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SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」
SDGs(持続可能な開発目標)とは、2015年に国連サミットで採択された国際目標です。2030年を達成期限として、17の目標と169のターゲット(具体策)を示しています。
目標14「海の豊かさを守ろう」の焦点は、海を取り巻く問題の解決です。世界の海では、今何が起こっているのでしょうか。
このままでは魚を食べられなくなる?
近年、日本近海ではサンマやサケなど、食卓の定番ともいえる魚の漁獲量は減る一方です。魚が獲れなくなる要因として、気候変動による海水温の上昇や、増える前に獲り過ぎてしまうことが挙げられます。
日本人は新鮮な魚が安く手に入る生活に慣れており、漁業に携わる人たちも期待に応えようとたくさん魚を獲る傾向にあります。
しかし、成長サイクルを無視して獲り続ければ、いずれ魚はいなくなってしまうでしょう。
漁獲量が減れば、漁業従事者は生計を立てられず、漁を辞めざるを得ません。「魚は安く手に入って当然」といった消費者の意識を変え、漁業従事者が安心して魚を提供できる仕組みを整える必要があるのです。
過剰漁獲などによる水産資源の枯渇
過剰な漁獲によって水産資源が枯渇の危機に瀕しているのは、日本だけではありません。
世界の海洋水産資源の状況を見ると、獲っても数が減らない「適正レベル」にある水産資源の割合は、年々低下しています。適正レベルにある水産資源も、ほとんどが上限近くまで獲られており、漁獲量を増やせない状況です。
また、地中海や黒海、大西洋の多くの海域では、適正レベル以下に減少した資源の割合が40%以上を占め、大変深刻な状態となっています。
世界が協力して過剰漁獲を規制し、水産資源の枯渇を防がなくてはなりません。
マイクロプラスチックも問題
マイクロプラスチックとは、直径5mm以下の微細なプラスチック粒子のことです。プラスチックは木や生物の死骸などと違い、微生物によって分解されず、いつまでも残り続けます。
そのため、不要になったプラスチックは、焼却や埋め立て、リサイクルなどの手段を用いて人間が処理しなくてはなりません。
しかし、世界的にプラスチック製品の使用量は増える一方で、適切に処理されずに捨てられるゴミも増えています。
自然界に捨てられたプラスチックは紫外線や風雨によって劣化し、砂のように小さなマイクロプラスチックとなります。世界各地で生まれるマイクロプラスチックは最終的に海へ流れ、海洋環境を悪化させているのです。
プラスチックゴミの量と海への影響
近年、餌と一緒にマイクロプラスチックを食べた海洋生物が命を落としたり、海岸に大量のプラスチックゴミが漂着して漁業に支障を来たしたりする事例が頻繁に報告されています。
プラスチックゴミの量や海に与える影響について、現状を見ていきましょう。
魚の量を上回ると予想
世界では、これまでに分かっているだけでも83億t以上のプラスチック製品が生産され、63億tがゴミになったとされています。
プラスチック製容器のリサイクル率は他の素材に比べて低い上に、回収すらされずそのまま自然界に流出してしまうものもたくさんあります。
2016年1月にイギリスのある財団が発表した報告書によると、海に流出するプラスチックゴミの量は年間800万tにものぼり、このままの状態が続けば2050年にはゴミの量が魚の量を上回るそうです。
実際に、人の住まない北極や南極でもマイクロプラスチックが観測されたとの報告もあります。
日本はなぜプラスチックゴミが多い?
日本ではプラスチックゴミを適切に処理する取り組みが進んでおり、ゴミの発生量だけで見ると他の国に比べて少なくなっています。
しかし、人口1人当たりの「プラスチック容器の廃棄量」は、アメリカに次いで2位と高い水準です。
プラスチック製品は、生産量の約36%が使い捨ての容器や包装資材です。持ち運びに便利で大量生産に向いているプラスチック容器は、使い終わった後はゴミとして捨てられることが多く、海洋ゴミを増やす主な要因となっています。
日本でも使い捨ての容器に入った食品や個包装のお菓子、ペットボトル飲料などが多く流通しています。ゴミになると分かっていても、便利さには変えられず使ってしまう人も多いでしょう。
また、日本には過剰包装の文化があるとされており、プラスチックゴミの増加に拍車をかけています。
参考:
環境省 プラスチックを取り巻く国内外の状況
環境省 海洋プラスチック問題について
人体への影響は全容不明
マイクロプラスチックは、人間の飲み物や食べ物にも確実に入り込んでいます。WWF(世界自然保護基金)がオーストラリアの大学に委託した調査では、人間が年平均で10万粒のマイクロプラスチックを摂取していることが分かりました。
重量で換算すると、年に最大250g、1週間では5gと想定される量です。プラスチックの5gといえば、クレジットカード1枚分に相当します。
マイクロプラスチックが人体へ与える影響については、まだ研究が始まったばかりで全容は不明です。
しかしながら、既に多くの野生動物に悪影響を与えていることが分かっており、人間も油断はできません。大人はもちろん、今後子どもたちの健康が害される可能性は、十分あるといえるでしょう。
参考:YOUR PLASTIC DIET あなたが摂ったプラスチック量は?|WWFジャパン
生物多様性が失われつつある原因
「生物多様性」とは、生物が持つ個性と、そのつながりのことです。
地球上ではさまざまな生物が、お互いに支え合って存在してきました。このため、一つの生物に何かが起これば、関わりのある多くの生物に影響が及びます。
近年は生物多様性が失われつつあり、生態系が変化する事態が多発しています。海の生物多様性が失われる、主な原因を見ていきましょう。
地球温暖化
地球温暖化がもたらす気候変動による影響は、年々深刻化しています。気候変動への具体的な対策は、SDGsの目標13として掲げられているほどです。
地球温暖化による影響は、海も決して例外ではありません。温室効果ガスの増大で発生した地上の熱を海が吸収することで、海水の温度も高くなります。水温が上がれば、そこに住む生物の種類も変わります。
また、水温が上がることで北極や南極の氷が溶けて海水面が上昇すれば、マングローブやサンゴ、海草類にも影響が出るでしょう。
温暖化による気候変動が原因で、陸地で水害が多発すると大量のゴミや土砂が海に流れ込み、海洋生物の命をおびやかすことにもなります。
工業や観光開発による環境汚染
工場や観光施設から出る汚水も、海の生物多様性を失わせる原因の一つです。
日本では過去に、工場が水銀を含んだ排水を海に流したため、魚を食べた人に健康被害が多発しました。現在では規制が強化され、有害物質を含む工場排水は減っていますが、完全になくなったわけではありません。
さらに、工場排水は有機物を多く含んでいるため、プランクトンを大量に発生させ「赤潮」の原因となります。赤潮が発生すると海水中の酸素が失われ、多くの生物が生きていけなくなるのです。
また、リゾート開発が進む東南アジアの国の中には、違法建築のホテルや飲食店が垂れ流す大量の汚水によって、サンゴ礁が劣化の危機に瀕している地域もあります。
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海を守るための取り組み例
SDGsは世界が一丸となって、達成するべき目標を掲げたものです。海の豊かさを守るために、日本が実施している取り組み例を見ていきましょう。
レジ袋の有料化
軽くて丈夫な上に成型しやすいプラスチックには、輸送コストや食品ロスを減らす効果があります。処分さえ正しく行われれば、必ずしも環境に悪い素材とはいえません。
プラスチックの恩恵を受けつつゴミ問題を解決するためには、過剰に使われている状況を変え、捨てる量を減らす必要があるでしょう。
日本では2020年7月1日から、小売店に対してプラスチック製レジ袋の有料化を義務付けました。
買い物客も店側も、無料で配るのが当たり前と思っていたレジ袋を有料にすることで、プラスチック製品の過剰利用を見直してもらい、ゴミの削減につなげるのが狙いです。
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サンゴ礁保全
多くの海洋生物の命を支えるサンゴ礁は、生物多様性を持続するベースとして、世界的に保全が求められています。
日本にも、サンゴが生息する海域を含む国立公園や国定公園が複数存在します。環境省ではサンゴ礁の保全に向けて、開発行為の規制や天敵の駆除、各種調査などを実施中です。
サンゴ礁が多い沖縄県で事業活動をしているニッポンハムグループでは、2012年からサンゴ礁の再生プログラムを始めています。
専門家の指導を受けてサンゴの原種を保存するだけでなく、陸上で養殖したサンゴを植え付ける作業も行っています。
SDGs目標14のために私たちができる身近な取り組み
海と、海で暮らす生物を守るために、個人ができる取り組みもあります。目標14達成に有効とされる、身近な取り組み例を見ていきましょう。
プラスチックをできるだけ使わない
現在指摘されている海洋汚染の主な原因は「マイクロプラスチック」です。
広大な海に流出してしまったマイクロプラスチックを減らすことは、容易ではありません。これ以上増やさないように、プラスチック製品への依存をやめ、使った場合はきちんと処分することが重要です。
買い物にエコバッグを持参したり、プラスチック製スプーン・フォークの利用を断ったりするだけでも、プラスチックゴミの軽減に役立ちます。
プラスチック以外の素材を取り入れている企業を利用したり、プラスチックのリサイクル製品を購入したりするのも一つの手段です。
MSC「海のエコラベル」が付いた製品を買う
MSC「海のエコラベル」は、国際的な非営利団体のMSC(海洋管理協議会)の厳格な規格に適合した、MSC認証漁業で獲られた水産物だけに付けられるラベルです。水産資源と環境に配慮し適切に管理された持続可能な漁業を、MSC認証の対象としています。
MSC「海のエコラベル」が付いた製品を購入すると、持続可能な漁業に取り組んでいる漁業従事者を応援できます。
新鮮でおいしい魚介類を継続的に食べられるように、水産物を買う際はMSC「海のエコラベル」の有無を意識してみるとよいでしょう。
ゴミ拾いへの参加
海岸に漂着するプラスチックゴミは、マイクロプラスチックの予備軍です。細かな粒子になる前に回収しておけば、海洋汚染を確実に軽減できるでしょう。海岸のゴミを拾う活動は、世界のゴミ状況を把握するための研究材料にもなります。
また、海がない地域に住んでいる人でも、路上に落ちているゴミを拾うことで、マイクロプラスチック削減に貢献することが可能です。
ゴミ拾いのイベントは、日本各地で企画されています。親子で参加すれば、子どもに環境問題を考えさせるきっかけにもなるでしょう。
きれいな海と共存する方法を考えよう
地表の70%を占める海は、陸地で暮らす人間にとっても欠かすことができない場所です。しかし、人間は自らの活動によって海を汚し、海で暮らす生物までも減らしてしまいました。
美しく見える海水にはマイクロプラスチックが潜み、多くの水産資源が枯渇の危機にさらされています。未来を生きる子どもに豊かな海を残すために、海と共存する方法を考えていく必要があるでしょう。
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構成・文/HugKum編集部