「発展途上国」という言葉を、ニュースなどで聞いたことがあるでしょう。しかし、発展途上国の基準や「後発開発途上国」との違いなどは、知らない人が多いのではないでしょうか。そこで、発展途上国の基準や抱える諸問題、どのような支援が行われているのかを解説します。
発展途上国とは
今まで、発展途上国という言葉は耳にしたことがあるはずですが、どのような基準で「先進国」と「発展途上国」とに分けられているのでしょうか。まずは、その基準や、発展途上国として区分されている国々、後発開発途上国との違いについて見ていきましょう。
OECDの基準とリスト
1961(昭和36)年、世界経済の発展に貢献することを目的として「経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development:OECD)」が設立されました。日本が加盟したのは、64年です。
そのOECDの開発援助委員会では、1人当たりの国民総所得(Gross National Income:GNI)など、いくつかの指標を基準にし、先進国や発展途上国を区分しています。現在は、アフガニスタンやバングラディシュ、ベナン、スーダン、ウガンダなどが発展途上国に挙げられています。
後発開発途上国との違い
発展途上国のなかでも、さらに経済開発が遅れた国のことを、後発開発途上国と呼びます。
後発開発途上国は、1人当たりのGNIだけでなく、栄養不足人口の割合や5歳以下乳幼児死亡率、妊産婦死亡率、中等教育就学率、成人識字率を指標化した「HAI(Human Assets Index)」や、外部ショックからの経済的脆弱(ぜいじゃく)性を表した「EVI(Economic Vulnerability Index)」によって判断されます。当該国の同意が前提となり、現在認定されている国は、世界で47カ国です。
アジアでいうと、アフガニスタンやバングラディシュ、カンボジア、ラオス、ミャンマーなどが当てはまります。
参考:後発開発途上国(LDC:Least Developed Country)|外務省
発展途上国が抱える問題
先進国である日本では考えにくいような問題を、発展途上国は抱えています。貧困・教育・環境の三つの視点でひもといてみましょう。
貧困問題
発展途上国では、十分な食事を得られず、飢餓状態で苦しんでいる人が数多くいます。
健康的な生活を送るためには、基礎代謝量に加え、活動に適したエネルギーを摂取しなければいけません。しかし、「国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations:FAO)」がまとめた報告書によると、世界人口の約10%にあたる人が、飢餓に苦しんでいることが分かっています。
地域別に見ると、アフリカが最も飢餓人口が高くなっています。特に、サハラ砂漠以南の地域では、人口の約20%が栄養不足に陥っているのです。
教育問題
貧困がゆえに、十分な教育を受けられない子どもも多くいます。発展途上国では、5人に1人くらいの子どもが学校に通えない状況です。
教育を受けられずにいると、読み書きができないため、安定した仕事に就くこともままなりません。また、インターネットや本などから情報が得られることを知らなかったり、そもそも文章が読めなかったりするため、生きるうえで必要な知識を得られないこともあります。
教育問題については、男女の格差も問題です。識字率が低い国であるニジェールでは、識字率は男性35%、女性15%と開きがあります。
環境問題
また発展途上国は、日本で公害が起こっていた頃(戦後の高度経済成長期、昭和30年代)のような、劣悪な環境問題を抱えていることも少なくありません。急激な開発や工業化を行った一方で、環境資源の適切な管理がなされておらず、環境汚染の問題が深刻化しているのです。
大気汚染や水質汚濁、熱帯林の減少、野生生物種の減少、砂漠化などが起こっています。
発展途上国への支援活動
発展途上国へは支援を行うこともできます。日本が行っている国際支援だけでなく、個人でできる支援もあるので、是非知っておいてください。
世界共通の目標のSDGs
近年「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」という言葉が浸透してきました。SDGsは、2030年までに、持続可能でよりよい世界を目指す国際的な開発目標で、世界共通の目標として掲げられています。
SDGsが掲げる17の目標のなかでは、「目標1:貧困をなくそう」「目標2:飢餓をゼロに」など、発展途上国に対する開発協力の強化や投資の拡大が指標とされています。これらは、世界一丸となって問題を解決するために取り組むという、強い意志の表れといえるでしょう。
日本が行っている国際支援
日本では、発展途上国へ低い利子でお金を貸したり、無償で贈ったり、産業・農業・教育などの技術を教えたりするなどの支援活動を行っています。
発展途上国といっても、国によって状況が異なります。そのため、その国にあった支援を取捨選択する必要があるのです。日本は、世界全体で見ても、トップクラスの援助額を捻出(ねんしゅつ)して提供しています。
私たち個人でできる支援
私たち個人でも、発展途上国へ支援することができます。発展途上国を支援している団体へ寄付する、ボランティアツアーやスタディーツアーに参加することで実現可能です。
また、買物の際に、価格が安い物を選ぶのではなく、その商品の背景について考えることも大切です。
「フェアトレード」と呼ばれる商品を選ぶことで、子どもなど弱者の労働力を搾取(さくしゅ)していないか、適正な価格で取引がされていて、生産者の生活が適切に守られているか、発展途上国の労働環境にまで思いを巡らせてみましょう。
発展途上国には、さまざまな支援が必要
日本で生活を送っていると、貧困のため栄養不足に陥ることや、十分な教育を受けられずに読み書きできない人がいることなどに気付きにくいでしょう。
しかし、現在でも発展途上国では、さまざまな問題を抱えています。国際情勢を理解したり、個人でもできる支援を意識することで、少しずつよい方向へ向かっていきたいものです。
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構成・文/HugKum編集部