「烏合の衆」とは?
まずは、読み方・意味を語源とともに押さえておきましょう。
読み方と意味
この言葉は「烏合の衆」と書いて「うごうのしゅう」と読み、「規律や統制、秩序がなく、ただ寄り集まっているだけの集団」を意味します。秩序がない軍勢を表すことわざとしても知られています。
由来・語源
「烏合の衆」の由来は、約1,600年前に中国で記された『後漢書』。「烏」とはカラス、「衆」とは大勢の人を指し、気ままに行動するカラスがどんなに集まっても団結できないことから、ただ寄り集まっただけの雑多な集団のたとえとして生まれたと考えられています。
「鳥」ではなく「烏(カラス)」なので要注意!
「烏合の衆」で間違えられやすいのが、「烏(カラス)」を「鳥」としてしまうというもの。
鳥のなかには、一直線や菱形など、きれいな編隊を組みながら群れを成して飛行する種もありますよね。けれども、カラスはたとえ群れても、編隊を組んで飛ぶことはありません。
「鳥」か「烏(カラス)」かわからなくなったら、カラスがばらばらに飛ぶ様子を思い出してみましょう。
使い方を例文でチェック!
では、「烏合の衆」という言葉はどのように使えば良いのでしょうか。例文もチェックしておきましょう。
1:どんなに能力の高い人が集まっていても、リーダーが不在のチームは【烏合の衆】にしかならない。
このように、一人一人の能力に関わらず、団結できずに結局は雑多な集団にしかならないことを言い表す際に使うことができます。
2:それぞれの考え方が一致団結しないので、この部署はいつまで経っても【烏合の衆】のままだ。
それぞれの思想や理念、考え方が合わず、一致団結できない場合にも「烏合の衆」を使うことができます。
3:うちの部はどの部員も自分勝手で秩序がない。人数が多いばかりの【烏合の衆】だ。
このように、雑多な寄せ集めの集団を言い表す際に「烏合の衆」は使われます。ネガティブな意味で使われるので誤用には注意しましょう。
類語や言い換え表現は?
では、「烏合の衆」はどのように言い換えることができるのでしょうか? 類語や言い換え表現をお伝えしていきます。
1:不特定多数(ふとくていたすう)
「不特定多数」とは、傾向や方向性、性質等が同じとは限らない個々の集まりとしての多数を表す言葉です。完全に一致する言葉ではありませんが、秩序のない群衆を指す「烏合の衆」に近い表現といえます。
2:獣聚鳥散(じゅうしゅうちょうさん)
「獣聚鳥散」は、獣のように無秩序に集まって、鳥のようにばらばらに散る様子を言い表しています。雑多な寄せ集めを指す「烏合の衆」に、散っていく様子が加えられた言葉です。
3:有象無象(うぞうむぞう)
「有象無象」は、数は多くても雑多でくだらない人や物を指す言葉。「烏合の衆」の類語と言えますが、個々の能力に関わらず「団結しない」集団であることに重きが置かれた「烏合の衆」に対して、こちらは「数が多いだけ」で「くだらない人や物」といったニュアンスが強くなります。
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対義語は?
あわせて、「烏合の衆」の対義語もチェックしておきましょう。正確には「対義語」と呼べる言葉が存在しないため、以下では、反対のニュアンスを含む言葉をお伝えしていきます。
少数精鋭(しょうすうせいえい)
「少数精鋭」は、「少数ながら、選りすぐられた優秀な人々」を指す言葉。「数が多くても秩序がなく、ただより集まっているだけの集団」の意味を持つ「烏合の衆」とは反対の意味を持つと言えます。
一致団結(いっちだんけつ)
ひとつの集団が共通の目的を持って、協力しながら力を発揮する様を表す「一致団結」という言葉。「烏合の衆」の「団結することのない無秩序な集団」とは反対のニュアンスを表現したい際に使うことができます。
英語表現は?
「烏合の衆」は、直訳とまでは言えませんが、同様の意味を英語で表現することもできます。最後に、「烏合の衆」の英語表現をご紹介。
1:a ragtag crowd
「寄せ集めの」という意味を持つ“ragtag”という形容詞と、「群衆」を表す“crowd”という名詞を掛け合わせた言葉。そのまま「寄せ集めの群衆」という意味になるので、「烏合の衆」の英語表現として使うことができます。“ragtag”を“disorderly(無秩序な)”に変えることも可能。
2:an undisciplined mob
「規律のない」「無秩序な」といった意味を持つ形容詞“undisciplined”と、「群衆」を表す名詞“mob”を組み合わせた“an undisciplined mob”。
「無秩序な群衆」を指す言葉であり、「烏合の衆」の英語表現に適しています。
カラスがバラバラに飛ぶ光景をイメージして覚えましょう
今回は「烏合の衆」の読み方から意味や語源、類語・対義語、英語表現をお伝えしてきました。
「烏合の衆」は、数が多いばかりで統率のとれていない集団を揶揄したり批判したりする際に使われやすい言葉です。カラスがバラバラに飛ぶ光景をイメージして覚えておきましょう。
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構成・文/羽吹理美