冷凍焼け防止テクニック|匂い・変色の原因とおいしく食べる技

冷凍保存をする際は、どうしてラップやフリーザーバッグへの詰め替えが必要なのでしょうか。もしも詰め替えずに冷凍した場合、食材にはどんな変色が現れるのでしょうか。今回は、冷凍保存時の基本的な知識として「冷凍焼け」についてご紹介します。

冷凍焼けとは?

わかりやすい例を挙げると、冷凍庫が十分冷えているのに、氷が小さくなっていく現象が「冷凍焼け」です。個体の氷が、気体の水蒸気に「昇華」する作用が引き起こします。溶けたわけではないのに、いつの間にか昇華が進み、気がついたときには小さな氷しか残っていなかった、なんてことは、みなさんも経験があるのではないでしょうか。

ドライアイスの白い煙も、個体から気体へ変化する「昇華」です。科学実験のようですね。

冷凍焼け

冷凍していた期間が長引くと、解凍した際にお肉が固かったり、お魚に嫌な臭いがついたりして、おいしさを失っていることがあります。冷凍したときは新鮮だったのに… 。残念な「冷凍焼け」とは、どうして起こるのでしょうか。

原因

肉を冷凍させると、細胞ひとつひとつの水分が氷に変わります。そのまま空気に触れさせておくと、氷は気体へと昇華して消え、残された肉の細胞はスカスカになってしまいます。

さらに、食品に含まれるタンパク質の変性によって、水分の保持ができなくなってしまいます。解凍すると、スポンジ状になったたんぱく質から水分と共に栄養分やうま味がドリップとして流出してしまい、おいしさが残りません。

また、脂質の酸化も、変色、異臭の発生、味の劣化を招きます。サバやイワシに含まれる高度不飽和脂肪酸とは、人間にとって大切な栄養分である一方で、酸化しやすい特徴を持っていますから、特に注意が必要です。

食中毒との関連

冷凍焼けを起こした食品を食べても、食中毒になる恐れはありません。もちろん、食品の保管時に細菌をつけたり、解凍後に増やしたりといった不衛生な扱いは避けてくださいね。

一方で、冷凍すれば細菌が死滅する、との認識は間違いです。食中毒の原因となる細菌は、家庭用冷凍庫で保存すると、活動をいったん止めます。ですが、死滅するわけではなく、解凍すると再び活動を開始します。細菌をやっつけるために効果的なのは、十分な加熱です。

さらに、寄生虫のアニサキスは-20℃以下で24時間以上冷凍することで、死滅させることができます。ただし、一般的な家庭用冷凍庫の温度はだいたい-18℃です。冷凍したから大丈夫、と考えることは危険です。

これが冷凍焼け! 実例集

それでは、具体的な冷凍焼け実例を確認しましょう。

ドリップ

冷凍した食品を解凍する際に、食品から流出する水分をドリップと呼びます。食品の水分はもちろんのこと、栄養分やうま味を含むため、流出すると味の劣化につながります。

解凍すると、どうしても出てしまうドリップ。できるだけ少なくすると、おいしさがキープできます。

長期冷凍保存した食品の周りに、いつのまにか霜がついているのも、冷凍焼けのひとつの現れです。

扉の開閉や、温かいものを冷凍庫に入れたことにより、庫内の温度変化が起こります。これが原因となって食品中の水分が蒸発し、霜が発生します。

冷凍期間の長期化、また、温かいままで冷凍庫に入れるとつくのが霜です。

変色

魚、肉の油が酸化すると黄色やオレンジに変色することがあります。この場合は異臭も発生しますから、口にすることは諦めてください。

防止策は

水分の多い野菜や、油分の多い肉は冷凍焼けを起こしやすい食材です。対策を考えます。

対策1:空気に触れさせない

冷凍焼けを防ぐためには、食品を冷凍する際に、なるべく空気に触れさせないことが大切です。具体的には、ラップをぴっちりと密着させ、フリーザーバッグで密閉します。こうすると、食品に触れる空気が最小限に抑えられ、水分の昇華を防ぐことができます。

もっともよくないのは、冷凍した食品を庫内でむき出しにしておくこと、というわけです。

対策2:急速冷凍

ゆっくりと冷凍することは、食品の細胞破壊を進めます。空気の通り道が大きく広がり、結果として味を落としてしまいます。

対策は食材を金属のトレイにのせて、できるだけ速く温度を下げることです。アルミホイルで全体を巻くのも有効です。

フリーザーバッグの上からアルミホイルを巻きます。冷凍が完了したら、アルミホイルははずしてもかまいません。

もちろん、食材が温かいままで冷凍庫に入れてはいけません。また、頻繁に扉を開閉することも、急速冷凍を妨げる原因になります。冷凍庫に入れた後は、3時間程度は扉を開けないよう心がけることが有効です。

食べる際に気をつけること

冷凍焼けしてしまった食品を食べる場合、どんなことに気をつければ、おいしく食べられるでしょうか。

臭いを消す方法

気になる臭いは、お酢を使うことで気にならなくなります。

魚の場合は、生姜や三つ葉などの香菜をたっぷりと使いながら、風味が濃いみそ煮や照り焼きにするとおいしくなりますよ。

せっかく保存した食材ですから、ぜひおいしく調理して味わってください。

肉を復活させる方法

パサパサした食感の肉は細かく切って煮込み料理に使うことで、柔らかさが多少は戻ります。甘酢あんかけや、ビーフシチューなどに使ってみてはいかがでしょうか。

さらに効果的な方法として、塩水の浸透圧を利用する方法もおすすめです。この方法は、肉を適度に塩分を含んだ水に漬けておきます。そうすることで浸透圧の作用により水分が肉の内部に引き込まれ、柔らかさとジューシーさが増します。

【方法】
①水500mlに対して塩大さじ1を加え、よく溶かして塩水を作ります。

②パサついた肉をこの塩水に30分から1時間ほど漬け込みます(時間は肉の厚さや状態に応じて調整)。

③漬け込んだ肉を取り出し、ペーパータオルなどで軽く水気を拭き取ってから調理します。

この工程により、肉が再びしっとりとした食感を取り戻します。また塩水にお好みでハーブやスパイスを加えれば、風味もプラスできます。

永久保存はできない

冷凍しても永久においしいままで保存することはできません。冷凍後1日経ったものと、3か月経ったものを解凍して食べ比べると、味の変化は歴然です。食べても危険があるわけではありませんが、保存時間は短いほど、おいしさが保たれています。

大好きな食品だからといって大切に保存し過ぎずに、おいしいうちに味わいたいものです。

上手な冷凍保存

冷凍焼けを起こさないための冷凍保存術については、HugKumでも多くの記事をご用意しています。中でも、代表的な記事をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

お肉の冷凍保存のポイント

肉をおいしく冷凍保存するには、「酸化」と「乾燥」を防ぐことが重要です。冷凍前に、醤油や酒で下味をつけると乾燥を防ぎやすく、保存袋に肉と調味料を入れて揉むと衛生的です。

パックのまま冷凍するのは雑菌繁殖のリスクがあるため、キッチンペーパーで水けを拭き取り保存するのが基本です。また、冷凍焼けを防ぐには氷膜(グレーズ)を作る方法が効果的です。肉を氷水に浸けてから水けを拭き取り、急速冷凍すると乾燥と酸化を防ぎ、肉を守ることができます。

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野菜の冷凍保存のポイント

野菜を冷凍保存することで、鮮度を保ちつつ長期的に使用できます。冷凍する際のポイントとしては、まず野菜を適切なサイズに切り分けることが重要です。さらに、下ゆでを行うことで色鮮やかさや食感をキープできます。冷凍用保存袋にしっかりと密封して保存し、冷凍焼けを防ぐために空気をできるだけ抜いてから保存しましょう。

そのまま冷凍できるトマト・小松菜・長ネギなどの野菜もありますが、キャベツなど一部の野菜はそのまま冷凍せず塩もみなどをして保存する方が使い勝手がいい場合もあります。冷凍保存する際には、それぞれの野菜の特性に合わせた方法を選ぶことが大切です。

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お刺身の冷凍保存のポイント

刺身を家庭で冷凍保存する際には、家庭用冷凍庫の性能に注意しましょう。家庭用冷凍庫は-20℃が限界であり、業務用の急速冷凍ほど鮮度を保つことが難しく、冷凍焼けのリスクも高まります。

保存する場合は「サク」を選び、水分を拭き取りラップや保存袋、アルミホイルで包むなどの準備が重要です。切身の刺身は、下味をつけてから冷凍すると保存性が上がります。一度解凍した刺身の再冷凍は、衛生面や味の面で避けたほうがいいでしょう。

また自宅でさばいた魚には寄生虫のリスクがあるため、内臓の除去や目視確認が必要です。解凍時にはドリップを抑えるために冷蔵庫で時間をかけて解凍するのが理想的で、脱水シートやキッチンペーパーを使うと臭みの発生を防ぐことができます。

保存期間は、家庭用冷凍庫では2週間が目安です。適切な保存と解凍方法を守り、安全に刺身を楽しみましょう。

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保存した食材を忘れないこと

せっかく冷凍保存した食品が冷凍焼けしてしまうのは、残念でなりません。お買い得で手に入れたり、大切に保存し楽しみにしていたりする食材は、忘れないように早めに調理してください。あとは適切に解凍すれば、おいしく味わうことができます。また、食材ごとに最適な冷凍方法を確かめて、豊かな食生活を楽しんでください。

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