SDGs 目標1「貧困をなくそう」。子どものためにできることとは?

SDGsの目標1は「貧困をなくそう」です。世界中には、1日1.9ドル未満で生活する極度の貧困層が7億人以上いるとされています。貧困は教育面や医療面での格差を生みます。貧困の連鎖を断ち切るため、私たちにできることは何でしょうか。

目標1「貧困をなくそう」

SDGs(持続可能な開発目標)の1番目に掲げられたテーマは、「貧困をなくそう」です。SDGsは、MDGs(ミレニアム開発目標)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択されました。先進国と発展途上国が協力して達成すべき目標を17のゴールと169のターゲットで示しています。

参考:SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省

7億人強が1日約200円で生活

目標1のテーマは「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」です。ターゲット1.1には「2030年までに、極度の貧困をなくすこと」が掲げられています。極度の貧困とは、国際貧困ラインである「1日あたり1.9ドル(=200円前後)」で暮らしている人々を指します。

「国際貧困ライン」は、世界各地の物価データを基に算出されます。2005年の時点では1.25ドルでしたが、現在は1.9ドルが基準です。世界銀行の調査によると、極度の貧困状態にある人は、推定7億人以上といわれています(2015年)。

ユニセフと世界銀行の分析によれば、6人に1人(3億5600万人)の子どもが貧困にあえいでおり、新型コロナウイルス感染症の世界的流行以降はその数が大きく増加することが懸念されています。

参考:
1年を振り返って:14の図表で見る2019年
子ども6人に1人が 極度の貧困で暮らす ユニセフと世界銀行による分析

貧困への取り組みはSDGsの1番目の目標。画像はカンボジアの貧民街

原因はさまざま

貧困の原因は国や地域ごとに異なりますが、代表的な原因には以下が挙げられます。

・紛争や内戦
・自然災害
・資源の少なさ
・独裁政権
・人種・宗教・性別などによる差別
・教育格差
・インフラ整備の遅れ
・国際社会からの援助の不足

貧困層が多い国は政治汚職が蔓延していることが多く、国際的な支援金が貧困層に行き渡らないのが実情です。国際支援に頼り切りになり、経済的な自立ができない国も少なくありません。

インドの「カースト制」のように、その地域に昔から根付く社会階層や価値観などが貧富の差を生んでいるケースもあります。

貧困の連鎖を止める必要がある

親が貧困の場合、その子どもも貧困に苦しむケースが多いことが分かっています。その原因の一つが、貧困による「教育格差」です。

教育を受けられていないと知識や技術が不十分なことが多く、収入の高い職業に就くことが難しくなるでしょう。親となっても、子どもに教育を受けさせるためのお金がなく、その子どもも低所得層となる可能性が高いのです。

公益社団法人日本ユネスコ協会連盟では、学びたくても学べない人々のために「世界寺子屋運動」を行っています。開発途上国の子どもや読み書きのできない大人に学びの場を与え、貧困の連鎖を断ち切るのが目的です。

参考:世界寺子屋運動  公益社団法人日本ユネスコ協会連盟

貧困が深刻な地域と生活

日本も社会階層による相対的貧困が問題となっていますが、世界では「住む場所がない」「食べ物がない」など、人間として最低限の生活を送ることさえできない絶対的貧困にあえぐ人が大勢います。

貧富の差は世界の都市に共通する問題。画像はインド・ムンバイ

インドを始め南アジアには貧困層が多い

世界の中で貧困層が多い地域は、アフリカや南アジアに集中しています。貧困というと、サハラ以南のアフリカ諸国をイメージする人が多いですが、「インド」「バングラデシュ」「ネパール」などの南アジアの貧困も深刻です。

世界銀行の開発研究グループのデータによると、インドの貧困層は世界の貧困層の約1/4を占める1億7000万人以上です。原因はさまざまですが、「カースト制(ヒンドゥー教の身分制度)」や「児童婚」などの風習も影響していると考えられます。

ネパールにも「職業カースト」の風習が残っており、階層の底辺にいる人々には職業や教育の自由が均等に与えられていません。

ゴミ山に住む、靴が買えない

ゴミを集めて生活をする人々は「スカベンジャー」と呼ばれます。ゴミ焼却施設が整備されていないフィリピンには多数の「ゴミ山」があり、スカベンジャーの生活の場となっているのが現実です。

スカベンジャーはゴミ山の中から売れるものを探し、ジャンクショップに持ち込んで換金します。プラスチックやペットボトルはキロ単位で集めると数十円になるため、貧困層にとっては大切な収入源なのです。

貧困層の人の多くは靴を買うお金がなく、裸足で生活をしています。不衛生なゴミ山を裸足で歩き回るので、「土壌伝播蠕虫」を始めとする感染症にかかることも珍しくありません。

子どもが働かざるを得ない環境

貧困地域では「児童労働」が大きな問題になっています。児童労働とは、就業最低年齢に満たない子どもたちが外の労働に従事することです。世界には、農園や砕石場などで働く子どもが推定1億人以上いるとされています。

子どもたちが労働に従事する理由の多くは「家計を支えるため」ですが、「女性に教育は必要がない」という偏見や「子どもも働いて当たり前」という考えも影響しているようです。

1990年代以降は、先進国の企業の多くが「安い労働力」を求めてアジアやアフリカに進出しました。安い労働力の裏には児童労働による搾取があり、途上国だけで解決できる問題ではないことは明らかです。

15歳未満(途上国では14歳未満)の子どもが労働に従事することは、教育の機会を奪う他、健全な身心の発達を阻害する恐れがあります。

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日本にも貧困問題が存在

日本では「ひとり親家庭による相対的貧困」や「ヤングケアラー」が社会的な問題となっています。衣食住に事欠く絶対的貧困とは異なり、状況が外から見えにくいのが特徴です。

ひとり親家庭の約半数が相対的貧困

その国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない世帯は、「相対的貧困」と呼ばれます。日本では「ひとり親家庭」の相対的貧困率が50%を超える状態です。

貧困家庭では、子どもが十分な食事ができなかったり、教育の機会が得られなかったりするケースが多い傾向があります。日本財団の調査研究によると、2019年の子どもの貧困率は13.5%で、約7人に1人が相対的貧困に苦しんでいることが分かりました。

参考:子どもの貧困対策 | 日本財団

ヤングケアラー問題も

相対的な貧困家庭では、「ヤングケアラー」の問題も浮上しています。ヤングケアラーとは、大人に代わって家事や介護を担う18歳未満の子どものことです。

・慢性的な病気や障害がある親の介護・看病・身の回りの世話をしている
・親に代わり、幼い兄弟の世話をしている
・日本語が第一言語ではない家族の通訳をしている
・家計を支えるために労働をしている
・アルコール・ギャンブル・薬物依存の問題を抱える家族をケアしている

ヤングケアラーは、「授業についていけない」「グループで孤立する」「睡眠不足で体調を崩す」「将来の職業の選択肢が少ない」などの問題を抱えています。

日本における子どもを支援する取り組み

自治体や民間団体では、貧困家庭やひとり親家庭の子どもを支援するさまざまな取り組みを行っています。寄付やボランティアなど、「個人ができるサポート」についても紹介するので、自分にできることを探してみましょう。

子ども食堂

「生活は苦しいが極貧ではない」という家庭の親は、貧困状態である自覚がなく、周囲に自分からサポートを求めない傾向があります。こうした家庭の子どもは、他の子どもと同じに見えて、実際は十分な食事ができていない可能性が高いのです。

極貧の一歩手前の子どもたちを救う取り組みの一つに、「子ども食堂」があります。日々の食事に困難を抱える子どもや子育て中の親、引きこもりの若者などに無料または低価格で食事を提供するもので、地域住民や自治体、NPO団体が主体の取り組みです。

「こども食堂ネットワーク」や「NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ」などでは、寄付や食料の提供を募っています。子ども食堂の運営は、行政や全国からのサポートが頼みの綱であるため、SDGs目標1への取り組みとして寄付で支援するのもよいでしょう。

参考:
こども食堂ネットワーク : こども食堂を手伝いたい人
むすびえ NPO法人 全国こども食堂支援センター

ステップアップ塾

「ステップアップ塾」は、家庭のさまざまな事情で塾に通えない小学生・中学生を支援する食事付き個別指導型の塾(無料)です。

家庭の貧困が原因で十分な教育が受けられない子どもは、「学力が低い→学歴が低い→高収入の仕事に就きにくい」という貧困の連鎖の中にいます。ステップアップ塾の目的は、親の収入の差による「教育格差」をなくし、子どもを貧困の連鎖から救うことです。

運営団体は「NPO法人維新隊ユネスコクラブ」で、全国のステップアップ塾の運営資金は企業や個人からの寄付金や民間からの助成金などによってまかなわれています。寄付金の他、高校生・大学生・一般人のボランティア講師も募集しているため、自分ができる形で子どもたちを支援できます。

参考:教育格差是正に向けて「ステップアップ塾」事業

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少しの優しさで救われる人がいる

SDGsの目標1は「貧困をなくそう」です。衣食住に困る絶対的貧困層はアフリカや南アジアに多く、新型コロナウイルス感染症流行以降はその数が増加傾向にあります。一方、先進国の日本では目に見えにくい相対的貧困の家庭が増えており、子どもたちにもその影響が及んでいるのが現状です。

貧困層を減らすには、募金やボランティアといった「個人の力」が欠かせません。特に次世代を担う子どもたちを貧困の連鎖から救うことは、国や世界のよりよい発展にもつながるので、自分にできることを探して実践してみましょう。

構成・文/HugKum編集部

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今回の記事で取り組んだのはコレ!

  • 1 貧困をなくそう

SDGsとは?

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