飢餓をゼロに」

SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットで全会一致で採択された国際目標です。2030年までに達成すべき課題を17の目標と169のターゲットによって示したもので、目標2では「飢餓をゼロに」を掲げています。

参考:SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省

必要なエネルギーを摂れない人がいる

SDGsでは環境問題や気候変動、格差の拡大といった人類が抱える悩みを解決し、持続可能なよりよい未来を実現していくことを目標としています。目標2は「飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する」がテーマです。

「飢餓」とは長期間にわたって十分な食物が摂取できず、栄養不足で軽度な運動なども困難になる状態を指します。「2020 The State of Food Security and Nutrition in the World」によると、世界の飢餓人口は6億9000万人と推定されています。

参考:2020 The State of Food Security and Nutrition in the World

栄養不良が多くの子どもの健康を奪う

世界中の5歳未満の子どものうち、3人に1人以上が栄養不足です。慢性的な栄養不良は消耗症や低体重などを引き起こし、最悪の場合は死に至ります。

かろうじて命をつないだとしても、栄養不良が心身や知能の発達を阻み、社会生活がまともに送れないのが現実です。慢性的な栄養不良が及ぼす社会・経済への影響は大きく、経済成長や人間開発の面で大きな遅れをとる国もあります。

目標2のターゲットとしては、「貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする」や「2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消」などが設定されています。

飢餓が深刻な世界の地域

飢餓の深刻度は国や地域によって差があります。世界の中でも、飢餓の状況が厳しい場所は一体どこなのでしょうか。

最も飢餓人口が多い「アジア」

国連5機関が発表した報告書によると、2030年までに「飢餓ゼロ」を達成するのは困難な見通しです。その理由の一つに、新型コロナウイルスのパンデミックにより、急性的な飢餓が増加していることが挙げられます。

地域別に飢餓人口を見たとき、飢餓人口が最も多い地域は「アジア」です。特にミャンマーの飢餓は深刻化の一途を辿っており、ヤンゴンのスラム街に住むほとんどの住民は食料を買うために借金をしています。

ミャンマーは「クーデター」や「ロヒンギャ難民」といった数々の問題を抱える国です。2021年のクーデター以降は、国際社会からの支援物資の搬入を国軍が拒み、貧困層に必要な食料が届けられていません。

参考:2020 The State of Food Security and Nutrition in the World

急激な発展のかげに取り残されていく人々も。画像はミャンマー・ヤンゴンの街並み

約2割が栄養不足とされる「アフリカ」

ユニセフによると、飢餓人口の半数以上がアジア、1/3以上がアフリカに集中しています。アフリカでは飢餓人口が急増しており、人口の約2割が栄養不足です。

特にウガンダなどのサハラ以南のアフリカでは、栄養失調で亡くなる子どもが多いのが現実です。大人の知識不足が原因で食事内容が偏ったり、正しい調理がなされなかったりして健康状態が維持できないのです。

「深刻な水不足」にも悩まされており、濁った川や沼の水を飲んで感染症や下痢になる子どもが後を絶ちません。

参考:世界の飢餓、新型コロナウイルスで悪化 アフリカ人口の2割以上が栄養不足 食料と栄養に関する国連合同報告書

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なぜ飢餓は解消しない?

飢餓が起こる原因や事情は、国・地域によって異なります。紛争や内戦、災害などによって引き起こされるケースもあれば、地理的な問題が影響している地域もあるのです。

紛争が多発

紛争が多い国は、貧困や飢餓が慢性化しやすい傾向があります。「紛争」とは、宗教・民族・文化などのさまざまな理由で起こる争い全般です。広くは戦争や内戦も紛争の一種で、武力行使で多数の人が犠牲になったり、住まいや農地を捨てて難民にならざるを得なかったり危機的状況に追い込まれます。

紛争地では仕事がないため、貧困は避けられません。また、難民キャンプでは食料の確保が難しく、小さな子どもや高齢者はもちろん、大人でさえも飢餓状態に陥ります。

洪水、干ばつなど自然災害の影響

発展途上国に多いのが、自然災害の影響です。アジアやアフリカには農業で生計を立てている人が多く、自然災害で収穫量が減ると生活基盤が大きく崩れてしまいます。

「食事の量や質を下げる→健康を害する→働けなくなる」という悪循環が行きつく先は貧困や飢餓です。実際、食事は1日に1回のみで、ミミズや雑草などを食べて命をつなぐ人々もいます。

今後、地球温暖化による気候変動や異常気象が多発すれば、自然災害による飢餓はますます拡大するでしょう。そのため目標2のターゲットとして、気候変動や自然災害に適応して「持続可能な食料生産システムを確保し、強靭な農業を実践する」ことを掲げています。

土壌の荒廃・干ばつも飢餓の要因に

経済状況の悪化

国の経済状態が悪化すると、国民の生活は苦しくなります。2020年は新型コロナウイルスの影響による雇用喪失が発生し、世界中で貧困問題が急増しました。パンデミック以前から多くの低所得層・貧困層を抱えていたアフリカやアジアの国々は、さらに苦しい状況に陥ったといえます。

また、 新興国の経済成長や人口増加などで食料需要が増えると、食料価格が高騰します。アフリカの一部の地域では、5年前の平均と比べて食料価格が40%近くも上昇し、低所得層を苦しめているのが現状です。

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日本は飢餓とは無関係?

飢餓というとアフリカやアジアの国々を思い浮かべますが、日本も無関係ではありません。飢餓や貧困の裏側で、日本では「食品ロス」が大きな問題となっているのです。

小麦や大豆、牛肉などは輸入頼み

食料自給率が低い日本は、海外からの輸入が途絶えると自国で十分な食料が確保できない可能性があります。

カロリーベースでの食料自給率は、1965年の時点で73%でしたが、その後は低下傾向で推移し、2020年はわずか37%です。中でも大豆は6%、小麦は16%、牛肉は35%と自給率が極めて低く、ほとんどが海外からの輸入です(2019年)。

食料自給率の低下には、日本人の食生活の変化が深く関係しています。米や野菜中心の食生活から、パンや肉が中心の「欧米式」に変化したことで、国内生産量が少ない小麦や牛肉、油脂類の消費が増加しました。

また「農地面積の減少」や「少子高齢化による農業の担い手不足」などで、日本の農業が衰退していることも食料自給率の低下の大きな原因です。

参考:
日本の食料自給率:農林水産省
食料需給表 令和2年度

1人あたり年間45kgの食料を廃棄

世界の先進国を中心に「食品ロス」が大きな問題となっています。食品ロスとは、食べられるのに廃棄されてしまう食品のことです。

日本人の国民1人あたりの食品ロス量は1日約124g、年間では約45kgといわれています。食料自給率が低いにもかかわらず、日々多くの食品を廃棄しているのが日本の現状です。

食品ロスが増えると、生産プロセスにおける資源や労力が全て無駄になります。さらにゴミ処理に多額のコストがかかり、処理で発生する温室効果ガスは自然環境に影響を与えるでしょう。

日本を始めとする先進国は、食品ロスと飢餓という「食の不均衡」に向き合い、廃棄量を減らす努力をしなければなりません。

参考:食品ロスとは:農林水産省

「食」への理解を深めよう

飢餓をなくすためには、一人一人が「食」への理解を深めることが大切です。世界の飢餓や支援状況に目を向けると同時に、私たちの食卓を支える「日本の農業の未来」についても考える必要があります。

国連WFPの受け手主体の支援

「国連世界食糧計画(国連WFP)」は、飢餓の撲滅を使命とする国連機関の一つです。国連WFPでは、貧困や飢餓に苦しむ人々にさまざまな食糧支援を行ってきました。

これまでの食料支援は「飢えている国々に余っている食料を分け与える」意味合いが強かったですが、2000年以降は支援のあり方を根本的に見直し、「受け手主体の支援」へと移行しています。

受け手主体の支援では、「どのような方法で何を受け取るか」が受け手に委ねられます。2000年代半ばからは食料を購入するための現金支援が導入され、受け手は自分の意思で食料を手に入れて、食事を取り仕切ることができるようになりました。

また食料による支援では、ただお腹を満たすだけでなく「食物の栄養素」や「質」なども考慮されています。

最新の農業を知ろう

世界的な食料不足と農業労働人口の減少が課題となる中で、日本では「スマート農業」が注目されています。スマート農業とは、情報通信技術(ICT)やロボット、AIなどを活用した次世代型の農業です。

「休めない・汚れる」といった農業のイメージが変わり、ハイテク農業に興味を持つ若者が増えることも期待したいところです。次のような最新技術の活用によって、超省力化・超自動化が実現すれば、少人数で生産性の高い農業ができるようになります。

・ドローンによる農薬散布や施肥
・自動収穫ロボット
・センサーによる「ほ場」の管理
・データで生育状況や生産量を予測

親子で食の大切さを学ぼう

飢餓は発展途上国だけの問題と捉えられがちです。しかし飢餓や食料不足の原因には、食品ロスを生む日本や先進国が関係していることを忘れてはいけません。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響もあり、SDGs目標2の「飢餓をゼロに」は2030年の達成が難しい状況です。個人ができることはわずかですが、親子で食の大切さを学び、食品ロスを減らすことは飢餓の減少に確実につながるでしょう。

参考文献:
10歳からの図解でわかるSDGs「17の目標」と「自分にできること」がわかる本 まなぶっく 平本 督太郎、メイツ出版

構成・文/HugKum編集部

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