「百鬼夜行」とは?
見るからに恐ろしい雰囲気が漂う「百鬼夜行」という言葉。最近では、有名なアニメの題材にも使われていますよね。まずは、「百鬼夜行」の意味や読み方、語源を見ていきましょう。
読み方と意味
「百鬼夜行」の読み方は、「ひゃっきやこう」もしくは、「ひゃっきやぎょう」です。読み方が2つありますが、「ひゃっきやこう」と読むことが多いですね。
意味は「さまざまな化け物が夜中に列をなして歩くこと」「得体の知れない人々が怪しい振る舞いをすること」です。前者の意味のように、実際の妖怪をあらわすこともあれば、後者のように奇怪な行動をする人間をあらわすこともできます。
「百鬼夜行」は、アニメや小説など、さまざまな作品のタイトルや題材にも使われている言葉です。例えば、今市子によるミステリーホラー漫画『百鬼夜行抄(ひゃっきやこうしょう)』、京極夏彦による推理小説『百鬼夜行シリーズ』。
また、近年大人気の『呪術廻戦』のなかでも、「百鬼夜行」という名前の事件が登場します。そのほか、歌のタイトルに使われることもあり、シンガーソングライター・米津玄師や、ボーカリスト・作曲家・作詞家・まふまふ、ロックバンド・己龍の「百鬼夜行」という歌も有名です。
由来・語源
「百鬼夜行」のはっきりとした由来は不明ですが、平安時代から室町時代の説話集に「百鬼夜行」という言葉が数多く見られるそう。
例えば、平安時代中期の『口遊(くちずさみ)』や、鎌倉〜室町時代の『拾芥抄(しゅうがいしょう)』には、「百鬼夜行」があらわれる日にちが書かれていたのだとか。当時、貴族たちは「百鬼夜行」があらわれる日は、夜に外出するのを控えていたそうですよ。
「百鬼夜行絵巻」とは?
妖怪たちが練り歩くようすを描いたものに、「百鬼夜行絵巻」というものがあります。「百鬼夜行絵巻」は、室町時代の後期に描かれた絵巻。赤鬼や青鬼、扇や琴などの怪物、おはぐろをつけた女など、さまざまな妖怪がユーモラスに描かれています。
現存する「百鬼夜行絵巻」で最古とされるのは、京都にある大徳寺真珠庵の絵巻。奥書によると作者は蔭山源広迢ですが、土佐行秀の画を写したものだそうです。
なお、「百鬼夜行絵巻」の巻末は、「火の玉」か「朝日」で終わりますが、こちらは「朝日」が最後に描かれています。
使い方を例文でチェック!
「百鬼夜行」の意味を理解したところで、実際にどのように使えばいいのか、例文をまじえて解説していきます。「百鬼夜行」は、妖怪や化け物、人間に対して使うことができたり、恐ろしい状況を表現する際にも使うことができますよ。
1:ライバルを出し抜くために暗躍する人ばかり。この業界はまさに百鬼夜行だ。
「百鬼夜行」は、正体不明の怪しい人をあらわす時に使える言葉です。自分の出世や利益のために暗躍をしたり、好き勝手に振る舞うようすは、まさに「百鬼夜行」といえるでしょう。
2:そこは百鬼夜行と呼ばれるほど治安が悪い場所だから、くれぐれも注意してね。
「百鬼夜行」は、暴行や盗みなどの犯罪が多い場所に対しても使うことができます。「百鬼夜行」は、法律や常識を無視して、悪事を働く人々をあらわすのに適した表現ですね。
3:廃墟の前の通りは気味が悪くて、百鬼夜行に出くわしそうだ。
ここでの「百鬼夜行」は、人ではなくお化けや妖怪のことをあらわしています。お墓や廃墟、心霊スポットなどは、「百鬼夜行」に遭遇しそうですよね。そうした気味の悪さを表現したい場合に、「百鬼夜行」を使ってみましょう。
類語や言い換え表現とは?
「百鬼夜行」の言い換え表現には何があるのでしょうか。「魑魅魍魎」「妖怪変化」「悪鬼羅刹」の3つをピックアップして解説していきましょう。
1:魑魅魍魎
「百鬼夜行」の類語としてまず挙げられるのは「魑魅魍魎」。「魑魅魍魎」は「ちみもうりょう」と読み、「色々な化け物」という意味です。「魑魅」とは、山と林の精気から生まれる化け物のこと。一方、「魍魎」は、山や川、木、石などに宿り、人に害を加える精霊のこと。この2つの言葉を合わせて、化け物や妖怪の集団をあらわすのです。
「魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)する」という表現で、「妖怪たちが好き勝手に振る舞う」という意味になります。現在では、「私欲のために悪いことを行う人」に対して使われることが多い表現です。
例文:政界では魑魅魍魎が跋扈している。
2:妖怪変化
「妖怪変化」とは「ようかいへんげ」と読みます。意味は、「不思議で恐ろしい化け物」。人智を超えた世にも恐ろしい化け物に対して使われます。「百鬼夜行」や「魑魅魍魎」は、「奇怪な人」をあらわす比喩表現として、人間に対して使うことができると説明しました。ですが、「妖怪変化」は人間に対して使うことはあまりありません。
例文:ここの通りは、夜に妖怪変化が出るっていう言い伝えがあるらしいよ。
3:悪鬼羅刹
見るからに恐ろしい「悪鬼羅刹」という言葉。読み方は「あっきらせつ」で、意味は「人に害をもたらす化け物」です。「悪鬼」とは、わざわいをもたらす化け物のことで、「羅刹」とは、もともと仏教語で、人を食べる化け物のこと。この2つを組み合わせて、人に悪いことをする化け物という意味の「悪鬼羅刹」という言葉ができました。
「悪鬼羅刹」は、人に害を与える化け物のような人という意味で、人間に対して使うこともできます。
例文:常識を超えるような恐ろしいことを考える彼女は、まるで悪鬼羅刹のようだった。
英語表現とは?
外国の人に「百鬼夜行」を伝える場合は、どのような表現が適しているのでしょうか。まず、「さまざまな化け物が夜中に列をなして歩くこと」を表現するには、「Night Parade of One Hundred Demons」などがいいでしょう。悪鬼を意味する「Demons」を、妖怪やお化けを意味する「Specters」に置き換えてもいいですね。
そのほか、化け物や妖怪をあらわす英語には、「Monster」「Goblin」「Ghost」などもあります。また、「妖怪」をそのままローマ字にした「Yokai」でも、伝わることもあるようですよ。
最後に
「さまざまな化け物が夜中に列をなして歩くこと」「得体の知れない人々が怪しい振る舞いをすること」という2つの意味を持つ「百鬼夜行」について解説しました。
単に「恐ろしい業界」と言うよりも、「百鬼夜行のような業界」と言ったほうが、その恐ろしさや不気味さが伝わりますよね。奇怪な人や恐ろしい状況をあらわしたいときには、ぜひ、「百鬼夜行」を使ってみてください。
あなたにはこちらもおすすめ
構成・文/結野雅美(京都メディアライン)