世界の飢餓問題の現状
アフリカやアジアでは飢餓人口は未だに増え続けており、世界的な課題といえます。飢餓問題の現状について、詳しく見ていきましょう。
増加し続ける飢餓人口
飢餓とは、長い間十分な食事を摂取できずに栄養状態が悪化し、栄養不足で生活や生存自体が脅かされている状態のことです。2017年時点の飢餓人口は8億2100万人といわれており、全世界の約9人に1人が飢餓状態にある計算になります。
飢餓には「突発的な飢餓」と「慢性的な飢餓」の2種類があり、戦争や災害による食糧不足で発生するのが突発的な飢餓です。一方、慢性的な飢餓は政治や経済、農業の生産性などが原因で、食糧支援だけでは根本的な解決になりません。
アフリカやアジアを中心に、現在も飢餓に苦しむ人口は増え続けています。収入の低さや、食糧供給が人口の増加に間に合っていないことが主な原因です。
参考:世界の飢餓人口の増加は継続ー最新の国連報告書 | World Food Programme
命を落とす子どもたちも
飢餓による栄養不足は、子どもたちにも深刻な影響を及ぼしています。途上国の中には、紛争に加えて干ばつなどの自然災害にさらされている国も少なくありません。体力のない子どもは食糧不足が原因で亡くなることもあるのです。
長期間に及ぶ栄養不足は肉体的な発達を阻害するだけでなく、知的障害を引き起こす可能性もあります。たとえ命が助かったとしても、飢餓によって心身の成長に遅れが出た場合、子どもの将来にも影響を与えかねません。
飢餓問題が解決しない理由
長年にわたって存在している飢餓問題ですが、これだけ文明が発達した現在においてもなぜ解決できないのでしょうか。その理由を三つ挙げて解説していきます。
インフラが整っていない
多くの人が飢餓に喘いでいる現状がありますが、実は食糧そのものが足りていないわけではありません。1人当たりが年間に消費する食べ物の量を180kgとした場合、食糧の年間生産量は総人口が消費する量の2倍近くになります。
にもかかわらず飢餓が起こるのは、全ての地域に食糧が行き渡っていないのが原因です。私たちが口にする食品は、加工されて店頭に並んだものがほとんどですが、途上国では物流のインフラが整っていません。
一方で多くの国では、フードロスが発生するほど食べ物が余っています。廃棄される食料を、途上国へと運搬するシステムがないことも大きな課題です。
慢性的な貧困に苦しむ人々が飢餓から抜け出せるよう、継続的な支援を行うことも必要になります。
なくならない紛争
代表的な飢餓の原因として挙げられるのが「紛争」です。2017年の国連の発表によれば、近年減少傾向にあった飢餓人口が再び増加し始めたのは、紛争によるものとされています。
8億人を超える飢餓人口の6割近くを占める人々が紛争地域で生活していることからも、紛争によって深刻な食糧不足が起きていることがわかります。難民として避難した人々は、満足な食料を確保するのが困難です。
現在も食糧支援が行われていますが、栄養失調に陥っている人は少なくありません。飢餓問題を解決するには、多くの地域で起こる紛争を解決することも重要です。
参考:
世界の食料安全保障と栄養の現状
飢餓の解決策は?飢餓の現状と原因を知ろう World Vision
自然災害による食糧不足
地震や津波などの大規模な自然災害も、食糧不足につながる原因の一つです。作物の収穫に影響が出るだけでなく、家や仕事を失う人が大量に発生し、経済的にも大きなダメージが生じます。
途上国では水源を雨水でまかなっている地域も多く、作物の生産には雨が欠かせません。そのため作物は天候の影響を受けやすく、自然災害が発生すると安定して食料を生産することが難しくなります。
飢餓人口が高いアフリカやアジアは、干ばつや台風などの自然災害が多い地域です。近年は、地球温暖化が進み世界中で異常気象が発生しているため、これらの地域も以前より深刻な被害にみまわれる恐れがあります。
日本でも飢餓は起きている
飢餓が起こっているのは途上国だけではありません。先進国である日本でも、飢餓は発生しているのです。国内の飢餓問題について説明します。
相対的貧困層の飢餓
貧困には生活自体が困難になる「絶対的貧困」の他に、「相対的貧困」というものが存在します。相対的貧困とは、その国の平均と比べて相対的に貧しい状況を指し、日本では人口の約15%が該当します。
パソコンやスマホなどの電子機器を持っており、一見普通に生活ができているように見えても、実はその日の食事に困っている家庭も珍しくありません。
相対的貧困は、見た目などから判断しにくいのが特徴です。国内ではひとり親家庭が増加しており、7世帯あたり1世帯が相対的貧困状態にある状態です。非正規雇用の労働者が増え、親の収入が減っているのも飢餓が発生する原因といえるでしょう。
飢餓をなくすための取り組み
「子ども食堂」は、経済的な事情で栄養不足に陥っている家庭のために自治体やNPOが低価格で食事を提供する、貧困問題対策の代表的な取り組みです。この取り組みは、悩みを抱える子どもたちが安心して過ごせる場所としての役割も果たしています。
また、ひとり親家庭への経済支援として「児童扶養手当」が支給されています。ひとり親家庭を対象とした低利子での貸し付けなども、政府が行っている経済対策の一つです。
その他、日本は食糧自給率が低く、食料の多くを輸入に頼っているのが現状です。国内での生産量を増やすため、農業に取り組む若者への支援も行われています。
飢餓問題解決のために私たちができること
飢餓問題は長年にわたって解決しておらず、解決には長い時間を要するでしょう。しかし、少しでも早く問題が解決するよう、私たちが日頃の生活から実践できる三つの行動を紹介します。
フードロスを減らす
食糧不足を解消するには、廃棄される食料を減らすことが重要です。食べ物を残さず食べたり、不要な買い物を控えたりするように心がけましょう。
フードロスが出ると必要な人に食料が行き渡らなくなるだけでなく、処分のために大量の温室効果ガスが排出されます。地球温暖化が進行すると自然災害が発生しやすくなり、食料の生産がより不安定になりかねません。
フードロスを減らすことは、さまざまな問題解決につながります。まずは毎日の食事から、世界の飢餓問題を意識してみましょう。
ボランティアに参加する
子ども食堂は、地域住民などのボランティアによって運営されている場合がほとんどです。もし近所にそのような施設がある場合は、イベントに参加したり活動に関わったりしてみてはいかがでしょうか。
スタッフを募集しているなら、休日を利用して手伝いをしてみるのもおすすめです。子どもたちの支援には専門知識が必要だと思う人もいるかもしれませんが、気軽に参加できるのがボランティアのメリットです。
ボランティア活動は、地域が一体となって行うことで高い効果を発揮します。まずは自分の暮らす地域から、飢餓問題のために行動してみましょう。
寄付が大きな力に
途上国の慢性的飢餓は、政治状況や経済的な問題が大きく関わっているため、その地域が自立できるような人道的支援が必要です。金銭的な支援だけでは根本的な解決にはなりませんが、命の危険が迫っている子どもたちのためには支援が必要です。
何かしたいと思ったら、寄付や募金に参加してみましょう。たとえ小さな額でも、大勢の寄付が集まれば飢餓に苦しむ地域にまとまった金額を送ることが可能です。
栄養治療食を購入したり衛生環境を整えたりと、寄付金はさまざまな用途に使用されます。寄付をしてみたいと思ったときは、NGOやNPOなどの団体についてよく調べ、指定された方法を守って参加しましょう。
飢餓問題について考えよう
紛争や自然災害の多い地域を中心に、今もなお飢餓人口は増え続けています。大量のフードロスが廃棄される一方で、栄養失調で命を失う子どもは後を絶ちません。政治や国際情勢が関わる飢餓問題の解決は、世界的な課題といえるでしょう。
飢餓は途上国だけの問題ではなく、日本国内でも相対的貧困に苦しむ家庭は数多く存在します。貧困による飢餓を解消するためには、私たち一人一人の意識を変えていくことも必要です。
子ども食堂などのボランティア活動に取り組んでいる地域もあります。まずはフードロスを増やさないよう心がけ、毎日の食事から飢餓問題について意識してみましょう。
構成・文/HugKum編集部